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223 余力は残したいんだがな

総合評価二万達成しました。

皆様のご愛読誠にありがとうございます!!

これからも本作をよろしくお願いいたします。

 相手の戦闘力は大したことはない。

 戦い初めてそれは実感できた。

 相手は武器を振り回すだけで、技も何もない、ただの力任せの暴力。


「あがぁ! がぁ!」


 おまけに理性もないようだ。

 ただひたすらに目の前の存在を倒すことだけの暴力の化身。

 何も考えない分、動きが読みづらい部分はあるが。


「ふっ」

「がはぁ!? あらぁ!」

 

 単調になりやすいので、対処はしやすい。

 薬か何かで人間としての機能を放棄しているのか、あるいは魔法みたいな技能によって封印しているのか。

 俺の予想では両方使っているとみるべきだろう。

 丁寧に軽く顔に拳を当て牽制してみるもまるで痛みを感じないかのように気にせず俺に向かってくる。

 その様子で、痛覚が無くなっているのかあるいは痛みを気にしなくなっている状態になっていると踏む。


「っ」

「んがぁ!?」


 ならばと今度は意識を飛ばすつもりで側頭部を蹴り飛ばす。

 固いコンバットブーツの爪先で蹴ってしまってはさすがにまずいので、気を付けて意識を飛ばすように蹴り飛ばす。

 ドスンと吹っ飛び地面を転げ動かなくなったのを見届ける。


「ふぅ、さて次はと」


 さすがに意識を飛ばせば動かなくなるようだ。

 警戒するべきは、息切れし、疲れ果て、ダメージを与えても目をギラつかせ襲い掛かってくる執念。


「まぁ、ゾンビよりはましだが・・・・・・」


 人間疲れれば休み、痛みを感じれば動きを止める。

 だが相手にはそれがない。

 愚痴をこぼすように言ったが、まるでホラー映画に出てくるゾンビのようだ。

 さっきので何人目か、スタッフを庇いながらそして無事な一般人を集めながらの防衛戦。

 辛いのはゾンビと違って殺すわけにはいかないといった部分だ。

 徐々に大所帯になっている所為で襲われる回数も多くなっている。


「似たようなものか」


 こちらに群がるように襲ってくるところはゾンビと大差ない。

 救いと言えば、ホラー映画みたいに噛まれて感染しないといったところか。

 お袋たちも対処しているが、眠らせる札が極度の興奮状態である相手には効果がなく、下手に武器を使って致命傷を与えるわけにもいかないため素手で応戦している。


「警察の応援も……っち、まだ混乱しているか」


 電源が復帰し周囲が明るくなっても警察が突入してこない。

 それもその筈、警察の方にも似たようなことが起きているからだ。

 通信の方で現場が混乱していて指揮系統が回復次第応援を回すと言っている。

 それまで耐えてくれと。


「俺は持つが、ほかの奴が時間の問題か。このままじゃ人手が足りないぞ。まったく」


 次から次へと倒してはいるが、護衛対象がいる時点で遠くに離れられない。

 他の鎮圧しているメンバーに応援を頼みたいが回りも似たような状態、しかも。


「回復してやがる」


 余計に手間のかかる展開ときた。

 時間が経つとヌルリと起き上がる影が見える。

 ああ、俺が倒したやつではないが、半端に意識を飛ばした相手が復活している。

 ホラー映画かとさっき思ったがいよいよそれっぽくなってきやがった。

 事実目の前の光景はホラーだからな。

 意識を飛ばしても、場合によっては骨を折っているのにもかかわらずその部分を揺らしながら襲い掛かってくる。

 このままだとそろそろこっちも対応しきれなくなってくるぞ。


「うああ!?」

「!?」


 早々になんとかせねばと考えていると叫び声が聞こえてくる。

 早速かと、嫌な予感が実現したと思いそちらを見れば複数の狂信者たちに群がられる部隊員の姿がいた。

 助けに行きたいが。


「来ないで!!」

「っち」


 今は俺も手を出せない。

 密集しているおかげで反対の方まで手を回すのに時間がかかる。

 隊員の方はまだ抵抗している。

 なら優先順位の問題だ。

 神具の力を借り、一足で頭上を跳び女性に襲い掛かろうとしている男にとびかかる。


「あ、ありがとうございます」

「礼はいい。できるだけ一か所に固まるように周りにも言ってくれ!」

「は、はい!」


 せめて一般人が一か所に集まっていればと思いつつ、倒したならさっきの隊員を助けねばと駆け出せば。


「ったく! 大の男がなさけない声を上げてんじゃないよ! しっかりしな」


 そんな焦りを察してかはわからないが、群がる狂信者たちをキレイな飛び蹴りとともに吹っ飛ばしながらお袋が登場した。


「次郎! このままじゃらちが明かないよ! 人質を一旦舞台に避難させるからあんたも手伝いな」

「そうしたいところだがな!」


 ゾンビ染みた狂信者どもを殴り飛ばしながらお袋の言う通り守るべき相手をどうにか集めたいが、こうも一般人と混じられては手の打ちようがない。

 少しずつでもこっちに集まってくれれば助かるが誘導するにも人手が足りない。

 戦力じゃなくてもいいから人手があれば。


「こっちっすよ!! ゆっくりでいいからこっちに集まるっすよ!!」


 そんな時に聞き覚えのある声が聞こえる。


「それじゃダメでござるよ! われ先に集まって迷惑でござる! 整理しながら進めるでござるよ! 北宮なら声もよく通るでござるし、委員長気質だからまとめるのも得意でござるよ」

「あんたの指示じゃなかったら快くやってたんだけどね! アミー、手伝って、高齢者とケガ人を優先して!」

「OK!」


 次から次へと聞こえる聞き覚えのある声。

 そんな声の中で俺ができるとことと言えば。


「あいつら、ったく、仕方ねぇな!!」


 前に出て少しでも敵の注意を惹くことだ。


「おら! かかってこいやぁ!!」


 景気よく近くの狂信者を殴り飛ばし、縦回転するさまを周囲に見せつける。

 ああ、ちゃんと手加減したぞ。

 派手に吹っ飛んでるように見えるが、骨に異常はない。

 ああ、骨にはな。

 おそるおそるだが、着実に舞台に人が集まっている。

 その中に狂信者たちがいないかは。


「ほらアンタラ確認してきな。まわりのやつらはあたしと次郎でどうにかしてやるから」


 いつの間にか部隊を取りまとめていたお袋によってどうにかなる。

 尻を蹴り飛ばす光景を実際に見る羽目になるとは思わなかったが。

 おかげで俺とお袋で残った狂信者を相手取ることになったのだが。


「きゃぁ!?」

「っと、早く舞台の上に!」

「は、はい!」


 一般人に襲い掛かっている狂信者を片っ端から潰して回る。


「っと、まったく。年配には気遣うって気はないのかねこいつらは、こんなことばかりしてたら体を悪くしちゃうわよ」

「素手で大の男を振り回しておいて今更かよ。それと、気を使う気があったら、あいつらだってこんなことしてないだろ。それより霧江さんから応援とかないのかよ」

「あったらとっくに来てるだろうさ。愚痴こぼしてる暇あったら体動かしな次郎」

「へいへい」


 途中背中合わせでお袋と軽い会話をして呼吸を整えてから再び走り出す。

 残り僅かになった神具の効力。

 ふと胸元にあるスエラたちから渡されたペンダントを握るが、まだ使いどころではないと思い手を離しそのまま加速し再び制圧作業にかかる。

 一人、また一人と倒しているが、相手は本当に不死身ではないかと思うくらいボロボロになりながらも起き上がってくる。


「これは、少しまずいな」


 魔紋が十全に活動していない状況でもしっかりと鍛え上げた体だ。

 全力で動き回っても息切れはしないが、体力の消耗はする。

 額を垂れるわずかな汗、水分も放出し体は熱く、体を動かすには程よいが、体内のエネルギーを消費していることを自覚できる。

 このペースで暴れまわることがあとどれくらいできるか、その配分が頭の中でよぎる。

 ちらりと視線をお袋に向ければまだ余裕そうに動き回っている。

 あのお袋なら一日中動いていても平気だろうなと苦笑し、現状の打開を考えるが、あのお袋でも無敵の超人と言うわけではない。

 ガス欠もいずれする。

 そうならないうちに現状を打開しなければ。

 

「こういう時は頭を叩くに限るんだがな、結果ははずれ。どうしたものか」


 頭らしき演説した男は鎮圧したのにもかかわらずこの騒動はむしろ悪化した。

 神社は盲目の狂信者たちが暴れまわり、この場から逃げれない一般人は恐怖を耐え忍ぶ。

 そして、現状打破と言ったが、ここに別の指導者がいるかと言われれば、それは違うと言える。

 相手の動きに作為的な動きはなく。

 これはどちらかと言えば無差別的な行動のように見える。

 ただ我武者羅に恐怖をまき散らしている。

 そうただそれだけを目的にしているようで裏が見えない。

 すでに目的は達しており、それ以外に何かを目的としている、そんな感じがしないのだ。


「……監視班。敵の動きに規則性はないか」

『確認しているが、やみくもに動き回っているようにしか見えない。一定の場所に集まっている、集団的行動、そういった方向性は見受けられない。少しずつではあるが鎮圧は進んでいるそのまま対処されたし』

「了解」


 イヤーマイクに向けて声をかけてみるが返ってくるのは期待した応えではない。

 上空に待機しているヘリからの情報だ。

 俯瞰した視点としての情報の精度は高いだろう。

 そしてその情報は、徐々にであるが事態が好転していると伝えている。

 ならばこのまま耐え忍ぶかと思いたいが。


「……胸騒ぎがするな」


 なんだこの違和感は、相手の行動が不気味すぎる。

 深く考えすぎかとも思うがここ最近の勘は自分が見落としそうな個所を的確に拾い上げてきた。

 気のせいだけで否定するわけにはいかない。

 なら考えろ。

 恐怖を集めただけで何ができる。

 ここは現代の日本。

 魔法や妖怪、神秘に幻想といったオカルトが薄れた世界だ。

 そこで行われたイカレた宗教団体によるテロ行動。

 これが何につながる。

 霧江さんの言っていた目的だけなのか?

 ただ黄泉の国への道を開けるだけが目的なのか?

 そんな空間で何を目的にしている。

 情報を思い出せ、体感した情報と照らし合わせろ。

 相手は何を望んでいる?

 気になる情報はないか!? 


『み、こ、さ、ま』


 あの演説をしていた男の残した最後の言葉。

 巫女様。

 字にすればありきたりの存在。

 あの組織で象徴的な存在がいるというのか。

 わからない。

 考えれば考えるほど、深みにはまっていくような気がする。

 いまはやるべきことに集中すべきかと、思ったとき。


「恐怖を、集める? 集めるだけ?」


 この行為に俺は一つだけ心当たりがあった。

 それは入社したてフシオ教官に研修でしごかれていた時のことだ。


『教官は不死者という存在なんですよね』

『カカカカ、然様。ワシは生者から死を取り払った存在じゃの。何を今更』

『いや、どうしてそんな存在になりたいと思ったのかなぁって、やっぱりあれですか? 不老不死を求めたとか』


 当時は不死者になる理由を聞きたかっただけの素朴な質問だった。


『成したいことがあった、それをなすためには時間が足りなかった。それ故になった。ワシらのような存在が生まれる理由などその程度よ』

『そういうものなんですかね』

『カカカカ、大それたことをなそうとする理由なぞその程度の物よ。大義名分に隠れ、その真意など小さき理由の集合体にすぎぬ。カカカカ、昔、人は神を降ろそうとするのに虐殺をしたこともある。その理由はシンプルだ。わかるか、次郎』

『いや、何か願い事があったからとかですかね?』

『もっとシンプルじゃった。ただ、その姿を拝みたかった。それだけの理由』

『そんな理由で?』

『そう。そのような小さき理由で、人というのは大それたことができてしまう。ある意味でワシらのような存在よりも、人の方が恐ろしいのぉ』


 それだけの会話であったはずなのに、なぜこのタイミングで思い出したのか。


「……まさか」


 恐怖というのは感情。

 思念というのはときに場を満たすエネルギーとなる。

 現代でも存在する心霊スポットや曰くつきの土地。

 その場に近づくことを人間は忌避する。

 まれに好奇心を持った存在がその場を訪れるが、稀に災難に遭う。

 それ故に人は恐怖する。

 見たこともない存在を、いるかもしれないという仮定だけの話で。

 そして、その仮定の話で、俺は一つの可能性を思いついた。


『稀にあるのじゃよ。災厄を神だと誤認し、それを呼び寄せる。我ら不死者にとってはなじみ深い業。呪いの具現化、その災厄を人はこう呼ぶのぉ』


 それは人知を超えた存在。

 時には台風といった自然災害を人は神罰だと言う時がある。

 それを人為的に呼び起こそうとする現象が日本にもあるではないか。

 神降ろし。

 その呼び方は様々。

 儀式による祈祷が正道ではあるが、邪道も存在する。

 その邪道で呼び出される存在こそ。


『荒神と』


 荒ぶる神。

 それは災厄。

 何も益をもたらさない神様。

 この場の空気にうってつけの存在。

 それが具現化できるというのなら。

 この騒動、いや黄泉の国への道を開くのも過程だとするのなら。


「……」


 直感めいた判断だが、この悪い予感、外れたことのない。

 そして少しずつ糸が繋がっていくような感覚がある。


「この騒動は囮? 本命は別か!?」


 その導き出した答えは、俺の中で確信となった。


 今日の一言

 気づくのが遅れた。間に合ってくれ!!


今回は以上となります。

毎度の誤字の指摘やご感想ありがとうございます。

面白いと思って頂ければ、感想、評価、ブックマーク等よろしくお願いいたします。

※第一巻の書籍化がハヤカワ文庫JAより決定いたしました。

 2018年10月18日に発売しました。

 同年10月31日に電子書籍版も出ています。

 また12月19日に二巻が発売しました。

 2019年2月20日に第三巻が発売されました。

 内容として、小説家になろうに投稿している内容を修正加筆し、未公開の間章を追加収録いたしました。

 新刊の方も是非ともお願いします!!


また、講談社様の「ヤングマガジンサード」でのコミカライズも決定いたしました。

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