表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
592/800

579 印象を変えてみるとまた見えてくるものが変わってくる

 

 第一印象でいい印象を植え付けてみたが、ずっとそのままだというのは異世界の人と付き合う場合不都合が多い。


 わかりやすい例を挙げるなら、オークやゴブリンという種族だ。


 異世界物の小説とかだと、先ほど挙げた二種族は雑魚の代名詞として有名であったり、成り上がりの主人公に抜擢されることがある種族だ。


 他には男性単一種族であって、他の種族の女性を攫って繁殖するという醜聞を持っている種族でもある。


 あくまでその印象は、地球側のフィクションによる空想である要素があり、実証され、裏付けされた証拠はない。


 事実この会社ではその二種の種族は大勢いる。


 しかもゴブリンの中でも魔力適正の高い存在がいて、過去にはゴブリンで魔王に上り詰めた存在もいる。


 それに今回はこのパーティーには参加していないが、その二種にもきちんと女性もいるし、会ったこともある。


 ゴブリンの女性は肌こそ緑色をしているが小柄で可愛らしいのが特徴で、奥ゆかしく色々と気配りの出来る女性というイメージ。

 オークの女性は種族の特徴であるブタの鼻こそ独特ではあるがそこまで気にならないし、それ以外は中々豊満と言っていいようなラテン系と言っていい体系の持ち主で種族柄、からっとした姉貴と言いたくなるような性格が多い。


 故に、ゴブリン族やオーク族が異種族の女性を攫うというのはこっちの世界では基本的にない。


 ダンジョン内のモンスターたちも、いかがわしいことをしている暇がある位なら即座に殺せという思考を刷り込んであるので、繁殖欲よりも殺意の方が上回っている。

 なので、よくある展開で女騎士が『くっ殺せ』と言う前に容赦なく殺されてしまう。


 第一に、ゴブリン族もオーク族の男性にも好みというものがある。


 この会社に入社してから何度か一緒に食事や飲みに行ったことがあって、酒が入ればそう言ったジャンルの話になるのだが、たいていの男は同種族の女性が好みだと言う。


 異種族の女性と付き合っているパターンもあるけど、それはそれできちんと気持ちが通じ合っているパターンであって、決して無理矢理と言うケースではない。


 しかし、この話をしている段階でお気づきだとは思うが、そう言ったフィクションの話を知っている人からしたら第一印象で話しかけ、そして失敗するというケースが出てくる。


 事実、橘がいたグループも退魔と言う仕事をしているためか、人と言う存在以外を嫌悪している。

 人ではない種族が悪事を働いて迷惑をかけていると言う印象がぬぐえないからだろう。


 しかし、ここで一つ気づいて欲しい、では人には悪い奴はいないのかという話だ。

 人にも善人と悪人が存在する。


 では、人ではない種族にも善と悪が存在するはずだと。


 それに関しては、それとこれでは話が違うと言い訳されるかもしれない。


 鬼は全て悪だと断じる印象の多い人の大半は、良い鬼もいるかもしれないが、悪い鬼と良い鬼を見分ける手段がない、あるいは、鬼と言う存在に生理的嫌悪感を持っているのだろうと俺は思う。


 様々な種族と交流している俺からしたら、視野が狭いと思ってしまう発想だ。


 よって、その発想を取り払うための策が、このマスカレードパーティーと言うわけだ。


 この店のスタッフが宙に浮くお盆の上に、鼻と目元を覆うような赤と青のマスクを持ってきて、男性側には青、女性側には赤のマスクを配っていく。


 女性陣は何の迷いもなく、そのマスクを受け取っているが、男性陣は恐る恐ると言った感じでマスクを受け取り、受け取っても何だこれはという顔で、そのマスクを見ている。


「皆様のお手元に配られたマスク、それは魔道具です」


 全員に行きわたったことを確認し次第、俺は説明を再開する。


 俺と霧江さんの手にも同じマスクが、配られ、そして俺はそっとそのマスクを被る。


 青いマスクを被ると、途端に俺に変化が起きる。


「「「「「!」」」」」」


 すっと顔を覆っただけで、あっという間に別人になる。


 顔はあらかじめ、このマスクに設定されている姿に幻覚変身するマスクである。

 これだけだと諜報活動とかで使えるのではと、思われるかもしれないが魔力が独特のせいですぐバレる上に、体全体を幻覚で隠している所為で激しい動きができないという欠点がある。


 普通に歩いたり、しゃべったりする分には問題はないが普通に走ったりすると変な動きになってしまうほどの低位魔道具だ。


 そして俺がマスクを付けた後に男性陣がどよめくが、これくらいで驚いていてもらっては困る。


 俺に続くような形で、ケイリィさんたち女性陣も一斉に赤いマスクをつける。


 安全性を示すように、そっとつけると彼女たちの姿も一斉に変わる。


「「「「「「「!!!」」」」」」」


 その光景に再び男性陣は驚く。

 なにせ髪色、顔、体型と一気に姿が変わって、そこには外国人の美女たちが勢ぞろいしたような光景になっている。


 生憎と幻覚の都合上、服装まで細かく設定できないから、全員赤いドレスで統一している。


 しかし、その代わり、彼女たちが異種族という印象を一時的に封じることができる。


 これは大きい、姿を変えただけで、中身は異種族と言うのは理解しているし、さっきまで本来の姿で話していたのだから、姿を変えたとしても自分の姿を偽っているというわけではない。


 あくまでイベント、ここから先話のきっかけとしてどういう風に話しかければいいかという悩みは生まれるが、それは彼らの手元にあるマスクが解決してくれる。


 なにせここから先は、自分の姿ではない自分で話しかけられるのだから、開き直ってしまえば問題はない。


「ちなみにですが、彼女たちの髪の色も判断基準にはなりません。容姿自体は整えてありますが、それ以外の要素は完全にランダムで設定してますので見た目に関してはマスクをつけている間は参考になりません」


 なので容姿を対等に、ここから先は中身で勝負というわけだ。


「そして、これからマスクを外すまでで会話するにあたって1つだけ条件を付けます。それは身分に関する話は禁止とさせていただきます」


 そして俺の提示する条件に再びどよめきが起きる。


「名前に関しましても身分関係ということになりますので、今後はこのマスクが表示している胸元にある番号で呼び合っていただきます」


 説明しながら俺の胸元を指させば白い丸い部分があってその中に『0』と書かれている。

 ちなみに俺と霧江さんに関しては幹事と言うことで、この後はマスクを外す。


 その説明をしている間にも男性陣の変化は様々。


 なぜと、さっきまで家柄を自慢していた男性は疑問を呈するような表情をし、逆に家柄に自信のなかった男性は安堵しているように見えた。


 最初に自己紹介し、良いなと思っていた女性がいたのにも関わらず、ここでリセットするような真似。


 関係を築かせる気があるのかと、懐疑的な視線を向ける男性すらいた。


「さて、ここでなぜこんなイベントを催したのかという理由を説明させていただきます」


 このままいけば、男性はそのマスクを被ることを躊躇うだろう。

 なので、その躊躇いを取る必要が出てくる。


「この会場にいる皆さまに関しまして、異世界の住人と交際するという認識を抜本的に変えるのがこのイベントの目的でございます」


 しかし、それは想定内。

 普通の管轄イベントなら、ゲーム感覚でやって会場を盛り上げてその雰囲気でカップルが成立したりしなかったりとするかもしれないが、異世界交流となると話は別になる。


「まず最初に、自分がこの会社に入社して思ったことですが、日本のいや、地球上で当たり前だと思っている常識は異世界では非常識となることが多いです」


 まず慣習的な概念で齟齬が生じる。

 それは軽く笑って許せることから、ガチで殺しに来るくらいのものまで様々。


「それは皆さまが想像している以上に常識と言う部分でずれが生じています。相手に合わせればいいと言う発想で対処できるレベルではありません。本当に相手の性質を受け入れないとダメなレベルです」


 よく小説とか漫画で、あっさりとエルフや獣人と言った種族と恋人同士になるケースがあるが、実際に経験すると人によっては嫌悪感が出てくるような物もある。


 スエラやメモリア、そしてヒミクにエヴィアと異種族と接している段階で様々なことを経験してきた俺は幸いにして受け入れられるモノばかりであったが。


「一つ、自分の婚約者の話になりますが例をあげましょう。前提条件として、自分はこの行為を受け入れ、それを含めて彼女を愛しているということを先に言っておきます。そしてこれはその種族特有の愛情表現だということも理解してください」


 これから何を言われるのか、それすらわからない。

 緊張が男性陣に走るなか、メモリアに許可を取って話そうと決めていたことを話す。


「限りなく容姿で人に近い種族として、私の婚約者に吸血鬼の女性があります。はい、皆様が想像している通りの吸血鬼です。種族柄、他者の血を吸うことを生活サイクルに入れている種族です。ですが、干からびるほど他者から吸血することはできません。魔法を使えば、血を抜き取ることはできますが、普通に牙を首筋に立てて吸う場合は、彼女たちにも許容量がありますし、必要な吸う量も微量です。頻度も週に一度多い場合でも三度とその程度です」


 この話をしている段階で、顔をしかめているのが何名か、橘とその取り巻きは予想通り。

 他にも何名かそれが嫌だと言う顔をしている。


「しかし、その行為は血を吸うことによって魔力と言う特殊なエネルギーを摂取してきた彼女たちの自然への適応能力が生み出してきた生存本能であり、生理現象です」


 しかし、それと対するようになるほどと納得する男性もいる。

 その顔に嫌悪感はなく、むしろそう言う生き物だと受け入れている節がある。


「そのため、吸血鬼と言う種族は愛情を向けた相手の血を好むという性質があります。私もそう言う行為を求められて応えています」


 普通の人間と付き合っているわけではない。

 人間ではありえないようなことを、なんとなく大丈夫だろうなと思っていては交際してもうまくはいかない。


 事前にはっきりと彼女たちはこういう種族なのだと説明しているが、改めてはっきりと言い放つ。

 普通の一般人なら交際が始まってからそれを知るでもいいかもしれないが、このお見合いに関してはそれはできない。


 互いに組織にとって、それを理解しないで関係を深めることはできない。


「理解してほしいのは、彼女たちにとってその行為は当たり前の行為であり、愛情を向けたらやりたいと思ってしまう本能です。吸血鬼が血を吸い仲間を増やすからという危険な発想はあくまで地球側の常識であり、こちらの世界の吸血鬼は血を吸うことは本能でやる行為で仲間を増やすための行為ではない。実際何度も血を吸われている私がそれを保証します」


 これだけでもかなりの差異があるのだ。

 地球側の常識だけで、それを当たり前かのように考えて、行動をとって互いを傷つけるような真似をしてほしくはない。


「そう言ったことを段階的に理解してもらうために、一旦彼女たちの容姿を隠します。彼女たちがあなた方と話し、分かり合えるのだと言うことを理解してもらうために」


 賭けの部分もあるが避けては通れない。

 若干の不安を抱えつつも、この後の展開を見守るのであった。



 今日の一言

 言わなければならないことはある。




毎度のご感想、誤字の指摘ありがとうございます。

面白いと思って頂ければ、感想、評価、ブックマーク等よろしくお願いいたします。


現在、もう1作品

パンドラ・パンデミック・パニック パンドラの箱は再び開かれたけど秘密基地とかでいろいろやって対抗してます!!

を連載中です!!そちらの方も是非ともよろしくお願いいたします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まぁ、このケースに関しては安易に誤解を抱く方を非難出来ないのよなぁ…(´・ω・`) 何しろ、その手の生活に馴染んだ風習や言い伝えって『過去に起こった事の中から類似性の多かったモノを教訓とし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ