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40 煽りをくらうのはやった本人ではなく別のやつ・・・・こっちくんな!?

メルトリリスだと!?

こりゃガチャるしかないと決意しながらの投稿です!

 田中次郎 二十八歳 独身

彼女 スエラ・ヘンデルバーグ 

   メモリア・トリス

職業 ダンジョンテスター(正社員)

魔力適性八(将軍クラス)

役職 戦士


 ゴタゴタしてというより、人間関係の清算が終わったあとというのは心の余裕ができる。

 

 「はずなんだがな」


 火澄透の恋愛感情というより所有欲に巻き込まれた形で一時慌ただしかった時期もあったが、それも昨日の話、さすがに第三者の仲介があればあのお嬢様風のノスタルフェルさんも素直に動くようで、北宮の俺たちのパーティーへの異動はスムーズに終わり、今では正式なメンバーになった。

 そして俺たちは、いや、正確に言えば俺はそのままいつも通り、安全第一でダンジョンを攻略しているのが通常業務だった……はずなのだ。

 冒頭でこぼした言葉通り、昨日のごたごたという仕事を終わらせ、今日の休みの日はスエラが見たいと言っていた日本やハリウッドの映画を一緒に部屋で鑑賞するという甘いひと時を過ごしているはずだったのだ。


 「……どういうつもりだ?」


 なのに、その隣にいるべき彼女は急な仕事で休日出勤だと先程連絡があり、代わりに俺の前には昨日も顔を合わせた女がいる。

 不機嫌、その一言で俺の感情は表すことができる。

 声にもそれは現れているのが自覚できる。


 「職務を果たしてもらいますわ」


 対する目の前のお嬢様もどきの竜人、もうさん付で呼ばん、は優雅と言わんばかりに余裕を持って笑顔まで浮かべている。

 そのままゆっくりとノスタルフェルがスエラに劣るも一般的な女性よりも豊満な胸を強調するような腕の組み方で目の前のソファーに座り紅茶を手にする。

 その向かいに座る俺の前にある灰皿には少なくないタバコの吸殻が残っている。

 ここは普段俺がいる自室でもなく、海堂たちと話すパーティールームでもない。

 会社の面談室だ。

 そこに俺は、休日なのにもかかわらず、休日!!にもかかわらずそこにいた。


 「なんでわざわざ俺が休みの時に来るんだよ。おい」


 俺が不機嫌な理由はいたってシンプル。社会人の大嫌いな出来事トップスリーに入るであろう休日出勤サービスをさせられているからだ。

 もともと決まった出勤時間がないこの業界、学生の南や勝そして北宮の予定を合わせ基本海堂とコンビを組み、時々ソロで活動してきたが、こうやって休みと決めた日に呼び出されるというのはなかった。

 幸いスエラも午前で上がると聞いていたので、午前中にレンタルショップでも行って映画でも借りてこようと考えていた矢先の出来事だ。

 先日問題を起こし解決した間柄で、しばらく見たくないと思っていた相手が来たのだ。

 嫌な予感はテスターとしてではなく社会人としてビンビンに鳴り響いていた。


 「失礼しましたわ。私たちは今日『も』出勤なのであなたも働いているものだと思っていましたわ。それに彼らは今日もダンジョンに挑んでいるようですし」

 「スケジュールの調整はしっかりとできているはずなんだがな。こっちはこっちのペースで、仕事の遅延はないはずだが?」


 暗に働かせるなとジャブを飛ばしながら牽制は忘れない。

 このまま向こうのペースに合わせると間違いなく働くことが確定する。

 こちとら労働基準法で育ってきたサラリーマンだ。

 休日に関しては妥協しない。

 それに開口一番に働けと言っているやつの次に出る言葉なんて、明日の天気を予想するよりも簡単だろうよ。


 「今の発言、協調性がないと受け取れますわよ?」


 ほら来た。

 ブラック企業のデスマーチへのお誘い。

 周りが頑張っているから、お前ももっと頑張れとのお達しだ。

 ノルマを達成し続けると、それ以上の成果をお上の方々はお求めになるんだよなぁ。


 「それは失礼、それで? 本題に入っていいか?」


 嫌な言葉はさらっと流すに限る。

 さっきの職務という言葉で大体の予想は立つが、それでも聞かないまま勘違いという過ちを犯すつもりはない。


 「構いませんわ、田中主任」


 主任、ね。

 さっきまで、いや過去においても役職を付けて呼ばれることはなかった。

 つまりは、それに関係するということだろう。

 黙ってタバコを吸い上げて、一気に短くする。

 言われたことに対して思い当たる節はある。

 先日の人事、俺の役職についてだ。

 その草案を作成している最中だ、思いつかないわけじゃない。


 「……大方、あいつらのパーティーの補助に入れってところだろう?」

 「あら、素直に話を進めるのですね。てっきりもう少しごまかすと思っていたのですが」

 「仕事で一番無駄なことは仕事の擦り付け合いだ。俺はそう思っている」

 「立派な心がけですわ」


 よく言う、机の上に置いてあるA4の用紙がきれいに入りそうな茶封筒が見えないとでも思っているのだろうか?

 それを堂々と俺の見える位置においたということは、その紙には俺を動かす何かがあるということだろう。


 「では、正式な命令書はここにおいておきますわ。午後には彼らも一旦攻略を切り上げて合流するように伝えてありますので、詳細な打ち合わせは午後からお願いします」

 「残業代出ないこと知ってて言いやがるな」

 「役職というのは責任が付きものですわ。では、くれぐれもお願いしますわ」


 定休というものがないテスターにとって休みというのは各自の判断で行うもの。残業代という概念をしっかり排除したこの職業で、休日に仕事に入るというのは歩合の収入のみしかないゼロか一かということになるので、休日出勤断固反対を信念に置かないといけない。

 だが、それはできないようだがな。

 すっと、手を振る動作をしただけでさっきまで飲んでいた紅茶の食器は消え去り、用事は済んだというようにさっさと部屋から出ていってしまう。


 「くそったれ、事前通達は社会の常識だぞ」


 異世界の住人に言っていても常識の違いで伝わらないかもしれないが、それでも言わなければやってられない。

 これからやることといえば、自分のパーティーへの伝達、行動方針を修正、スエラへのデートのキャンセルという俺の機嫌を地面に叩きつけるような勢いで落とす事柄のオンパレードで、既に聞こえはしないだろうが悪態をぶつけるように吐き捨てる。

 せめての救いはという言葉も出ないほどに時間の余裕はない。

 少しシワになるように力強く取り出した命令書には日本語でその内容が書かれていた。

〝火澄透のパーティーへの支援出向を命令する〟

 その見出だしだけでも気分がげんなりとするのだが、この話をないものとしようと一縷の望みをかけて穴がないか探すが、監督官のサインを最後に見た段階でそれは無理だと思い知らされる。


 「あ~、クソ」


 やるしかない。

 その状況に追い込まれた俺は、手早く携帯を操作して海堂を呼び出す。

 手短に連絡事項を伝え指揮系統を引き継ぐ。なにやらうだうだと言いそうにしていたが「あ゛?」と不機嫌全開に聞き返してやれば「残業徹夜明けの先輩が再臨っす!?」とわけのわからないことを言いつつも引継ぎを受け取ったのでよしとしよう。

 しばらくはというより今週と来週は、レベリングしながら慣れた階層の粗探しを指示しておけば時間は稼げる。

 こっちの仕事がいつ終わるかわからない、目処のつかない内容だから、落ち着いた時に再度指示を飛ばせるように今はするしかない。

 問題のスエラへは


 「そうですか……」

 「ああ、すまん」

 「エヴィア様の指示では仕方ありませんね。しかし『あの人』に関しては少々語り合う必要があるようですね。第八演習場が確か空いていたはずですし」

 

 事情を説明すれば彼女は納得してくれた。

 時間がないのは重々承知しているが、それでも携帯で断るのは違う気がして俺は直接足を運ぶことを選んだ。

 書類を片付けていた彼女の仕事の手を止めて、なおかつ 俺としてはたとえ仕事だとしてもこうやって予定を急に変えるのは申し訳ないと思って謝罪する。

 そんな俺を、気にしないでくださいと言ってくれるスエラはよくできた彼女だ。

 絶対に埋め合わせしようと心に誓い、何やら仰々しい杖を召喚したスエラの笑顔は見ないようにしておく。

 矛先がどこに向いているかなど想像するまでもない。

こればっかりは、あいつの自業自得だ。


 「それにしても、大変そうだな」

 「ええ。こればっかりは仕方ありませんからね」

 「第二期生のテスターか、順調に集まっているのか?」

 「はい、すでに何名かは面接を済ませ来月には入寮する人もいますね」

 「頼むからまた後衛に偏るようなことは勘弁してほしいな。今稼働しているテスターパーティーの中で純粋な前衛が俺だけっていうのはかなりやばいからな」

 「はい、それを考慮して今度は希望性の他に適性を測れるようにしてありますから、前回のようなことにはなりませんよ」

 「そうか、俺みたいのが増えるならいいな。でも、キオ教官の犠牲者が増えるな」

 「なら、ポーションの在庫を増やしておかないといけませんね」

 「いっそのこと回復職と合同にするのはどうだ? 経験も積めるぞ?」

 「いいかもしれませんね」

 

 少し休憩がてら話に付き合ってもらい、振るのは仕事の話ばかりであるがそれでも一緒にいられるというのがさっきまで憂鬱だった俺の気持ちを軽くしてくれる。


 「しかし、ハリウッドのアクションがどれだけスエラたちに評価されるか気になっていたんだがな」

 「ええ、私も気になっていたんですけどね。そこから新しい魔法の発想を得られるかなと」

 「エイリアンとか倒せそうだからなそっちの住人は」

 「次郎さんの話から想像すると、こちらにも似たような存在はいますからね。対処はできるかもしれませんね」


 いるのかエイリアン。

 思わず頭の中で、魔王VS巨大UFOなんて映画が出来上がりそうなテロップが思い浮かぶ。

主役が勇者ではなく魔王なのは俺もこの会社に染まってきている証拠だろう。

試しに想像したが、全力を出せば核兵器並みの火力を出せる実力を持っている我社の社長ならできないとはいえないよなぁ。

 仮に実現すれば、スタントなしCGなしの実力者揃いのメンバーによる実写ならさぞ見ごたえのある絵が取れるだろうよ。

 個人的には、小さくてもいいから宇宙船を刀で真っ二つにするキオ教官が見てみたい。

 この場合危険なのは、出演者よりも撮影スタッフのような気がするがそれは置いておこう。


 「社長はもちろんだが、キオ教官なら殴り飛ばしそうだよな」

 「ええ、ほかの…そうですね、エヴィア様でしたら数百体規模でも対処しそうですよ」

 「ああ、そうなりそうだな。無詠唱の魔法で淡々と処理していきそうなイメージだ」

 「そうですね。私でも、一体や二体でしたら対処できそうですね」

 「俺でもできるか?」

 「そうですね。今の装備でしたら一体くらいなら安全に対処できますよ」

 「複数なら逃げたほうがよさそうだな」


 こっちのフィクションを向こうの現実に合わせるとなかなか面白いと思いながら話していたが、仕事中にイチャイチャするなというようなケイリィさんの視線がそろそろ厳しいものになり始めている。

 ここに寄ったのは今日の予定をキャンセルするためのものだ。

 これ以上は恨みを買うことになる。


 「そろそろ、行くな」

 「はい、慣れないことでしょうが、気をつけて」

 「ああ」


 部屋の前ならともかくここは職場、さすがにこれ以上はなしだ。

 スエラの笑顔に見送られることでやる気を少し上げて、俺はその場をあとにする。

 仕事用の装備は整っているのでその足でゲートに向かう。

 テスターの少ない分、ここはガランとしている。

 本来であればもう少し賑わいを見せているのであろうが、その様子もない。

 火澄たちとここで待ち合わせをしていたのだが、

 この場にいないというのはまだダンジョンの中ということだ。

 なんで、こんな面倒な待ち合わせをしないといけないのかと思うが、仕事は元来面倒だ。

 割り切ることにする。

 タバコを一箱吸い切る頃に奴らは姿を現した。


 「随分ボロボロにされたようだな」

 「あなたのせいでしょう」

 「違うな、お前の不始末だよ」


 姿を捉えたからといって、残っているタバコを消すような真似はしない。

 喫煙者のマナーとして煙を吐き出す方向には気をつけるが、それだけだ。

 また、鬼王のダンジョンに挑んでいたのだろう。

 ダンジョンの特徴である土埃や泥が装備のあちらこちらに見受けられる。

 その姿に加えて、疲労困憊とはこのことだろう。


 「ノスタルフェルからの指示で、お前らのパーティーの支援に来た」

 「……」

 「返事くらいしとけ。それとガキだと思われたくないのなら顔を取り繕え」


 睨めつける火澄の迫力のない顔などどこ吹く風で淡々と用件を切り出す。

 その返答もないことに呆れるように忠告してやれば、さらにその表情は険しくなる。


 「嫌ならそう言え。お前の担当者の顔に泥を塗り、命令書を出した監督官に唾を吐きかける度胸があるならこの話を断ればいい。俺は最低限の義務は果たしている。俺はやる気だがリーダーのお前にやる気がないなら話は進まないからな」

 「……僕の指揮下にあなたが入るということですよね?」

 「アホ、誰がそう言った。互いの能力も把握できていないのにそんなことを決められるか。あくまで俺は助っ人だがお前の指揮下に入るかどうかはこれから決めるんだよ」


 疲れているのか、それともストレスか、おそらく両方だろうが、それに加えて最近うまくいってない焦りも加わってコイツの頭は全然回っていない。

 

 「……はぁ、とりあえず体力に余裕はあるか?」

 「ある」

 「OK、なら互いに実力の確認といこうじゃないか」

 

 火澄の後ろにいる女性、七瀬美樹には期待しない。

 気が弱いのか演技なのかわからないが、一触即発の雰囲気に不安そうに俺と火澄を見るだけだ。


 「何をするつもりだ?」

 「訓練施設に行くんだ。なに、簡単な勝負だよ」


 ついてこいと、吸い終わりそうなタバコを携帯灰皿ですり消しながら声をかけ歩き出す。

 一回立ち止まって、ついて行くかどうか迷っている二人を顎で促す。

 訓練施設はゲートから歩いて五分もかからない位置にある。


 「ここは?」

 「使ったことがないのか? ならもう少し施設に目を通しておけよ優等生」


 訓練室の上、制御室にいる俺は、カタカタと咥えタバコを揺らしながらキーボードに指を走らせる。

 朝に通達されて、急いで申請しても通らないと思ったが、テスターの少なさから使用する人員が少ないためにすんなりと申請が通った施設を準備するために手早く指を動かす。

 こいつらは初見であるが、俺にとっては何度も使った施設だ。

 操作の仕方も把握している。

 

 「設定終了、とりあえずやってみせるからお前らは休憩がてら見てろ」

 「何をはじめるんですか?」

 「ダンジョンの仮想戦闘だよ。ここでは設定した環境でソウルと戦うことができるんだ。俺は一人、お前らは二人でそれに挑む。内容は変えないからお前らはここで見てろ。それでどっちが指揮を執るか能力を比べる。単純だろ?」

 「そんなことをしないで話し合えばいいのでは?」

 「どっちにしろ実力を確認する必要があるんだよ七瀬、百聞は一見にしかずってことわざがあるがその通りなんだ。聞くより見る。それならこうやって本番さながらの訓練はうってつけなんだよ」


 火をつけていないタバコに最近覚えた火の魔法で火をつけてやる。

 これのおかげでライターいらずになって本当に助かる。

 タバコの先に移った視線を元に戻せば、不満というより不安そうにしている七瀬の表情が見える。

説明は社会人の義務、だから彼女の言葉に答えながら俺は装備の確認をする。


 「これは俺の経験だが、紙の上の数値なんて現場では紙くずより上の価値なんてつかないんだよ。お前らも俺がここまでできるから俺が指揮を執るって言っても納得できないだろう?」

 

 頷きはしないが納得はしたようだ。


 「俺もお前たちの戦いを細かく見たわけじゃない。今の実力がどれくらいあるか確かめる必要があるんだよ」


 たとえステータスを見せられたとしても、俺はあいつらの実力を確信することはできないだろう。

 これは向こうだけでもなく俺にも必要なことだ。


 「そこにポーションが置いてある。見ている間に飲んでおけ」


 制御室から訓練室に繋がる階段の扉へ向かう。

 返事はないのは予想通り。黙って見送られながら外に出てそのまま階段を飛び降りる。

 もうカウントダウンは始まっている。

 それに間に合わせるための動作であったが、この程度の高さならどうってことはない。

 軽く着地の音を立てれば、ほぼ中央に位置する場所に立つことができた。


 「さてと、軽く流すとするか」

 『set up』

 

 機械音声が流れると同時に風景がぐにゃりと変化を見せる。

 フィールドは上から見えやすいように岩場と荒野が入り混じったもの。そこから覗かせるのはゴブリン、オーク、ミノタウロスと鬼王のダンジョンに現れる顔ぶれだ。

 その装備は遠近両方に対応できるように分けてある。

 弓に斧、剣に盾。

 総勢百体ほど用意した。

 距離は目測二百メートルといったところか。

 

 「目標は」


 ゆっくりと背中に収めた鉱樹を引き抜き、タバコの火を握りつぶす。


 「10分ってことにしておくか」


 『start!』


 機械の音声と同時に目の前の軍勢は動き出す。

 ダンジョンとは違ってお行儀がよく奇襲もない軍隊としての動きに、ニタリと俺の表情筋は三日月を創りだす。


 「キィエイヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


 まずは気合でその軍勢の足並みを崩す。

 揃っていた足並みは猿叫によって怯えるものとそうでないもので分けられ崩れる。


 「喰らいつく!!」

 

 その隙間に俺は斬りかかる。

 地面すれすれになるほど低く駆け、二百メートルの距離など数秒で縮める。

そしてゴブリンとオークの体重の差など気にしないように思いっきり横薙ぎでまとめて切り飛ばす。

 遠距離の敵がいるなら俺はただひたすら食らいつくしかない。

 剣だろうが弓だろうが斧だろうが魔法だろうが、そばに近寄り切り捨てる。

 俺にはそれしかできないが、その分自分の役割というのを十全に把握する必要がある。

 ザリと砂利を踏みしめる足の裏の感触を確かめながら、味方ごと俺に魔法を放とうとするシャーマンの軍勢に体の方向を変えたために周囲にいた敵はまるごと吹き飛ばされる。

 僅かな空白、空間、蹴り出すための土地と構えなおす時間さえできれば、鉱樹を突き出す要領で魔力を纏い巨大な弾丸のように突き進むことができる。

通りすぎるだけで甚大な被害が広がる。

だが、十全に能力を活かすということは結果につながるということ。手は緩めない。

優先的に後衛ばかり狙い、俺への不意打ちの機会を減らし続ける。

それを邪魔するように巨漢が俺に挑んでくる。


「ミノタウロス、か。俺も力が強くなったものだよなぁ!!」


だが、その巨漢の力でさえ一瞬の停滞を生み出すことしかなかった。

振り下ろされた斧を刀のようになった鉱樹で受け止め軋ませず弾き返し、切り返し上下で泣き別れさせる。

このミノタウロスは一体しか入れていない、後衛もまとめて斬り殺していたのでもうほとんど残っていないはずだ。

恐怖という感情が備わっているソウルであるが逃げるという選択肢は選ばない。

ならばあとはただの作業だ。


『finish』


「11分か、1分オーバーしたわ」


ウォーミングアップにしかならない。

作業後の一本を吸う。

手を抜いていない状態でこれなら満足できる。


「さてさて、次のお手並みを拝見するとするか」


傷という傷も受けていない俺は、再びぐにゃりと景色が歪み元の無機質な訓練室に戻った床を歩き制御室に向かった。

次に見るであろう、火澄の実力を測るために。


田中次郎 二十八歳 独身 

彼女 スエラ・ヘンデルバーグ(ダークエルフ) 

   メモリア・トリス(吸血鬼)

職業 ダンジョンテスター(正社員)

魔力適性八(将軍クラス)

役職 戦士



ステータス

力   2802 → 3012

耐久  3050 → 3331

俊敏  1999 → 2102

持久力 2641(-5) → 2924(-5)

器用  1336 → 1600

知識  89→ 90

直感  422 → 485

運   5  → 5

魔力  1022 →1233


状態

ニコチン中毒

肺汚染(小)


スキル

猿叫

斬撃(NEW)


今日の一言

あ゛?

おっとやべぇ、昔に戻りかけた。


今回は以上となります。

最近、いろいろと見てくださっている方も増えはじめているので嬉しい限りです。

これからも異世界からの企業進出!?転職からの成り上がり録をよろしくおねがいします!!

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― 新着の感想 ―
仕事に必要な装備=自費(貯金切り崩し) 休み=取れてない 給料=月額総支給30万(手取り23万くらい?) 装備についてはレベルに応じて会社支給 肉体労働なので、時間外労働は絶対不可 適性が必要な特殊…
[気になる点] いや、主人公愚痴るならはっきり相手に何を思うのか伝えなよ。モヤつくよ。
[良い点] 話が逸脱せず、世界観が分かりやすく、読みやすいと思います。 [気になる点] 会社組織や労働組合の描写が、余りに一般的な企業とかけ離れていて、社会を知らない人に誤解を与えないか不安です。 […
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