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SNOW  作者: 涼瀞
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夕紀と和星

KAZUHOSHI SIDE


柊先生に送ってもらった後腹が立って家にも帰らずに街をぶらぶらしていた。


無性に苛ついて人にぶつかったら片っ端から魔法を使って叩き潰していった。


ドイツもコイツも吹っ飛んで気絶して終わりだった。


すこし強めの魔法を出したら強がっていた奴は漏らしてそのまま気絶してそれで終わり。


そこら辺の奴よりは強いのに雪を泣かしたあいつにはまったく及ばないことが分かりたくないのに身体が感じていた。


『そいつに関わるな。殺される。』


本能が分かっていた。情けないけど震えていた。あいつの為に強くなることを決めていたのに力になれなかった。


結局先生に助けられて、自分が助かったことを素直に喜んでしまった。


そのことを理解しているから八つ当たりしていた。


それから力が欲しくてギルドに向かった。



「Bランクの依頼ない?」いつも通っているギルドに着いて普段より高い依頼を探してみた。


「和ちゃん、Bはまだ早いからやめときなよ。」


と親しい仲介屋に止められた。


「大丈夫だよ、たかがクラストン20匹なんか瞬殺だよ。」と笑い飛ばした。


そうしないと壊れてしまいそうだったから。


それから依頼場所に移動した。


草木以外は何もない草原。本来一般人の来ていいところではない。


今回はハンターだから許されている。危険ランクはC-A。


A地域に入ってしまうと俺でも生きて帰れるか分からない。今日はB地域だから気を抜くことは出来ない。


一歩踏み出すと灰色の物体が視界を横切った。


すぐに近くにあった岩に跳び乗った。灰色の毛並みに鋭い牙、クラストン特有のハイエナを思わせる厳つい顔が20近くあった。


左腰に結んでいた西洋剣〈カノン〉を握り切りかかった。


一斉にクラストンが突っ込んでくる。右手に握ったカノンを横一閃に切りつけると血飛沫が地面に垂れていく。


斬られたクラストンはその場に倒れた。


地面を蹴り残りのクラストンにかけて横に跳んだ。


クラストンは俺を見失ったようで30メートルほど先で止まり俺を確認すると再び突っ込んできた。


「血飛沫滴り、我に仇名す者を這い蹲らせよ、黄泉の灯火」


カノンの刃先に黒い灯が灯った。それをクラストンのほうに向け縦に振り落とした。


ひらひらと空中を漂い地面に降れた。


地面から瞬く間にどす黒い焔が湧き上がりドーム状に広がりクラストンを包み込んだ。


カノンに付いている体液を払い焔が無くなるのを待った。


消えると何もなかった。俺はクラストンの居たであろう場所の砂を摘み胸の内ポケットから殻のビンを取り出し土を詰め蓋をしてしまった。



足音が聞こえたので振り向くと男が居た。


「へえ、ガキの癖に中級魔法が使えるのか。今回は当たりだな。」男は薄気味悪い笑みを浮かべながらこちらに近付いて来た。


俺は静かに男の動きに目を凝らした。


それも気にしないで距離を狭めてくる。


「お、かなりのイケメン君か。とっとと捕まえて捌くか。」歩くのを止めて魔法を使おうとしているのが分かった。


「焼き尽くせ、『猛火』」10メートル程の炎が男に襲いかかった。


「詠唱契約もしてるのかよ。最高じゃん。300万はいくかな。久しぶりにいい酒が飲めるな、流鬼(リュウキ)


男の左手から澱んでいる水が溢れて地面に落ちていく。


水は地面に染み込まずにひたすらに溜まっていく。


その間にも猛火は接近していき男に当たって弾けた。



砂塵が消えると失神している男の姿が見えた。


(はぁ、一応ギルドに連れて行くか。)俺は男を背中に乗せてから歩き始めた。


「バッカじゃあねえの、破心の(ハシンノホコ)


投げつけようとしたが左手を掴まれた。


何とか振りほどいてカノンを両手で握り締めた。


斬りかかろうとした時鮮血が辺りを染めた。焼ける様な痛みが右肩が突き抜けた。


「え・・・」あまりにも間抜けな声がこぼれた。そのまま地面に倒れた。


だんだん近付いてくるのが見える。



髪を鷲掴みにされて男の笑っている顔が見える。


異様な色の鋒を刺そうとしているのが見える。



「これからは敵は戦闘不能にしたのを確認しろよ、まぁ次なんてないけどな。」


「荊の高楼(イバラノコウロウ)」男の下に野薔薇(ノバラ)が咲き乱れていた。声を出す前に荊が円柱状になり姿が隠れてしまった。


荊は男を入れたままとてつもない速度で成長していき小さくなり姿は見えなくなった。


日本刀を荊の根元に刺すと破裂音が聞こえた。想像してしまい想像を払った。


真っ赤なバラの華が舞っていた。


「おい人殺しなんで助けた。」睨みながら答えを待った。


「お前からすれば俺は『敵』だ。だが俺はお前をなんとも思っていない。

たまたま今回は俺の標的がお前を襲ったからお前が助かっただけだ。偶然だ。

偶然に意味なんてない。あと少しで別の密猟者がここに来る、死にたくなかったら逃げればいい。」無機質な声でそれだけ言うと荊のあったほうに歩いていった。



そして土を空き瓶に入れて日本刀の鞘の中に入れた。


俺はその姿を一度だけ見たことがあった。


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