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602 度肝を抜くのは気持ちよくないか?

 

 アースメイカーによって巨大な島ができた。


 今では絶壁に波が打ち寄せて跳ね返されるという夢幻ではない現実の光景を見せつけている。


 唖然茫然、そんな雰囲気が艦内や周囲の気配から察せられる。


『次郎君、そろそろ船内に戻ってきて。そのままだと魔力が底を突いちゃうよ』

「わかった」


 その気配と島の出来栄えに満足して頷いている俺にケイリィからの念話が入り、俺は踵を返して船内に戻る。


 ルートは出てきた通路と一緒。

 エレベーターで格納庫に戻ると。


「人王ご苦労様、良い出来栄えの島が出来上がったよ」


 満足そうに笑う社長が出迎えてくれた。


「恐縮です」

「うん、君の魔力はこの世界との相性がいいのかな、霧散する比率が通常よりも少なく感じた。もしかしたら純粋に魔力濃度が濃いからこそ成せることだったのかもね」


 そして、今回のアースメイカーの使い方に関して高評価してくれている。

 研究者思考と言えばいいのだろうか、考察しがいがあると言わんばかりにこのまま話し込みそうな雰囲気を出している。


「魔王様、考察は後回しでお願いします。今は客人を待たせている方が問題かと」

「そうだね、いやぁ、戻ったら質問攻めにあいそうだよ」

「その割には楽しそうなお顔で」

「うん!だって楽しみにしてるからね!!度肝を抜いた後の彼らの心境を考えたら高笑いが出てきそうだよ」


 しかし、スケジュール的にここには長居できない。

 地盤は出来て、ダンジョンを建設することができるようになったけど肝心のダンジョンコアはきっと今の時間帯は屋敷の庭先で昼寝しているだろう。


 そもそもこの島はあくまで地盤だ。


 もろもろ整備して、ダンジョンを建設できるような設備を作ってようやくダンジョン作成に取り掛かれるのだ。


 やることはまだまだ目白押し、通常スケジュールだけではなく妨害工作にも気を付けないといけない。


 管理職の苦労を存分に味わえるだろうスケジュールは既に俺の頭の中に入っている。


「そうですか、ではさっそく参りましょう。人王、あなたはいかがしますか?多量の魔力を保有していると言ってもここでは補給もままなりません。体調がすぐれず、休息をとると言うのなら問題ありませんが」

「お気遣い感謝します樹王。しかし、あの教官に鍛えられたのでご心配なく、この程度の魔力消失で寝込むほどやわな鍛え方はしておりませんよ」

「なるほど、ではともに参りましょう」


 ひとまずやるべきことは、きっと首を長くして説明を待っている各国の政府要人。


 もしかしたら船から本国に通信が飛ばされているかもしれないが、後々マスコミにもリークし、魔王軍の存在を世界に周知する手はずになっている。


 その辺の段取りはしっかりとしているので問題はない。


「ああ、そうだ人王」

「なんでしょうか」

「説明するなら現地で説明したほうが手間も省ける。この船を浮上させて島に着陸させてくれないかい?」

「仰せのままに」


 そして島に上陸することも織り込み済み。


 人というのは現物を見るからこそ信用できる。


 島を作ったが、それを見せず帰るという行為はしない。

 むしろ何もないただの岩の島だからこそ見せるべきなのだ。


 施設を作った後とかだと、余計な面倒ができるから。


 俺は頭を下げ、その段取りに取り掛かる。


「ケイリィ、ムイルさん、スケジュールは第三段階に移行。ケイリィは周囲の船にトゥファリスが浮上そして島に上陸することを告知してくれ、告知後上陸する」

『わかったわ』

『あい分かった』


 これであとは二人がやってくれると一安心したがいいが、ここからがある意味で厄介。


 トップ層の対応は社長が請け負ってくれるが、それ以外は俺が対応しなければならない。


 十中八九、アースメイカーの仕様とか購入が可能かと質問攻めになる未来が見えている。

 そのための断り文句は百通り越して八つほど考えてきている。


 一番の問題は素材と値段。


 値段の方は大国ならワンチャン出せるか出せないかという値段。

 しかし、肝心の素材が古代竜の魔石という素材の中でもレア中のレア素材。


 ガチで千年に一度くらいのペースでしかお目にかかれない代物なのだ。


 それを理解できても、納得できるかは未知数。

 在庫があるとか、代用品は作れないのかと質問も受けることだろう。


「社長、移動の準備は完了しました。通達後、浮上します」

「うん、よろしく」

「はい」


 それらを踏まえて、元の部屋に社長と一緒に戻るのだけど。

 予想通り、戻った先でアースメイカーの威力を見た一同は、真っ先に俺たちに近寄ってきた。


 護衛が壁を作り、勢いを殺してくれたけどそれでも節度を守れるギリギリの範囲で圧をかけてくる。


 あの手この手で情報を引き出そうとしている政府要人。

 それをのらりくらりと受け流す社長と俺。


 樹王は静かにその場に佇んでいる。

 秘書と認識されたからなのか、そっちに話しかける様子はない。


 ちょっとうらやましいなと思いつつ、俺も対応に追われる。


 相手が求めているのは、情報とコネクション。

 アースメイカーのインパクトがあるからこそ、俺たち魔王軍が何かしら便利な技術を秘匿しているのは周知された。


 そのためか、さっきよりも質問のペースが速い上に、執念に似た何かを目に宿している。

 有体に言えば、顔は笑って瞳がギラついていると言うやつだ。


 俺の周りは人間だけなのに、肉食獣に囲まれている気分を味わっている。


『次郎君、各艦に通達完了したけど艦載機の離陸許可と島への上陸許可を求めて来たわ。名目上は安全の確保ってことってなってるけど、多分情報収集も兼ねているわね』

『問題ない、先に上陸してもらって構わない。あの島は現在は水源しかないただの岩島。鉱物資源も森林資源も何もない。土地的な価値しかないから調べられたとしても広さと高さを把握されるだけだ』


 その気分を味わっている最中、ケイリィからの念話。

 内容は政府要人が求めてきている、現地視察。


 有毒ガスや、地盤の安全性、その点に関しては社長の折り紙付きで保障される。


 だが、社長が大丈夫だからといってはいわかりましたと鵜呑みにするようじゃ国のトップはやっていけない。


 多少面倒な手順を踏んででも、調査をして安全を確保しないといけない。


 正義感、義務感、使命感。

 どの言葉を使ってもいいが、職務に忠実なのは良いことだ。


 その腹の底で何を考え、何を企もうとも、こっちからしたらそれは当たり前のことだ。


 善意だけでこの世の中を歩める者はごく少数。


 それこそ、悪意が悪意を向けることをはばかられると思うくらいの聖人でないと不可能だ。


 何かあると考えるのが自然。

 何かすると想定するのが妥当。

 何もないと考えることがすでに愚行。


 ここはそういう場である。


 質疑応答に答えつつ、ケイリィへの指示を出す。

 マルチタスクが当たり前になってきている。


 聖徳太子って実は魔力を持って、魔紋を持っていたのではないかと思うくらい身体強化に感謝する。


 船内から写し出される映像に、数機のヘリが島に向けて飛行する映像が映し出される。

 どこの国のヘリかは、発艦した船を調べれば一目瞭然。


 日米は当たり前、中露も送った。

 他にヘリ搭載艦を連れてきている国もいくつか送り、そしてドローンを送っている国もいる。


 最初に踏み込むと言う名誉は無くなったが、それでもかまわない。


 もしここで国旗を突き立てようものなら、話は別だが、全ての国に話を通して、そして契約書も交わしている。

 よほど頭がお花畑でもない限り、そこまでの愚行を行う輩はいない。


 後から、あの島は我が国の領土だと難癖をつける輩がいようものなら他の国から大ひんしゅくを買うことになる手はずは整っている。


 表面上は何もない島だし、いくらでも調べればいい。


 その間に答えられる質問に答えて、交渉に関してはのらりくらりと受け流すことを続ける。


『次郎君、安全の確保が終わったって連絡が来たわよ』

『思ったよりも早かったな』

『そりゃ何もない島だもの、見るものすらなかったら何を探すっていう話ね。流石にそこら辺を掘り返すわけにもいかないでしょ』

『それもそうだな』


 時間にして一時間もかからないくらいだろうか、ヘリが離陸して島の周辺を飛び始めたころに連絡が来て、ようやくこっちが上陸する番。


『ムイルさん、頼む』

『待ちくたびれたわい。さぁっていくぞい』


 トゥファリスを浮上させると周知するときのざわめきを聞きつつ、ゆっくりと浮かび上がっていく船体。


 元から浮かぶことは知られていたけど、それでも外から見るのと中から見るのとではその景色に差は出る。


 会話が無くなり、ゆっくりと空へと浮かび、そして飛行機ともヘリとも違う感覚で前へと進む船。


 段々と島が近づき、その全容が見える。

 その時にまたどよめきが起きる。


 ごつごつとした岩場を想像していたかもしれないが、魔法で作った島はほぼ整地されているようなもの。


 多少の凹凸はあっても、すぐに整地できる範囲内。


 ヘリがすぐに着陸できたのもその所為。


 見渡す限りの平面、海風が横から入ってきても遮るものもないもない岩の断面のような島。


 そこにゆっくりと降りるトゥファリス。


 海辺から島に入って二キロほど。


 着陸して、そして俺が先導し各国の護衛に囲まれた政府要人が通路を進み、そしてハッチから外に出る。


 何もない、本当に何もない島。


 拍子抜けと言わんばかりの雰囲気を周囲が醸しだしている最中、俺だけは感慨深い気持ちに浸っている。


 今ここに立っている台地が、俺の出発地点、ここから俺のダンジョンが始まる。


 何もかも新規開拓。

 始まるのだここから。


 そう思うと、頬がにやけそうになる。


 何もないまっさらな島で笑ってしまうのは俺だけだ。


「楽しみかい、人王」


 しかし、俺の気持ちを察する人物は存在する。


「はい、魔王様」


 社長がいつの間にか隣に立ち、護衛たちが遠巻きに俺たちを見ている。


「何もないこの場所から、始まると思うとなんだかワクワクしてきますね」

「その気持ちわかるよ。私も魔王になると覚悟を決めた時の感覚は今でも忘れられないよ」


 今から始まると言うのは緊張することも多い、だけど、ここから始まるのだと言う未知を体験できるという冒険心によって興奮することもある。


 俺はダンジョンを始める覚悟。

 社長は魔王になると言う覚悟。


 立場も環境もまるで違う。


 だけど不思議と共感だけは感じることができた。


「その気持ち忘れずにね。期待しているよ人王」

「はい、ご期待に沿えるよう努力します」


 周囲がこの島に何もないことに飽きて船に戻っていく最中交わした言葉。


 俺はきっとこの島に踏み入れた時の感触を忘れないだろう。


 この先、未来ではどんな島の形になっているかはわからない。


 だけどもう二度とこの景色を見ることはない。


 まっさらで、何もない、無垢な状態での島。


 ここに戻ってくることは二度とない。


 それを心に刻み込み、俺も振り返って歩き出した社長に続く。


「さてさて、この後も国と国との会談だ。忙しくなるよ」

「多忙には慣れています」

「そうかい?頼りになるね」

「子供と妻に会うための時間だけは意地でも確保しますが、それ以外は全力でやる所存です」

「おっと、君も言うようになったね。しかし、それでいい、仕事一辺倒のままだと家族から愛想をつかされて、私に嫌味を言うことしか楽しみがなくなる老害になってしまうからね」

「ご忠告痛み入ります」


 この無垢な島に再び踏み入れることを楽しみにして。



 今日の一言

 驚かせると言うのは楽しいと思える。


毎度のご感想、誤字の指摘ありがとうございます。

面白いと思って頂ければ、感想、評価、ブックマーク等よろしくお願いいたします。


現在、もう1作品

パンドラ・パンデミック・パニック パンドラの箱は再び開かれたけど秘密基地とかでいろいろやって対抗してます!!

を連載中です!!そちらの方も是非ともよろしくお願いいたします!!

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