表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界がデスゲームになったけど、俺だけ別ゲーやってます。  作者: 相川みかげ/Ni
1.俺たちの世界が買収されたと思ったら、現実になって帰ってきた
3/82

2.現状の確認と新たな力


「……成程。なんとなくわかった」


 ゴブリンを倒してから十数分は経ったが、まだ俺は外に逃げ出さず、構内に身を隠していた。


 理由は、突然手に入れたこの力をよく知るためだった。何か手がかりはないかと色々弄っていると液晶ディスプレイの電源がついたのでそこから画面を操作して情報収集していたのだ。


 わかった事はカードゲームの《ChronoHolder》とはまるで別物だという事だった。


 まずはステータスだ。カードゲームの頃はライフを表すHPしかなかった筈の項目だが、今となってはもはや別ゲーとしかいいようがないだろう。


──────────────


Name:逆蒔 京也

Lv:1

Job:《時の蒐集者(クロノ・ホルダー)

HP:8000/8000

Mana:50/50

Attack:50

Defense:50

Speed:50

GP:3


──────────────


 これが俺のステータス欄だ。


 GPについては後でまとめて説明するから割愛する。

 体力を表すHPと魔力を表すManaはまだカードゲームの要素としては理解できるが、攻撃力を表すAttackや、防御力を表すDefense、素早さを表すSpeedを見るに自分も戦闘に参加しろという事なのだろう。


 実際、今のステータスがどれくらい強いのかというと、さっき手に入れた《ゴブリン》の召喚(サモン)カードの能力値がLv:1で体力、攻撃力、防御力、素早さが200/20/20/20だった事を考えて、俺はだいたいゴブリン2.5匹分の力を持っている訳だ。あんまり嬉しくない。


 まあ、攻撃力などの自身の戦闘能力についての数値はオマケと割り切った方がいいだろう。


 考えるべきなのは俺のJobの《時の蒐集者》についてだ。


 時を切り取る力と称したその力の正体は左腕にいつの間にか装着されていた装置、クロノグラフによるものだった。


 説明を見るに一日に一回だけ使える能力で、目の前の事象を時を切り取る事でなかった事にし、瞬間術式(インスタント・スペル)のカードへと変えて自分の力にするらしい。


 俺がゴブリンに奇襲を受けた時に偶然にもこの能力が発動し、あの場面で唯一のカードを生み出したみたいだ。


 瞬間術式というと、カードゲーム版とは大きな違いがあった。カードの種類は召喚、術式(スペル)武装(アムド)の3つだったのだが、瞬間召喚(インスタント・サモン)と瞬間術式のカードが新たに追加されたのだ。


 瞬間系カードの最大の特徴は同名カードを何枚でも所持できる代わりに1度発動するとなくなってしまうという点だった。


 元からあった召喚、術式、武装カードも今までとは大きく違う。さっきの瞬間系カードの特徴で挙げた事から分かる通り、同名カードを手に入れる事が出来ないのだ。


 カードゲームとしてそれはどうなんだと思うが、説明をざっくり見た所、どうも瞬間系カードは通常のカードと全く同じ名前と能力のカードのままみたいだ。だから同じカードを複数使いたいなら瞬間系カードを使えという事なのだろう。


 それにこれらのカードは一度発動してもなくなることはない。デッキチェンジをしないと再利用はできないけれど、これはとてもありがたい。召喚したモンスターのHPが全損しても再召喚時には全回復するので無茶な指示も出しやすいのは好印象だ。


 そしてもう一つの特徴はLvが設定されていて召喚カードはモンスターを倒す事で、術式カードと武装カードは使用する事でLvが上がり、能力もそれに比例して上がるという育成的な要素が追加されている事だった。


 これは瞬間系カードにはない利点であり、優先するべき事項だろう。俺のLvは俺の使役するモンスターがモンスターを倒す事でも上がっていく。つまり、自分が成長するのに合わせて使役するモンスター達も強くなっていく訳だ。


 カードの種類について理解したのはこのくらいか。後、大事な事はカードゲーマーの命であるデッキについてだ。


 といってもこれには制限がない。デッキ枚数は何枚でもいいのだ。だが、ここで調子に乗ってデッキ枚数を馬鹿みたいに入れまくってはいけない。ドローの事を考えないといけないからだ。


 ターンの概念がないこの世界では、ドローは時間によって制限される。まずデッキチェンジ時に4枚引き、後は最後にドローした時間から5分後に追加のドローができるという制約がある。手札の上限は6枚で、それ以上のドローはできない。


 デッキ構築の時点で枚数を調整しないと引きたいカードは中々引けないのでこの辺は調整が必要だろう。ちなみに俺は「デッキ枚数を四枚以下にすれば特定のカード引けるな」と悪用する気マンマンだった。……まあ、それもカードの種類が充実してからの話だろう。


 ああ、忘れていたがデッキチェンジとは文字通り、デッキを交換する事だ。


 デッキ編集は自由にできるが、使用するデッキを交換し、山札を回復させる事ができるデッキチェンジには1日3回までと制限がかけられている。だから、あまりデッキの枚数を少なくするのも考えものだ。


 デッキチェンジの際に俺の生命線であるHPも全回復するので、この事もちゃんと頭の隅に留めておくべきだろう。


 Lvアップ時に全回復するだけでなく、3分毎に1回復するManaと違い、HPの回復手段は今のところLvアップとデッキチェンジだけなのだ。もしかしたらHPを回復できる術式カードがあるかもしれないが手に入るまではないと同じだ。


 HPが0になると俺は1日間、《時の蒐集者》の力を失い、能力値もゴブリンに劣るどころか普通の子供にも負けかねないオール1にまで減少する。注意が必要だ。


 そして最後に重要なのがカードの手に入れ方だ。

 カードの手に入れ方は2つある。1つは倒したモンスターから入手するというゲームらしいドロップアイテム式の方法だ。


 画面を操作し、持ち物と書かれている欄を開いたところゴブリンを倒した際に手に入ったのだろう《小鬼のツノ》が表示されていた。これは通常のドロップアイテムなのだろう。

 そしてカードの欄には《ゴブリン》の召喚カードが表示されていたのだ。


──────────────


ゴブリン

Rare:C

Type:召喚カード

コスト:1

Lv:1

HP:200

Attack:20

Defense:20

Speed:20


能力:なし


──────────────


 これがゴブリンのステータスだ。コストは消費するManaの数値だ。一見非力に見えるがコストが少ない事を考えると妥当だろう。というか、これだけの能力値でも一般的な大人の男性を圧倒していたのだ。雑魚モンスターとしては非の付けようがない。


 それにコイツはモンスターを倒した分だけ成長する召喚カードのモンスターだ。これからの活躍にも期待できる。


 そしてもう1つの方法、それが……


「……さて、そろそろ引くかあ。ガチャにはいい思い出がないけど仕方ない」


 画面を操作してあるページを開く。そこには《ガチャ》の文字が大きく描かれていた。


 そう、もう1つの方法とはガチャの事だ。

 Lvアップの際に3つ溜まるGPとはガチャポイントだ。これを1ポイント使う事で1枚カードをガチャできるのだ。


 ……カードゲーマーとしては「せめてパック売りにして欲しかったなあ」と思わざるを得ない。パック売りなら5枚入りで当たりが来るのは実質、最後の1枚だけだったが、その他にもノーマルに分類されるカードが4枚手に入るのだ。今の状況ではノーマルカードでも重要な戦力だ。レベルアップの度に3枚しか新しいカードが手に入らないとなるとまともな戦略が組めなくて辛い。


 ガチャの利点はレア度が必ずレア以上のものが手に入るくらいだろうか。レア度は低い順からC(コモン)UC(アンコモン)R(レア)SR(スーパーレア)UR(ウルトラレア)LR(レジェンドレア)CR(クロノレア)の7種類だ。


 最低でもある程度の強さのカードが手に入るのは有り難い。実は素の運にはそこまで自信がないのだ。ソシャゲでは「出るまで回す」派だったためガチャという社会が生んだ悪しき風習にはそこまでいい思い出がない。……カードのガチャなら『カードデル』の方がそれっぽいのではないのだろうかと別のカードゲームの商法を思い出したのは秘密だ。


「まずは1回目っと……これは」


 そこまで気乗りがしないまま画面を操作してガチャを引く。引いたのは瞬間術式カードだった。


──────────────


緊急退却──クイックリキャスト

Rare:SR

Type:瞬間術式カード

コスト:17


能力:①召喚済みの瞬間召喚モンスターを手札に戻す。(手札に加えたカードは新しく手に入れたカードとして扱う)


──────────────


「……うん? ……ああ、成程。奥が深いなあ。そういうのもあるのか」


 引いたカードの能力を見て、一瞬戸惑ったが直ぐにそこに書いてある事の重要性が読み取れた。


 つまりここに書かれている事は、使い捨てである筈の瞬間系カードにも再利用する術があるという事だ。この分だと他にもこういったカードの種類を指定して効果を発揮するカードはありそうだ。瞬間系カードは通常カードの互換と考えるのではなく、完全に別物として考えた方がいいだろう。


「こんな、デスゲームじゃなかったら楽しいゲームになっただろうになあ」


 このカードの使用法を色々妄想していたが今、現実で起こっている事を考えるとどうしても気分が沈んだ。やっぱり素直にゲームを楽しむ事ができないってのは嫌だな。


「ま、とりあえず今は役に立たないか。さて、次」


 色々使い道を考えてみたが、瞬間召喚カードを持っていない今は何の役にも立たないカードだ。気を取り直して次のカードを引く。


──────────────


祝福の聖天樹 イブキ

Rare:SR

Type:召喚カード

コスト:30

Lv:1

HP:5000

Attack:200

Defense:500

Speed:100


能力:①移動できない。②五分毎にウッドソルジャー(300/30/30/30)を産み出す。


──────────────


「何だこのぶっ壊れ!?」


 引いたカードは先程と同じくSRカードで、次は召喚カードだったが、そこに書いてある事が酷すぎた。


「移動性を完全に犠牲にしてるとはいえ、ステータスが高すぎる……! それに時間が経過する毎にゴブリンより性能が高いモンスターを無限生産って。SRでこの強さだったらもっと上のレア度の奴らは一体何なんだ……というか、もしかして俺のステータス低すぎ……?」


 攻撃力は俺の4倍で、防御力は俺の10倍だ。移動できないとはいえ、素早さですら俺の2倍の数値を持っている。俺がまともに相対してもどうしようもない程の差がステータスに現れている。

 これを見ると、もしかして外にいるまだ見ぬモンスター達もこのレベルの強さを持っているのではないかと思ってしまう。ゴブリンに勝っているから何とかなるだろうなどとは口が裂けても言えない。


「いや、でもコイツが居れば大体のモンスターなら倒せるか。召喚した場所から動けないなら、俺がコイツから離れなければいいだけだしな」

 

 色んな不安が押し寄せてきたが、それを打ち消す程に強いモンスターを手に入れた事に安堵する。単体での強さと数を兼ね備えたモンスターだ。今の状況では最適なモンスターだろう。俺の素の運もまだまだ捨てたものじゃないらしい。


「さて、あと1回引けるけど。……まあ引いておくか。今は手数が欲しい」


 目当てのモンスターは引き当てた。経験則上、欲張って最初に求めていたもの以上の物を欲しがるとロクな事にならない事は理解していたが、そもそも今は使えるカードであれば性能は気にしていなかった為、続けて最後のガチャを回す。


──────────────


つららミサイル

Rare:R

Type:術式カード

コスト:10

Lv:1


能力:①敵単体に氷属性の攻撃。


──────────────


「うーん、くっそ微妙!」


 さっき引いたカードとの落差が激しすぎて、俺はそう反応するしかなかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ