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604 欲と言うのは人を狂わせる。

メリークリスマス!!


マジで今年のクリスマスは寒いですね。

皆さま体調には気を付けてクリスマスを楽しんでください!

 

 想像以上に記者会見の影響は絶大だった。

 マスコミたちは当然として、他にもゴシップ好き、パパラッチに、凄いところだと重度の中二病患者までもが会社に押し寄せているのが日常になりつつあると感じるくらいにまた日が過ぎた。


「ケイリィ、資材搬入の状況は?」

「詳細の報告書は夕方に着く予定よ」

「ムイルさん、貴族連中の動きの報告書は」

「これじゃな」


 こっちはこっちでダンジョン設営と言う仕事にてんやわんやと汗水たらして働いている。

 テレビ特番では、連日連夜と俺たちのことが放送されていた。


 流石に時間が経てば下火になるだろうと思っていたけど、もうすでに一か月以上俺たちの話題がニュースになっている。


 終いには、その派生形で犯罪の片棒を担がせるような形の魔法事件なんて代物も生み出されている始末。


 魔法というものがフィクションではなくなった影響と言うのは変な方向にも作用している。

 だが、こっちは堂々と、表舞台に対して魔法的技術供与はまだ一切していないと公表している。

 なのでその手の犯罪者は、詐欺集団や変な宗教団体か、あるいは本当に裏の組織だとわかるのでこっちは無関係を一貫して主張している。


 そう言った面倒ごとは魔王軍の中でも専門部署が対応してくれているが、俺は俺で対外的には地球側の顔役と言う立場に収まっているので、全ての情報を記憶しないといけないのだ。


 おかげで、ケイリィからダンジョン建設の報告書を受け取って、ムイルさんから魔界の方での貴族連中の動きに関する情報をもらって。


「はぁ、今度は西側諸国からの面談要請かよ」


 そしてテーブルの上にはついさっき送られてきた様々な国からのアポイント要請だ。


「これでも絞られているのよ?中小問わなければ、国だけじゃなくて企業とかも未知の技術を手に入れるために色々と方法を使って私たちにコンタクトを取ろうとしてるわねぇ」


 そのリストの数のうち、今週だけで十数件会わなければならないことが確定しているから、今から気が重い。


「ハニートラップもあったからなぁ。流石にあそこまであからさまだと笑えてきたが」


 その面会は何度もやってきて、中にはあからさまにその手の勧誘ですよと言わんばかりに見目麗しい女性を連れてきている輩もいた。


 胸元が大きく空いた服とか、少し足元が見えそうなタイトスカートとか、流し目とか、誘ってますよと匂わせるような仕草のオンパレード。


「初見の女性に発情するような男だと思われたことにむしろイラっと来たな」

「だからってエヴィア様や私を本気で化粧させて呼んだときはどういうつもりかと思ったけど、理由を知った今ならあの時の顔は面白かったって思えるわね」


 そう言う輩には会話で時間稼ぎをしながら、ケイリィたちの化粧時間を稼いで、折を見て資料を持ってくるとか理由を付けて入室させ、女としてのプライドをへし折って対応していた。

 相手もモデルとか、女優とか、かなりの容姿を持った人を用意しているけど、こっちはこっちで異世界美女が奥さんなのだ。


 負けるつもりはない。


 むしろ異世界技術を結集させた金に糸目をつけない美容魔法と、美容魔法薬の併用技を売り込み、商売ルートをちらつかせてこっちの有利な条件で再度交渉させることを約束させてしまったのだ。


 まぁ魔素がない空間だと効力半減どころか効果が格段に下がるから、一時の美だと言うことになる。


 けど、アンチエイジング効果や、美肌効果は確実に起きる。


 異世界でも美容を気にする女性は多いのだ。

 よってその手の方面に技術進化も起きるわけで、色々と考えると地球側と比べてもそん色ない技術力が生み出される。


 そうした条件も重なって、こんなアポイントの山が生み出されるほどの魅力が備わっている世界に見えるのだ。


「まぁ、交渉に関しては基本的に日本とアメリカの条件が確定してからの話になるな。それまでは下手にどこともつながりを持つことはできない状況なんだけどな」


 まだほかにも有用な技術、資源、人材、文化と未知の世界が広がっていると想像が掻き立てられているわけだ。


 だが、だからと言ってどこもかしこも交流を持てるかというと今のところ情報戦の矢面に立ってくれている日本や、その日本を支援するアメリカの顔を立てる必要があるので、はいわかりました交流しましょうと言うわけにはいかないのだ。


 出来ることは相手の要望を聞いて、確約はできないけど前向きには検討しますと受け流すことだけ。


 言質を取られぬようにのらりくらりと話合うだけだ。


「早くそっちもどうにかしたほうがいいわよ、テスターたちのプライベートにもハニートラップみたいのを仕掛けてきているようだし」

「警備の方、人は足りそうか?」

「警察と連携しているから今のところはって感じかしらね。寮に住んでいる海外勢は問題ないけど、社外から通勤している子たちはかなり面倒になっているわね。勝君と南ちゃん、それに香恋ちゃんの所にもいるって話しね」


 こっちはこっちで会社内に引きこもれるから問題ないけど、問題は外で活動する社員たち。


「変装用の魔道具も効果があるし、護衛もつけているから手を出すようなことにはなっていないようね。問題は、我慢の限界が来たときね。外国人には特に敏感に警察は対応してくれているけど、問題は日本人の場合ね。パパラッチとか、変質者とか、紛れ込んだらわかりにくい輩の対応はどうやっても後手に回っているわ」

「事件とか問題は?」

「今のところはないって感じだけど、ダンジョン内で鍛えているだけあって変な気配は感じ取っているって報告は聞くわね」


 将を射んとする者はまず馬を射よってわけで、大した情報は持っていないだろうが、情報もコツコツと集めれば見えてくることもある。


「引っ越しの件に関してと、仕事の斡旋に関しては?」

「どっちも推移率は三割に行かないって感じね、私たちの世界の仕事と日本政府の保護下に置かれる仕事で紹介しているけど、結局のところは異世界と関りのある仕事なのよね。そのことも説明しているからすぐにはいって言える人はほとんどいなかったわね。給与面では破格って感じてすぐに転職するって決意した人もいるけど、今の仕事が気に入って待遇に不満はないって言ってる人もいる。あるいは私たちとのつながりを維持するために会社の方で囲い込みをしようとしている会社もあるくらいね」


 なので政府と協力して、警護体制の確立と、生活援助の二方面から対応しているけど、警護の方はともかくとして生活援助の方はそこまでうまくいっている様子はない。


「勝君と南ちゃんは今週には寮生活に移るって、香恋ちゃんの方は両親と相談しているからちょっと難航しているみたい」

「そうか、もし何か問題があったら俺の方でも動く。北宮にはそう伝えておいてくれ」

「了解、他のテスターに関しても二課と三課じゃ動けないケースがあるかもしれないからサポートしておくわね」

「ああ」


 幸い、身内の勝と南は徐々に周囲がきな臭くなってきているのがわかって、住居の移動を決意してくれた。


 どっちも親との関係が良好とは言い難い二人。


 勝は接触はなかったようだけど、南の方は親から接触があって色々と聞かれて面倒だと最近聞いた。


 北宮に関しては、事前にアポイントを取って親御さんとも話をして安全面と生活面に関してしっかりと支援することは説明し資料も渡した。


 三人の学生生活もだいぶ影響を受けている。


 一般人にすら周知されて、良い意味でも悪い意味でもこの会社に入りたいと熱望する輩は多い。

 それは当然、思春期真っ盛りの学生もそうだ。

 今は募集していないが、アルバイトを募集すると言う時期になったら魔法を使いたいと言う理由だけで応募したいと言う話をなぜか南から聞いた。


 曰く、見も知らぬ男から話しかけられて驚いたと。


 そんな親含め、変な輩との関係から距離を置くために、南と勝は寮に引っ越すらしい。

 二人ともかなり稼いでいるし、寮なら会社からの補助金も出る。


 生活面では安心だろう。


 ちなみにとある事情で関係も進展したことで同居すると言う話も勝から出たが、北宮の問題が片付いていない南がもう少し時間をおくと判断したようだ。


 とりあえず当面は、身内に関しては問題はない。


 俺のお袋に関して言うなら、神出鬼没を地でいく人だ。

 どうせこの騒ぎでも気にせず、どこかしらで作ったコネを多用して世界旅行でもしているだろうさ。


 心配はするだけ損だ。


「しかし、資材建築だけでこれだけの値段とは、決済印押すのが怖いぞ」


 とりあえず、警護に関しては問題はないということで俺の当面の問題であるダンジョンの建築スケジュールに話を戻そう。


 ケイリィの報告書と一緒に渡された決裁書。

 ずらりと書かれた詳細な資材料金と人件費、諸々諸経費を合算した額を俺が決裁しないといけないのだが。


「九桁なんて額、初めてだ」


 流石の俺も、九桁の額が簡単に動いているとなるとハンコを押すのにも覚悟がいる。


 ここで俺の決裁印が押されても、この後、エヴィアと社長と確認作業がは入るから見落としがあってもあの二人なら見つけてくるだろう。


 俺が怖いのは、そこだ。

 この額のミスを見落とすと言う失態を確認されるのが、怖いのだ。


 相手は魔王とその側近。


 前者は物理的に最強、後者は家庭内で最強。

 立場的に言えばどちらも俺の方が低いのだ。


 目を皿にして、何度も頭の中でそろばんをはじいて数値の間違いがないかを確認して。


「おし、OKだ」


 ゆっくりとしっかりと決済印を押し持ち上げた時には俺の紋章がついた印が紙に押されていた。


「何度見てもいい出来ね」

「俺としても自信作だ」


 俺が持っている印は、社長ですら使うことを禁止されている俺専用の印。


 三日月と大樹が描かれた印。


 月は魔王軍の象徴、そして大樹は本来であればダークエルフの象徴であるのだが、俺の印は普通の木ではなく、鉱樹。


 そしてその鉱樹の下に集った火の円環。


 人王専用の印というわけで、ジャイアントの職人が丹精込めて作ってくれた品だ。


 その材質は象牙ならぬ竜の牙と言うからなおのこと珍しい。


 その印鑑を社長から渡され、こうやって大金を動かせるような立場になってしまった。


 そんな感慨深い気持ちとともに封筒に書類を入れて次の部署に回すようにケイリィに渡す。


「それじゃ頼むぞ」

「任されたわ」


 それを受け取った彼女はその足で別の部署にも書類を届けるのか、他の書類の束を抱えて部屋を後にした。


「さてムイルさん」


 ここまでは良かった。

 ほんわかと穏やかな口調で話せていたのだが、ここから先は少し真剣にならなければならない。


 その原因はさっきムイルさんが渡してくれた資料の情報。


 アミリさんの情報網も借りての調査だからまず間違いない。


「この報告書の内容って本当かな?」


 だけど、それでも念を押して確認せずにはいられなかった。


 その報告書の中に書かれていた文言。

 どうやら地球への交易ルートを諦められない、経済的に苦しい貴族が結集しているとのこと。


 その文面に一つ、面倒なことが書かれていた。


 食料の貯蔵と、傭兵や冒険者を含め兵士を集めていると。


「まことに嘆かわしいことにな」

「まったく、身内同士で争ってる場合じゃないんだぞ」


 欲に目がくらむとろくなことが起きない。

 この報告書が真実だと頷くムイルさんには悪いが、俺は大きくため息を吐いて。


「戦争の準備なんてしやがって」


 忌々し気に、報告書を見るのであった。


 今日の一言

 欲と言うのは抑えないといけないモノである。




毎度のご感想、誤字の指摘ありがとうございます。

面白いと思って頂ければ、感想、評価、ブックマーク等よろしくお願いいたします。


現在、もう1作品

パンドラ・パンデミック・パニック パンドラの箱は再び開かれたけど秘密基地とかでいろいろやって対抗してます!!

を連載中です!!そちらの方も是非ともよろしくお願いいたします!!

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[気になる点] なぜ将軍に勝てると思ったのかなにか勝算があったのかな
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