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687 出張の準備は早々にまとめるべき

失礼しました

投稿する話数を間違えました 汗


戦地への出張。

そんな単語、ニュースキャスターやジャーナリストといったメディア関係者や軍事的部門の関係者くらいしかやらないとひと昔の俺ならそう思っただろう。


だけど実際は俺も戦地に向かうことになっている。


一週間の入院期間、その間に体の調子を万全に整えてから。


「ふぅ」

「スコア更新、まだまだ強くなってますよ」

「ありがとう」


病院の中に訓練施設があるなんてなんか不思議な感覚だけど、鉱樹を片手に訓練の監督役になっているリザードマンの医師からスポーツドリンクをもらってそれを口に含む。


甘さと塩味が調度いいバランスの飲み物が、消費した諸々を補填してくれる。


「魔力の流れも観測する限り、問題はありません、魂の波長も正常、これなら戦場へ出ても問題はありませんね」


健康面が万全でない状態で戦場に行っても足手まといなだけだと、エヴィアからありがたい言葉をもらっている。


それ故に、医者の言葉を信じて体調を万全にするようにしている。


「となると、今日明日には退院できる感じか?」

「さすがによほどのことがない限り今日は無理ですが、明日には退院しても問題ないかと」

「そうか」


魔王軍の中でも腕のいい医師が集まったこの病院で療養すれば、もとのタフネス振りも重なってどんどん体の調子も復調していく。


それこそ……


「しかし、将軍のステータスというのは何度見ても笑うしかないようなステータスですね」

「昔の俺もそんな感想を抱いていたよ」

「あなたの場合、たった数年でこのステータスですから、歴代でも類を見ない急成長した将軍なんでしょうね」


仕事をせずに休養を取り、体の調整をしているから調子のいいこと。


しかも専門家が監修しているから、諸々骨格のずれとかも直してくれる。


お陰で体の調子という面では、過去一番のいい状況なのではないだろうか。


ダンジョン内のモンスターを想定した訓練を軽く汗を流す程度の疲労で終了した俺を、タブレットでステータスチェックした医師は、そのリザードマン特有の笑みでごまかしつつ、俺のステータスについて指摘する。


「と言っても、魔王様には敵わないんだろ?」

「そうですね、あの方の情報は本当にごく一部の信頼できる医師にしか開示されていないので私には閲覧権限がありません。なので、言うことは難しいのですが……」


そのステータスが、魔王軍の中から見ても破格、いや、異常と言えるような数値を叩き出しているのは明白。


しかし、世の中には上には上がいると言うこと。


「知り合いの医師曰く、現役の将軍をまとめて相手にすることはできる程度のステータスはあると聞いていますね」

「なるほど、精進あるのみってことかね」


一般的に見れば雲の上のようなステータスの今の俺であっても天に輝く太陽には届かない。


どうやってそこまで成長したのか気になるところだ。


「そこまで成長できたのなら、あなたが次代の魔王様になるかもしれませんね」

「おっと、そこまで成長したら面倒なことになる未来が見えるなぁ。成長はほどほどに押さえておかねば」

「そんな考えができる人の方が珍しいですがね」


しかし、その成長具合を適用したら、この国で火種になりかねない物なのでひとまず放置。


目先の問題が解決するよりも先に、別の問題をこさえるほどマゾではない。


ひとまず、クールダウンと言うことで体の柔軟を始める。


「戦況の変化は何か入ってるか?」

「不死王様の方面は、膠着状態という名の優勢状況が続いています。今は時間的猶予があるので無理に攻めることによる被害拡大を避けている見通しです」

「教官が遊んでないってことは……敵さん何か地雷踏み抜いたなぁ。教官たちの逆鱗に触れちまったら万が一もありはしないだろうさ。となると、本当に時間次第でそっちの問題は解決するな。国内の方は事後処理の時間がどれくらいかかるかが問題だな。向こう側は?」

「そっちも変わらずと言うことです、最初は大きく動いていたようですが補給線の関係上拡大しすぎることもできないので、現在は足並みを揃えている状態です。利己的なトップが入らない状況なので、思想的な集団が構成されつつあるので現実と理想をすり合わせていると言う段階ですか」

「キオ教官からしたら、少しストレスが溜まる環境だな。気に入らないってことはないけど、性にはあわない。もう少し暴れたいって感じか」


俺の体も随分と柔らかくなったものだ。

戦闘において柔軟性というのは非常に大切な要素だ。


これが出来る出来ないとでは、雲泥の差が出る。

こっそりと溜息を混ぜながら、向こうに行った時にキオ教官に色々と絡まれるんだろうなと覚悟を決める。


「問題らしい問題は?」

「強いて言えば、人王様への面会要請で病院の方に連絡が来るのをどうにかしてもらいたいのですが、数が数なので少々業務の方に支障が」

「全部、ケイリィの方で対処してもらってるから業を煮やして直接交渉に乗り出してきたか……申し訳ないが退院までシャットアウトしておいてくれ。体調に影響が出るとか言っておけば何とかなるだろ」

「そうなるといいですね」


そして俺は入院している間にも、周囲に影響を及ぼすような立場になってしまったようだ。

見合いの話は、悉く断ってきたはずなのにそれでもまだ諦めていない。


いや、戦況が有利になってきている現状勝ち馬に乗ろうとして、より一層プッシュしてきている。


体調を理由に断ろうにも、将軍がそう簡単に体調を崩すわけがない。

今回はあくまで特例で、医師もそこまでのことが滅多に起きないのは理解している。


そしてそれは向こう側にも理解が進んでいるようで、こんな理由でここで断っても嘘だろと諦めないだろう。


だからこそ、少し諦めたようなニュアンスの返事になるわけで。


「少しだけポーションの優遇をするように伝えておくから」

「期待しておりますよ。正直、期間限定の看護師の採用はしていないのかと問い合わせに答えるのも億劫でして」

「もろ、ハニートラップだろそれ」

「ええ、妙齢の女性ばかりでしたよ?どうです?」

「嫁に殺される」


その態度に申し訳なさを感じて少しだけこの病院に送るポーションの量を増やすと約束して、それで対応してもらおう。


ハニートラップに喰いついてもろくなことにはならない。

夫婦間は悪化するし、変な要望とか聞かないといけない。


百害あって一利なしとはこのことだ。


「将軍であっても家庭では尻に敷かれるのですかな?」

「さてな、ノーコメントだ」


体を解し終われば、汗を流してあとは病室で軽く仕事の報告を確認するだけで今日は終わりだ。


「然様ですか。ああ、それと奥方様たちの面会の件なのですが、いつも通りでよろしいですか?」

「ああ。それで頼む」


毎日これくらいの仕事量ならいいんだけど、それができたら苦労はしない。


実際、ケイリィへの負担が増え続けていて、いつ不満が爆発するかわからないからな。

早急に復帰する必要がある。


幸い、責任者である俺が離れても仕事が回るようにできている。


戦場に行っても問題ないように用意していたのが功を成したわけだ。


しかし、だからと言ってすべてを任せっぱなしというわけにはいかない。


この後家族が面会に来る、その時にケイリィも一緒に来る。


その時に書類やら、確認事項やら諸々やるべきことをやるわけで。


早々に汗を流して迎える準備をしないとなと思っていたんだが。


「……スエラ、何でスーツ姿?」


最近は私服姿が多かった、スエラが俺が入社したころに着ていたスーツ姿で現れて、ちょっと目を見開いてしまった。


「次郎さんが戦場に行くと聞いて、ケイリィだけじゃ色々と手が足りないと思いましてこれを機に職場復帰をしようかと」


眼鏡にスーツ、一瞬過去に戻ってしまったかと錯覚するくらいに完璧に着こなしているスエラ。


「いやぁ、本当に助かってるわよ。スエラ本当にブランクあるの?って思うくらいにビシバシ働くのよ」

「状況に関してはエヴィア様から逐一聞いていましたから、知識面では問題ありませんでした。メモリアと一緒に補給路の確保に関してシミュレーションもしていましたので、その経験もあるかと」


しかも、俺が眠っている間に諸々手伝いを再開していたという。


「初耳なんだが」

「ああ、私があえて黙っているように言った。訓練の方も一段落してひとまず自衛に関しては問題ないレベルに達した。子供たちの世話も職場の隣に育児ルームを作ることで解決。ヒミクがサポートとしてそこに常駐すれば問題ないことも確認済みだ」


さらに、俺の知らない間に部署の間取りも魔改造されていた。


「資材はトリス商会の方で安く用意させてもらいました」

「うむ!他の職員たちの子供も預かっていて、働きやすくなっていると評判だ!!ユキエラやサチエラも友達ができて大変喜んでいたぞ!!」


しかも、うちの嫁たちの行動力がすさまじい。


スエラの職場復帰をするための環境を瞬く間に用意する連携力もそうだが、迅速果断、行動に一切迷いがなかった。


さらに、職員たちの職場環境改善で託児所を作ったことで働きやすくなった。


子供を預かるのが熾天使のヒミク。

料理や掃除、最近では育児にも精通し始めている、戦闘能力よりそっち方面で有名になり始めている彼女だ。


将来、自分の子供のためにご飯を作ることを夢にしているのは伊達ではなく、粉ミルクから離乳食、子供受けする食事まで網羅している。


しかも回復魔法も使えるから、体調不良の子供が出ても安心という子供を預ける環境を整えてしまった。


「俺、一切その話を知らなかったんだが」

「話が出たのは貴様が倒れたのがきっかけだからな、スエラが仕事ができるのはお前もよく知っているだろう。そんな人材を遊ばせている余裕は我々にはない、それにスエラ自身も待つよりも側にいて支えたいと志願してきた。お前は心配かけすぎだ」

「そう言われると、ぐうの音も出ない」


そんな環境を作らせたのは、何度も俺が倒れ続けているからだ。


心配をかけて、その度に話し合っている。

怪我をしないように体調に気を使ってとかもろもろ言われ続けていた。


それの限界が来たというわけだ。


エヴィアの諦めろと言う視線に元々反対するつもりがなかった俺は素直に両手を上げた。


「まぁ、俺としてはスエラに仕事を手伝ってもらえるのは万々歳なんだけどな」


危険地帯に飛び込むわけじゃないというのなら俺的には良い。


「そうか、なら出張にスエラもついていっても問題ないな」

「ちょっと待て、それは聞いていない。いや聞いた今でも待ったをかける。事務職として復帰するんだよな?」


てっきり後方でケイリィと一緒に事務処理を捌いてくれると思っていたのだが、エヴィアは俺の言葉に首を横に振る。


「いや、スエラが復帰するのは政務官、この一か月の仕事はその感覚を取り戻すための前座だ」


一緒に戦場に出るとなれば話は別だ。


スエラは言っては何だが、俺ら家族の中では一番のウィークポイントだ。


その彼女を危険が多い戦場に連れていく?

さっき子供の世話をしながら事務仕事をしていると言ったばかりなのに?


何の冗談だとエヴィアを睨みつけてしまう。


「ライドウから聞いただろう、あいつが求めているのは国として成り立たせられる政務官だ。お前は戦闘能力には長けて、そちらの知識もライドウよりはあるが本職ではない。最初はケイリィを向かわせる予定であったが、ケイリィが抜ける穴をスエラが埋めるというのは効率が悪い。であれば、最初から空きである箇所に対処するのが効率的だ」

「そういう話を言っているわけじゃ」


エヴィアがその危険性を知らないわけじゃない。

俺の魔力が滾り、説明しろと圧をかけるのであった。


今日の一言

早めに準備をすることで後のトラブルにも対処できるようになる。


毎度のご感想、誤字の指摘ありがとうございます。

面白いと思って頂ければ、感想、評価、ブックマーク等よろしくお願いいたします。


現在、もう1作品

パンドラ・パンデミック・パニック パンドラの箱は再び開かれたけど秘密基地とかでいろいろやって対抗してます!!

を連載中です!!そちらの方も是非ともよろしくお願いいたします!!

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― 新着の感想 ―
[一言] なまじ能力がある女性を放置しすぎた次郎が悪い。いつまでも待つ女ではいられなかったスエラ……我慢できなかった期間が少々短い気もするが、それも次郎が心配かけすぎたというところか。
[気になる点] シュミレーション警察がやってくるよ! シミュレーション
[一言] なんか冒頭おかしい……話飛んだ?と思ったら本当に一話分飛んでるっぽいです (今回の688話の前が686話になってる)
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