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257 成果を見せあおう

「後退!! 後退でござる!! 打ち合わせの三番ポイントまで後退して立て直すでござる!! 北宮!!」

「わかったわよ!! 全力で行くから、魔力の温存なんてできないわよ!?」

「それでいいでござる!!」


 作戦が失敗したからと言っても、あいつらはあきらめない。

 瞬時に態勢を立て直すために、動かせない右手を庇いながらも指揮を執り直す南に北宮が阿吽の呼吸で対応する。

 普段は口喧嘩が絶えない二人だが、こういったときはぶつかり合っているからこそ呼吸が合うことが多い。

 即座に水がうねり俺の動きを封じようと動きを見せ、北宮はゴーレムではなく空中に即座には数えることのできないような数の氷の槍を作り出し弾幕の準備をする。


「アミーちゃんは勝と海堂先輩を頼むでござる!」

「OK!」


 倒すことよりもこの場から離脱することを優先する動き。

 現状を把握し最善を模索する南の動き。

 アメリアにポーションを持たせ、二人で逃げるのではなく全員で逃げられるように考えている。

 まだ、冷静に考えられている証拠だ。


「いいね、いいね、いいぞ! 南!!」


 グンと魔力の循環をトップギアに入れ、再度突撃の姿勢を取る。

 切り札を破られてもなお動きに戸惑いのない相手に気分が高揚する。


 あの雷を受ける際。

 咄嗟に鉱樹の根が張っていない手を天に向けて突き出した。

 その行動は咄嗟の防御というわけではない。

 しっかりと意味があった。


『いいか次郎、装衣魔法の真骨頂は魔法を纏えることだが、神髄は別にある』

『神髄?』


 研修中、装衣魔法を教わる際、監督官に教わった装衣魔法の使い方。


『この技術は魔法を身に纏うことに特化している。そしてこの魔法は』


 近接主体の俺にとって遠距離からの攻撃に対抗できる手段はあった方がいい。

 そのためにこの魔法があった方が便利だと監督官とフシオ教官は装衣魔法を選び俺に教えてくれた。

 その理由は、今の俺に必要だからということもあるが。


『自身の魔法だろうが味方の魔法だろうが、それこそ敵の魔法だろうが、纏える魔法を選ばない。魔力で構成された代物なら難易度の差はあるが基本的に纏えないものはない』


 コツはいるし例外もあるがなとニヤリと笑いながら、その応用力を言い聞かせる監督官の表情はとても楽しそうだった。

 それを聞いた俺は、なんだその魔法使い殺しのような魔法はと思った。

 装衣魔法が纏える魔法の対象が、自分の魔法だけではなく他者の魔法も纏えるということは突撃をしているときに放たれた魔法を防御ではなく防具に変換しそのまま突き進むことができる。

 さらに言えば、相手に魔力を消費させこちらは攻撃の手段も手に入れることができる。

 間合いを詰めるときなど様々な場面で役に立ちそうな、近接戦闘者向きの技術だったということもあった。


『相手の魔力を掌握し、自分の魔法に塗り替える。簡単にはできず、魔力総量も多くなければ話にならん技術だが、貴様なら使えるだろう』


 そういって、この技術を授けてくれた二人の魔法を俺は身に纏うことはできなかった。

 だが、今実感する。

 この技は確かに、磨けば磨くほどヤバい技術に昇華できる。

 その証として、本来であれば防御の難しい、そして当たればただでは済まない攻城魔法を無傷どころか自身の防具としてこの身に纏い海堂たちに襲い掛かっているのだから。



 北宮の氷の槍の雨をその迸る雷を放電することで吹き飛ばし、最短距離を突き進む。

 こういった集団を潰す際は前衛よりも後衛を潰せるとき潰すのがセオリーだ。

 その中でも厄介な頭脳の役割を担う南にターゲットを固定する。

 俺と南で視線が交じり、俺は口元をニヤリと好戦的な表情を見せたのにもかかわらず、南はうへと嫌そうな顔をする。

 つれないなと笑いそうになるも、恐怖を見せずそんな表情のできる南に感心する。

 加速し、北宮の弾幕をものともせず、南の操作する水を振り切りそのまま襲い掛かろうとするも。


「させないっすよぉ!!」


 横合いから海堂が襲い掛かってきた。


「海堂か!」

「漢、海堂!! ここが正念場っすよ!!」

「それでこそ前衛だ!! かかってこいやぁ!!」


 俺自身が興奮しているのがわかる。

 こいつらの成長。

 それを見て、喜んでいる自分がいる。

 だからこそ、俺も全力を投じる。

 一回、二回、三回と全力で俺を倒そうとする海堂の攻撃に俺の突進は止められる。


「そのまま抑え込んで!!」


 北宮の氷魔法による援護と。


筋力増強マッスルボディ! 耐魔法アンチマジックベールでござるよ!!」


 南の支援魔法が海堂を支えた。

 何度も掠り、その身から血を流す海堂であったが、致命傷の攻撃をことごとく防ぐ。

 二刀流と魔法による三つの多角的攻撃により、威力をギリギリ俺に通用する程度に抑え手数を優先している。


遠距離治癒魔法ロングヒール!」


 そこにさらに援護が入る。

 傷ついた海堂の体が癒える。

 仄かに光る薄緑色の発光。


「ありがとうっす!!」


 ちらりと見れば自分の治療よりも前線の維持を優先した勝が、アメリアに肩を借りながら手を海堂の方に伸ばしていた。

 その期待に応えるべくと、海堂の剣の強さに重みが増した。


「ハハハハハ!」


 キオ教官が戦いを楽しむ理由がわかる。

 成長を目の当たりにするのが、こんなにも楽しいとは。

 ジリジリと撤退の隙を探る海堂たちとここで仕留めたい俺。

 そんな対戦。

 終わりはいつになるのか、なんて余計なことを考えない。

 そんな相手で遊ぶような思考は海堂たちに失礼だ。

 ならどうするのか?

 簡単だ。


「鉱樹! 魔力を循環させろぉ!!」

「げ!?」


 全力でぶつかるまでだ。

 海堂がヤバいと表情を歪める。

 そんなこと気にせず、ドクンと一回脈動し俺の意思に答えた鉱樹は俺と鉱樹の魔力循環を速める。

 純度は増し、その魔力に呼応して装衣魔法で纏っている蒼雷はさらに迸り、海堂を襲う。

 雷というのは厄介だ。

 その迸りで相手を痛めつけ、その光で相手の視界を奪う。

 海堂はよく戦っている。

 だからこそ、この技を使わせたことは称賛に値する。


「北宮! 撤退中止!! 全力防御!! あれはやばいでござる!!」

「アミーこっち来て手伝って!!」

「OK!!」


 そのヤバい雰囲気を前衛の海堂だけではなく南も感じたようだ。


「海堂先輩はどうする!?」

「なんとかするでござるよ! ああ、もう!! 拙者こんなに働くキャラじゃないでござるよ!!」


 北宮とアメリアが撤退を止めて全力で防御魔法を展開する。

 南もその補強に手を貸しているが、それはあくまで片手間。

 勝の叫びに呼応し、自分のキャラを否定しながらやればできる子という言葉をその身で証明するかのように複数の魔法を同時で操る。


「チャンスは一度きり、海堂先輩、しっかり乗るでござるよ!!」


 そんな相手の思惑を打ち破らんと俺の準備も着々と進む。

 この技はいま俺が持てる技の中で最高の火力。

 フシオ教官や監督官ですら、直撃を避けるほどの一刀。

 周囲の水が再び俺の周りに集い、渦を作り出す。

 その中心で海堂と打ち合いながら、俺も俺で次の技の準備を進める。

 監督官と戦っていると大技を出すには下準備が必要だった。

 切り結び、相手の隙を作り、予備動作の大きい技を放つための時間と瞬時に放つための時間を作り出す。

 その経験を活かし、海堂と切り結びながら鉱樹との魔力循環に装衣魔法の魔法を混ぜ込む。

 やり方は先日、監督官に放った猿叫との合わせ技で放ったドラゴンブレスモドキと一緒だ。

 違いはその威力と範囲。

 こっちの攻撃は、段違いの威力を誇ると俺は自負している。


「しっかり受けろよ!!」


 カチリと何かがはまり込むという感覚があると聞く。

 スローモーションになる視界の中で、俺はそのはまり込むような感覚を味わいつつ俺の放った斬撃の勢いを利用して後方に吹き飛ぶ海堂を見送る。

 流れに乗った海堂は南たちが作り出した防御陣に流れ込み、南によって作り出された渦はその役割を壁と変じ俺の攻撃を阻もうと立ちふさがる。

 水の壁に氷の壁、そしてその奥にはさらに二重三重と魔力障壁を展開させている。

 そこに、海堂の防御も重なった。

 きっとキオ教官の攻撃を防ぐために編み出した最硬の防御なのだろう。

 そんなものを準備するあいつらに激励を送りつつ、俺の攻撃はどこまで高いかそれを試すためにこの一刀を解き放つ。


「装衣」


 アメリアの放った魔法に俺の魔力を上乗せし、鉱樹に纏われた。

 放つ形は横一線。


『カカカカ、その一撃ならワシの命も刈り取れる日が来るかものう』


 この技を身に着けた日、その技を防いだフシオ教官は俺の一刀に身の危険を感じた。


『ふむ、及第点などとは言わん。合格だ。強くなったな』


 普段は見せたことのない表情で、まっすぐに俺の成果を褒めてくれた監督官。

 あいつらが成果を見せてくれたのだ。

 俺も今、その成果をあいつらに見せよう。


「疑似神剣」


 過去一本だけ、鉱樹という存在は聖剣や魔剣の垣根を超えドワーフもジャイアントも作り出したことができなかった領域に至ったことがあった。

 その樹は今では伝説となり、伝承だけがその存在を語り、自分たちがたどり着けない領域を自然の存在が生み出したことに嫉妬した一部の職人たちがその存在を否定した。

 存在を証明する術は神のみぞ知る。

 俺や俺の鉱樹がその領域に到達したかどうかはわからない。

 だが、その領域に到達するという願掛けを込めて、この一撃に命名する。


「解放」


 ぐっと腰を落とし、足にさらに力を籠めこれから放たれる魔力の衝撃に備える。

 脚から腰へ。

 腰から肩へ。

 肩から腕へ。

 全体重、そして魔力を乗せた一刀。

 その名は。


武御雷たけみかづち!!」


 視界全域に広がる〝白雷〟

 ありとあらゆる障害を薙ぎ払う剣の神の一撃。

 それを放った体から力が抜け、虚脱感が俺を襲うが瞬時に鉱樹と魔力循環を再開し姿勢を整える。

 強大な一撃を放ったからといって、これで決着がついたかどうかは見てみないとわからない。

 属性ごとに大魔法を纏い、それを鉱樹との魔力循環によって強化し放出する一刀。

 疑似神剣と格好つけている。

 燃費はその名が示す通りすこぶる悪い。

 なにせ循環した魔力を根こそぎ持っていく極悪な燃費。

 これでもかなり上位の魔力適性を誇る俺の継戦能力を奪うような一撃の破壊力は。


「ふむ、やりすぎたか」


 自分でやっておいてなんだがテンションに任せて放つ代物ではなかった。

 地形が変わるとたまに表現されるが。

 目の前の光景がまさにその通りだ。

 闘技場という風景を俺の足場を起点に根こそぎ薙ぎ払った結果生まれたのはかなり見通しのいい光景だ。

 タラリとあいつら無事かと自分勝手な心配が鎌首をもたげるも。


「勝負ありだな」

「おうおう、いい一撃を覚えたじゃねぇか!!」

『カカカカ、威力も上げたようじゃのう』


 その心配は杞憂だった。

 監督官、フシオ教官、キオ教官。

 三人の手に海堂たちが保護されていた。

 全員が全員青ざめるも、なんて攻撃を打ちやがると視線で俺を非難していた。

 そんな奴らに、すまんすまんと片手で謝罪する。

 そして。


「これにて、今回の研修を修了する!」


 その結果を見届けた監督官によって今回の研修は幕を閉じるのであった。



 今日の一言

 成果確認は重要だが、ほどほどにな。


今回は以上となります。

もう、一、二話ほど挟んだら今回の章は終わりになります。

毎度の誤字の指摘やご感想ありがとうございます。

面白いと思って頂ければ、感想、評価、ブックマーク等よろしくお願いいたします。

※第一巻の書籍がハヤカワ文庫JAより出版されております。

 2018年10月18日に発売しました。

 同年10月31日に電子書籍版も出ています。

 また12月19日に二巻が発売されております。

 2019年2月20日に第三巻が発売されました。

 内容として、小説家になろうに投稿している内容を修正加筆し、未公開の間章を追加収録いたしました。

 新刊の方も是非ともお願いします!!


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そちらも楽しんでいただければ幸いです。


これからもどうか本作をよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 仲間との差がつきすぎて正直読むのやめようかなと思ってます。 257の時点ですが。 一人だけ強くなるってのは個人的にはおもしろくないので。
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