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578 交流の場は盛り上げてこそ

 

 人と異世界の種族が交わったパーティー会場。

 最初の俺の挨拶から早一時間。


 パーティー会場はそれなりの盛り上がりを見せている。


「いやぁ、お美しいですね」

「そんな」


 とある男がハーピーを仲良くしようと話しかけている。


「随分とたくましいお腕ですね」

「いやはや、実家の家訓で体を鍛えているのですよ」

「まぁ、頼もしい」


 羊の獣人の女性が筋肉質な男性の肉体を褒めて、その男は鼻の下を伸ばしている。


 空気は上々、段々と男女で組み合わせができ始めている。

 まだ距離感はあるけど、それは仕方なし。

 順調にいけば本来の目的が達成できるはずと予測を立て。


「順調にいけばだけどな……」


 しかし成功の影には失敗の闇が存在する。


 司会進行役として、幹事として色々なグループに入り込み仲介を行っている。

 そのおかげで男女のグループができたり、男女二人組が所々に出来上がっている。


 けれど、その流れに乗らない人たちもいる。


「やぁ、楽しんでいるか?」


 その一角はまるで壁の花と化すようにひっそりと食事と酒を飲み交す男たち。


「あなたは」

「対面しての自己紹介はまだだったな。田中次郎、一応君たちの上司の甥と言うことになるね。そしてこの会社内ではそれなりの地位にいる」


 その壁の花と化している男グループは目の前にいる三人組以外にもいくつかいて、こうやって話しかけて回っている。


 逆にうちが用意した女性陣の方にも男と比べれば少ないが、壁の花となっているグループもあるがそっちは霧江さんが回っている。


「様子見していると、気になる女性はあっという間にとられてしまうぞ?」


 互いの組織で管理しあった方がいいかもしれないが、話し合って俺は男性陣に女性の紹介。

 霧江さんに男性の紹介を頼んだ。


「いえ、自分たちは」

「あまり、乗り気じゃないかな?」

「そんなことは!!ただ、自分は顔も良くないし霊力もそこまで強くない。家柄だって、本来ここに来れるような人間では」


 そして今回お節介を焼こうとしている面々は実力と家柄に自身のない面々ということか。


「うん、ということはうちの女性陣が気に入らないと言うわけではなさそうで安心したよ」


 綺麗すぎて逆に気後れしていると言うタイプならまだ手はある。


 代表して俺の受け答えをしてくれる男性も、一緒に酒を飲んでいる二人もどちらかと言えば合コンとかでもあまり目立たないような人だ。

 正面切って女性に話かけているのは、やはり多少なりとも自分に自信がある人たちだ。


 しかし、ちらりちらりとうちの女性陣を見ているようで全く興味がないと言う雰囲気ではない。


 それなら問題はない。


 前線で積極的に話しかける彼らに敗北を認めているような表情で苦笑を浮かべる彼らに俺は笑顔で接し。


「ちなみにだが、うちの女性陣で気になる女性はいたかな?」


 少し懐に入った質問を飛ばす。


「え、それは」


 当然素直に質問してすぐに答えが返ってくることはない。

 戸惑う様に仲間内で確認し合いどうしあうかと目線で確認し合う。


「言いづらいならそれで構わないよ。けど、仮にも俺は今回のパーティーの主催者だからな。楽しめていない人がいるのは見過ごせなくてね」


 あくまで親切心、そしてこれを逃したら時間を無駄にすると言う意味をにじませて言えば、顔を見合わせた彼らはうんと頷き合って。


「実はあっちの木の根が体に絡んでいる子が」

「ああ、ドリアードの彼女は中々家庭的な子だよ。料理が趣味だと言っていた。種族柄動物の肉を苦手としているけど、果物とか豆類が好きだよ。もし、そういった伝手があるならそれをきっかけに話しかければいいさ」

「は、はい!ありがとうございます!」


 俺の受け答えしていた男が意を決してそっと視線で気になる子を示すと、俺はそれを馬鹿にせずうんと頷いて、プロフィールに書いていない情報を少しだけ公開し頑張れと背中を叩くと、彼は意を決してテーブルから豆類の料理を取り皿に取る緑髪の女性に話しかけに行く。


 彼の雰囲気と立ち振る舞い、そしてわずかだけど言葉を交わして彼が悪人でないのはわかる。

 故にちょっと背中を押したのだ。


「さて?君たちはいないのかな?」


 遠目で、話しかけすぐに分かれることはなく順調に会話を弾ませる二人を見て残りの二人も覚悟を決めて自分の気になる女性を俺に伝えてきて、俺はそっと少しだけ彼女たちから許可された情報を教える。


 それによって一つの壁際グループを解消できたが、まだまだ壁際で談話しているグループはいる。


 何とか解消せねばなと次の目標にめがけて歩き出す。


 道中は朗らかに話し合うのを脇目に通り過ぎるが。


 まだ探り合ってるって感じか。

 笑顔で話しているけど、楽しむと言うよりは知り合うと言う雰囲気がちらほらと見える。


 初対面で、この短時間で互いを知り切ることなんてできないのだから後半で良い雰囲気でもつくってくれればと今は触れずに軽く挨拶をして通り過ぎる。


 その後は時間をかけて、先ほどと同じようにいくつかのグループを壁際族から脱出させて、残るグループは一つ。


「残るは彼らか」


 そしてそのグループが一番の難題だと言うわけだ。

 霧江さんも今回の婚活パーティーが今後の組織同士の繋がりとして重要な催しだと言うのはわかっている。


 今回のパーティーでもし恋仲ができれば、その伝手を使い異世界と交流の機会が手に入れることができる。


 俺の管轄内での話になるが、それでもかなり重要なポジションになる。


 期待されず、出来たら儲けもの程度で送り出された彼らは元気を出せば問題はないけど、彼らの場合。

 少し、事情が違う。


 彼らの家は、日本政府と縁が深い。

 協会の中でも、派閥的に少し特殊な家柄だ。


 故にエリート意識が高く、さらに発言力も強い。


『本来であれば、今回の件には入れたくはなかったのですが、無視するわけにもいかないのです』


 事前に情報はもらっているためにこちらとしても警戒対象に入っているグループだ。


 そのグループのリーダー格。


 橘雄三という男は、ゆっくりと酒を飲みじっくりと観察しているような鋭い視線を向けている。


 そしてゆっくりとその口が言葉を吐きだす。


『化け物が』


 と。

 ピタリと思わず近寄ろうとした足が止まる。

 俺の読み違いかと一瞬思ったが、観察から一転、侮蔑を含んだ色合いの瞳に変わった段階でさっきの読唇は間違っていなかったのだ。


 しかもその視線は女性と仲よくしようとしている同僚に対しても同じ視線を向けている。


『彼らは退魔の一族です。その信念事態に間違いはありませんが、人以外を蔑視する傾向があるのもまた事実』


 今回のパーティーで警戒対象になっている四人組は、昔から魔を払うことを生業にしている家の一族だ。

 若く、実力もあり、真面目だと評判なのだが。


 真面目過ぎる。

 故に、少しでも人でない存在が前にいると、嫌悪感を出してしまう。


 そんな奴らを参加させるなと、遠回しに霧江さんには伝えているが彼らの家は俺たちと交流を持ちたいと言う意思がある。


 すなわち利益優先というわけだ。


 しかし、参加する当人はまったくもって不本意。

 だけど家の指示を無視するわけにはいかないからこそ渋々と言う感じで、参加し表向き問題を起こさず、邪魔もしていない。


 無視すればいいかと、一瞬だけ考えがよぎるけど。


 立場上、ここで彼らだけ何もしないと言うわけにはいかない。


「なにかあったかな?ずっと壁際にいるようだけど」

「別になにもありませんよ」


 敵意を隠しているが、不満を隠しきれていない。


「そうかな?」


 そのことで目くじら立てていては前職では仕事をやっていられない。

 努めて冷静に表情を曇らせず、少しとぼけてみる。


「そうです。少し様子を見ているだけなのでお構いなく」


 しかし、距離を詰めるなと言わんばかりに関係を断つ彼を前にしたらどうしようもない。

 これ以上絡むとしつこいと怒られかねない。


「わかった。何かあればいつでも話しかけてくれてかまわないよ」


 気配は覚えた、何か起きたら高速で動いてどうにかすればいいか。

 実力的に何とでもできると判断して、その場を離れる。


「彼らに何か問題が?」


 そして離れている最中にそっと気配を鎮めた状態で霧江さんが合流してきた。

 彼女も彼らを気にかけているのだから、俺が接触した段階で何かあったのかと思って近寄ってきていたのはわかっていた。


「いや、まぁ、何もしていないのが気になりまして一応声をかけておこうかと思っただけですよ」

「彼らには私の方でも気を配っておきますので、あなたは他の方のサポートしてください」

「ではお言葉に甘えて」


 面倒ごとを任せきるつもりはないが、霧江さんが対処してくれるならと俺は別のグループの様子を見つつ会場を巡る。


「本当にケイリィさんは話が面白いですね。とても楽しいです」

「いいえ、陣内さんの話が面白いから私もこうやって楽しくお話させていただいているんですよ」


 のだが、俺は一瞬誰だと通り過ぎようとしたのをやめて振り向いてしまった。


 深窓の令嬢のように朗らかに笑うケイリィさん。


 一瞬誰だ?と思ってしまった。

 しかし、咄嗟に高速で動き他の人に見えないように動く。


 醜態をさらすことと、ケイリィさんに驚いたことを気づかれることを避けられた俺は、そっと人と人の間からケイリィさんを見れるポジションに着く。


「ケイリィさん完全に猫を被ってる」


 普段はもっと勝気で、活発的な印象は一気に鳴りを潜めて。


「うまくやってるな」


 数人の男に囲まれて楽し気に話しているケイリィさんの姿。


「ケイリィさんらしい」


 その男たちはさっきまで他の参加者と話をしていたのだが、少ししつこいと言った感じで女性側は困っていた。


 その女性以外にも困っている女性を助けるように動いていたら、何人も囲まれている状況になった。


 そこからうまく元の女性に声をかけないようにしていたら、ちょっと囲っている男性たちが本気になり始めている。


「……大丈夫か」


 少し心配しかけたけど、いざという時のことを考えれば武力で制圧できるので心配するだけ無駄か。


 と思い、場を離れようとした思った瞬間ケイリィさんと目が合う。


『タ・ス・ケ・ナ・サ・イ』


 目は時に口よりも語るとはこのことか。

 仲間を助けることは許容するけど、俺が逃げることは許容しないと。


 なるほどわかります。

 問題はどうやって男性を操作するかという話だけど。


 周囲を見回しても、他のグループも色々うまくいっている様子。


 そこの調和を崩さず、対処せねばならないと言うことか。


 無理難題を仰せつかってしまった。


 しかし、これをやらねばならないのだ。

 方法は……あるにはあるか。


 時計を見て、そろそろイベントの時間でもある。


 となればそれを利用すればいいか。


「婚活パーティーの催しとしてどうかとは思うが、教官のアドバイスだしやってみるか」


 互いを知るには腹を割って話すべきだと言う教官の言葉。

 それに従って作った一つ目のイベント。


 壇上を目指して歩きながら、マイクをスタッフから受け取り。


 そして壇上の中央に立つ。


「ご歓談中の皆さま、異世界との交流を楽しんでいただけている様子で、ここで一つイベントを行います」


 スケジュールにはあらかじめ入れてあるから、戸惑うことはないがそれでも楽しみにしていると言う様子はあった。


「これよりスタッフに一つの魔道具を配ります。その魔道具の効果はただ一つ、とある幻覚を纏うだけの魔道具です」


 少し派手目の様々なマスクを配るスタッフ。


「これより一時間、マスカレードパーティータイムに入ります」



 今日の一言

 イベントは退屈こそが敵である。


毎度のご感想、誤字の指摘ありがとうございます。

面白いと思って頂ければ、感想、評価、ブックマーク等よろしくお願いいたします。


現在、もう1作品

パンドラ・パンデミック・パニック パンドラの箱は再び開かれたけど秘密基地とかでいろいろやって対抗してます!!

を連載中です!!そちらの方も是非ともよろしくお願いいたします!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 日本側、若者が異世界の人種を受け入れられないなら重鎮が運営側で関わっても良かったかも分からんね…(´・ω・`) まぁ、次の話で無事に打ち解けそうだけどもw
[一言] 彼女達をバケモノ扱いする様なやつを無理矢理押し込んでくるなや汗
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