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7.殲滅


 黒乃の言葉で周囲への警戒を強くする。敵の姿はすぐに見えてきた。


 そのモンスターの集団は明らかにこちらに向かってジリジリと近づいてきている。


「ひー、ふー、みー、よー……うへえ。こんなんじゃ数えきれないくらいいますねえ。よくもまあこんなに数を揃えてきたというべきか……」


 数が多い。30は超えているだろう。ギリギリ50体前後くらいか。確かにこれが自然に集まったモンスターの集団だとは思えない。誰かが人為的に集めた、そんな裏事情が見て取れる。


「戦力自体はザコの寄せ集めもいいところっすね。まあ、所々に強い個体もいますけど、それでも中ボス以下が数体。何の問題もないっす」


 ……とはいえ、数自体には何も脅威を感じてない。


 あの程度のモンスターの集団なら俺でも作れる。目の前のモンスターの集団は精々、俺がモンスター召喚に専念した時の10%程度の戦力もないだろう。


 ……そして、俺が持てる力を全て使えても真正面から戦う限り、黒乃には勝てない。それが全てだった。


「黒乃、いけるだろ?」


「そうっすね。魔力もまだまだありますし、そこの少年くんにいいようにやられた分、あいつらで憂さ晴らししてくるっす」


 あの程度、何でもない。そんな信頼があるからこそ、黒乃に気楽に問う。


 黒乃もそれが当然の事だと思っていて、まるで遊びにいくかのような気楽さで答えた。


「じゃあ、そういう事で。君らは動かないでくれよ。俺じゃ黒乃の攻撃から君らを守れないからな」


「えー、黒乃ちゃんは誤射なんてしませんよーだ。まあ、安心してくださいよ。あんなのチャチャっとやっつけるっすから!」


 傍らの2人の少女は現れたモンスターの集団に怯えるように警戒している。


 俺達は空気を緩和させるために笑いながら語りかける。


「何でそんなに落ち着いてるの!? あれだけの数、蓮にいが起きてないと……」


「そんなに警戒しなくてもいいって。あの程度だったら君らを守りながらでも楽勝で勝てる。……黒乃なら」


「京さんも何だかんだでできるでしょ」


「いや、俺の今の手札、さっきドローした1枚だけだし。流石にあんだけ数居ると無理」


「ふーん。それでも京さんなら何とかしそうっすけどねえ。まあいいですよー。それなら京さんにできない事を私がやってあげましょうか!」


「ってな訳で、頼りになるおねーさんがあんな奴ら蹴散らしてくれるから君らは何の心配もせずに見守っていればいいよ」


 背の高い少女は俺達の会話を聞いてもまだ警戒を解けないようだ。


 震える声で聞いてくる。


「本当に、わたし達を助けてくれるの? 蓮にいはアンタ達を……」


「助けるよ。だってもったいないからね」


「……もったいない?」


 思っていた答えと違うのか、背の高い少女はオウム返しのように俺の言葉を返す。


「別に君らがかわいそうだから助ける訳じゃない。用事があるのはそこに転がってる奴さ。本当なら放って逃げてもいいんだけど、これだけの戦力を失うと後で痛手になる可能性が高い。それに、こいつが俺達を襲ってきた理由はただの勘違い。なら、関係の修復は可能だ。君ら、妹なんだろ? だったらこいつにちゃんと説明して暴走しないようにしてくれ。それさえ守ってくれるなら暫くは面倒見てやるよ」


「あー、こんな言い方っすけど心配しなくていいっすよ? 京さんは面倒くさいツンデレみたいなもんですから」


「おいおい、男のツンデレは需要ないんだからそんな言い方はやめてくれよな」


「はいはーい。それじゃ、行ってきまーす!」


 適当に俺の言葉を流して黒乃は消えた。


 頭上には、空中戦艦。まあ、雑魚モンスターの集団を効率よく殺すならそれだよな。


「え、なにあれ! カッコいい!」


 背の高い子が空に突然現れたSFチックな物体に目を輝かせる。後ろに隠れたままの子も同様に興味を惹かれたように目を空に向ける。女の子でもああいうのは好きらしい。


 先程は避難するためだけに使われた空中戦艦だったが、今回はその真価を発揮した。


 空から降り注ぐ大量のミサイル、マシンガン、レーザー攻撃、その他諸々エトセトラ。あらゆる武装が雨のように火を噴いて、眼前のモンスターの集団を跡形もなく吹き飛ばしたのだ。


「うおー、すげー!」


 無邪気にはしゃぐ背の高い子。対照的に後ろに隠れてる子は顔を青ざめてプルプルと震えていた。そんなに怯えなくてもいいのに。


「いっえーい! どうでしたか、かっこよかったでしょ!」


「うん! かっこよかった!」


 一分にも満たない蹂躙劇を終えて黒乃が戻ってくる。


 目をキラキラと輝かせて、背の高い子が出迎える。後ろの小っちゃい子は黒乃に完全に怯えきっていたが。


 まあ、そんな簡単に信用されるとこちらも対応に困る。もっと時間をかけて、そうしないとこちらが向こうを信用しきれない。……とはいえ、ああも手放しで信用してくれるならそれはそれで印象はいい。


 背の高い子が興味津々といった様子で黒乃に詰め寄るのを見て、俺は少しだけ苦笑する。そして、地面に縛って転がしていた少年を担いだ。


「はい、そこまで。このままここに留まっているとまたモンスターが来る可能性が高い。返事は後でいいからついてこいよ。俺らもいい加減帰って休みたい。黒乃もそれでいいか?」


「はいはい。ここまできて投げ出したりはしませんよー。幸い居住スペースは余ってます。気が済むように使えばいいっすよ」


 モンスターが来る前に言っていた少年の誤解を解いておきたいという話を思い出したのだろう。個人的には反対気味だった黒乃は投げやり気味だったが俺の意見に乗ってくれた。


「ありがと。さて君らはどうする? 嫌だったらコイツ返すけど。……ああ、そうだ。俺よりあっちのおねーさんの方が強いから、俺が変な事しようとしたらちゃんとぶっ飛ばしてくれると思うよ。だから、その辺は心配しなくていい」 


「ねえ、お姉ちゃん。やめといた方がいいんじゃ……」


「えー、いいじゃん、きっと悪い人達じゃないよ!」


 小っちゃい子はまだ俺達の事を警戒しているみたいだ。背の高い子はさっきの戦闘である程度はこちらの事を信用してくれたのだろう。楽観的にそう言う。


 俺的には素直についてきてほしいが、正直、そこまで楽観的なのもどうかと思うよ。


「でも、お兄ちゃんを倒した人達だよ。危ないよう……」


「大丈夫だって! それに、わたし達じゃ蓮にいを守れないから、助けてくれるって言うならついていこうよ。ね?」


「……うん。わかった」


 最終的には背の高い子の意見を受け入れたようだ。小っちゃい子がコクリと頷く。


「暫くの間、お世話になります!」  


「おう、よろしく」


 元気のいい快諾の声を聞いて、俺はひらひらと軽く手を振ってそれに応じた。





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