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214 日常を楽しめるときに楽しんでおいた方がいい

 あれからプレゼントを賭けたビンゴ大会は続き、アメリアの後にはスエラが美枝さんの用意したマフラーを貰い。

 その美枝さんがスエラの後にスエラが用意した木彫りのお守りを貰うというプレゼント交換会ならありふれた光景を出し。

 そして次に当てたのは北宮で、もらったのは海堂が用意したストレス発散用の空気で膨らます的。

 要は重心が下にあって、殴っても起き上がってくるサンドバッグみたいなやつだ。

 ジャイアントの店にあったらしく、面白そうなので買ったと海堂が言った。

 北宮がそれを見て口元を引きつらせていたが、海堂よ。

 お前は渡してはいけないものを渡してはいけない人物に渡してしまったな。

 お前は忘れているかもしれないが、最近北宮の奴はスエラを見習って訓練に接近戦を織り込むようになってきたんだぞ。

 今回の道具で格闘センスに磨きがかかるに違いない。

 魔法使いに格闘スキルを与えたようなものだと、思いつつ目の前で海堂が笑顔で、おそらく善意でストレス発散に使えと言っている光景を見た。

 それに対して北宮は笑顔で存分に活用させてもらうと言っていることから、たぶん俺の予想は外れないだろう。

 北宮の奴、将来、ゴッドブローとか黄金の右ストレートとか習得しないよな?

 魔法使いが近接戦を習得するのはこっちじゃ普通だが、魔力がなくなったからって言って肉弾戦を挑むのもどうかと思う。

 そして、その海堂が北宮の後に続いたのだが、当たったのは俺が用意した円盤状の自動に床を掃除してくれるものだ。

 片付けが苦手な海堂にはちょうど良かったと思う。

 俺は俺で手元のビンゴ用紙を見る。

 見事と言うべきくらいに穴が開いていない。

 俺自身は何度かビンゴというものを経験しているが、ここまでまっさらに穴が開いていないという経験はなかった。

 前までなら二個や三個いや、四個くらいは穴が開いていてもおかしくはないのだが、空いているのはフリースペースである中央と、ついさっきようやく空いた一か所のみ。

 こうなると、意図的に俺を排除しているのではと思えるくらいの当たらなさだ。


「あ、ビンゴです」


 そうこうしているうちに次に当たったのは勝だ。

 手に持った用紙を海堂が確認している。

 もう一人の進行をしているはずの南はビンゴ用紙を凝視してそれどころではないようだ。


「八番っす!」

「あ、私のダ!!」


 勝が引いた数字を海堂が読み上げれば、アメリアが反応する。


「CD?」

「yes! 私のおすすめの音楽を集めたの、聞いてネ!」

「わかった。聞いてみる」


 五枚組のCDを海堂から渡された勝は、英語の歌詞が書かれているCDを眺め、アメリアが嬉しそうに勧めるので今度聞くと彼女と約束するのであった。

 さて、残るは俺、南、メモリアとなったのだが、俺が当たるのはもうしばらく先になるだろうと思いビールを飲みながら次の番号を待てば。


「あ、当たりましたね」

「お、よかったな。メモリア」

「はい、なかなか当たらないものですね。三つほどリーチしていたのですが」

「そんなもんだ。俺に至ってはようやく一つリーチだよ」

「そうですか、ではお先に引かせてもらいます」


 三人のうちのメモリアが当たったので引く。

 そして引いたのは。


「む、私のか」

「ヒミクが用意してくれたものですか」

「うむ! なかなかの自信作だぞ! クリスマスに何を用意すればいいか主に聞いてみたらこれだと言われてな! 初めてやってみたが、うまくできたと思うぞ!」


 ヒミクの用意した代物であった。

 赤い紙袋に入った物をメモリアは手探りで取り出した。


「これは」

「毛糸で作ったコースターだ。いろいろなガラを用意してみた」


 手編みのセーターなど今どき作る人はいないとも思ったが、手編みの代物という物はいいのではと思いヒミクに提案してみた。

 当人は不器用だから無理だと言っていたが、物は試しにと始めて見たら見事にハマった。

 趣味というものが家事や料理という状況であったヒミクであったが、編み物というのは彼女に日常の楽しみを与えたのであった。

 部屋で楽しそうに雑誌片手に編み物をしているヒミクの姿を度々見かけ、勧めてよかったと思う。

 実際に完成したコースターはプロほどではないが、丁寧に作りこまれている。

 クリスマスのシーズンに合わせ、雪の結晶や雪だるまといった冬にまつわるガラにメモリアはじっと見た後、ゆっくりと目じりをさげ微笑み。


「ヒミク、ありがとうございます。大切にしますね」

「うむ!」


 大事そうにそのコースターを袋にしまうのであった。

 三人も恋人がいると関係がシビアになると危惧するときがあるがうちは仲良くやれていると思う。

 さて、そろそろ現実に戻るとしようか。


「なん、だと!?」

「いや、ネタはいいが、残ってるのは俺と南だけだからな?」


 結果的にビンゴ大会は俺と南という不運組のデッドヒートになってしまった。

 いや、俺はステータスの運が低いことからなんとなくこうなるのではと思っていた。

 だが、それに対して南はどうなのだろうかと言えば、日ごろの行いが悪いのかと疑ってしまう。


「トリプル通り越して、クワトロリーチかかっているのになんで当たらないでござるかぁ!?」


 南のビンゴ用紙を見れば、ようやく一列リーチがかかった俺の用紙と比べてあちらこちらに穴が開き、ビンゴしそうな個所もいくつか見れる。

 それなのにもかかわらずビンゴする様子がない。

 事実。


「っく、また外れたでござる」

「俺もだ」

 

 いまだ俺らは当たらない。

 

「この二人、終わるのかしら」

「終わると思うっすよ? 全部の球が出れば、さすがに終わるっすから」

「そこまでビンゴしないっていうのも異常よ」


 カラカラと軽快な音が響き、出てきた球の数字を見るも俺の紙には存在せず、南の紙にも存在しなかった番号だ。

 その外れ具合に北宮と海堂が不安の声を上げるが、俺はそこまで気にしてはいない。


「まぁ、最悪じゃんけんで決めればいいさ」

「ダメでござるよ!? 拙者とリーダーじゃ動体視力も運動能力も差があるでござる! リーダーじゃんけんポイっていう間に何回手の内変えられるでござるか!?」

「あ~四回?」

「拙者は二回でござる。この時点で負けるのが確定している勝負に誰が挑むでござるか! ありえんでござるよ残像残しながら手が変わるんでござるよ!? チートでござるか!」

「努力の成果だよ」

「努力の方向性が間違ってるわよ」


 正確には頑張れば、もう二、三回増やせると思うがな。

 アルコールも入れているから、正確に手を変えるのは少し難しいので、少し少な目で言った。

 まぁ、この話もこのままいけば時間がかかると思い、単純にて時間のかからない王道の勝負を提案しただけで、通るとは思っていない。

 事実ステータスの差に南が拒否した。

 じゃんけんにステータス能力を求められたのは初めてだが、言われてみれば確かにと納得し静かにビールを飲みながらビンゴを進める。


「当たりませんね」

「まぁ、こんなものだろ」


 球が出るたびに確認し、穴をあけるがなかなかリーチにもつながらない。

 スエラが心配そうにのぞき込んでくる。

 そんな彼女に大丈夫だと言い、対してゲームというジャンルで負けられないと気合を入れている南の方を見れば。


「あと一つ、あと一つ数字が出れば拙者の勝ちでござる!」


 熱血キャラという存在から正反対である南が珍しく燃えている。

 もはや司会などどうでもいいと言わんばかりに次に出てくるビンゴの球を凝視している。

 それを楽しそうに眺めていると。


「そういえば、シィク、ミィク」

「何かしらお姉さま」

「何の用かしらお姉さま」

「お前たちはプレゼントは何を用意したんだ?」

「あらお姉さま、それを言ってしまっては楽しみが半減してしまいますわ」

「ええ、勇者様の手に必ず渡らないと聞いたときは残念でしたが、それならそれで良いものを用意すればいいとミィクと考えましたわ」

「しっかりとしたものなんだな?」

「それはもちろん、保証しますわ。ねぇミィク」

「ええ、シィク。私たち真剣に考えましたわ」

「何より私たちが作った物ですもの、きっと喜んでくださるわ」

「ええ、役に立つものという物を用意いたしましたわ」


 ヒミクが妹二人が何を用意したのか気になり二人に聞いてみるも、双子はプレゼントは開けてみることも醍醐味だと言い、中身については言わなかった。

 その態度が些か不安になる。


「ちなみに海堂、お前は中身を知っているか?」

「あら、お義兄様、それは無粋ですわよ」

「ええ、勇者様もお義兄様に答えないでくださいね」

「ハハハハ、ということらしいっす。まぁ、俺も彼女たちが何を用意したかわからないっすけど」


 ちなみに蛇足ではあるが、この双子の俺への呼び方はヒミクとの主従関係兼恋人だと認識され義兄呼ばわりされている。

 年上に義兄と呼ばれるのもあなんだか変な感じがするが、見た目的には問題ないと納得している。

 そんなことを話しているうちに、また一つ球が出る。


「お、当たった」

「当たったでござるぅぅぅぅぅ!!!」


 その番号を見た瞬間、俺は唯一リーチしていた番号の残りの数字が埋まり見事にビンゴ、そして南も雄たけびを上げた。


「お、まさかの同時っすか。となると、じゃんけんか次のビンゴが出るまでサドンデスするっすか?」

「いや、俺は後でいい。南、先に引きな」

「え、いいんでござるか?」

「それだけリーチしてたらさすがにな」

「おお! リーダー太っ腹でござるなぁ! それなら遠慮なく!」


 結果は同着だったので俺は俺で、雰囲気を楽しめたのでこれでいいと思い南に先に引くように言う。

 そうすれば嬉しそうに箱の中に手を伸ばし、その手に握った番号を全員に見えるように高く掲げ見せる。


「ふふふ、残っているのは同じ大きさの袋が二つ。さぁ、拙者へのプレゼントはなんでござるか!」

「お、この番号はシィクちゃんの奴っすね。それじゃ、これどうぞっす」

「ありがとうでござる! なかなかな、重さがあるでござるが中身は、なんでござるかなぁ」


 高さ三十センチのほどの袋に入った物をごそごそとあさり、しっかりとつかみ取り出してみれば。


「……ポーションでござるか?」

「ええ、私が作った魔法薬よ?」


 どこかで見覚えのある瓶の形状、ペットボトルほどのサイズの大きさ。

 それは俺たちがいつも使っているポーションと比べれば大きいが、一見は普通のポーションに見える。


「おお、天使が作ったポーションでござるか。効果がありそうでござるな」

「ええ、よく効きますわ」

「ちなみに効力はなんでござるか?」

「フフフ、それ性別変換薬、それを一口飲めばたちどころに肉体が反転するわ。効果は一時間。勇者様が言っていたぱーてぃーぐっずのようなものを作ってみましたわ」

「まさかの性転換薬でござった!? ダンジョン攻略にはなんの役にも立たなそうでござるなぁ。それが十本……どう消費すればいいでござる?」


 だが、その中身はネタグッズだったようだ。

 性別変換薬など空想上では聞いたことはあったが、まさか実物を出してくるとは思わなかった。


「っく、今度男性キャラのコスプレするときに使うくらいしか思いつかないでござるよ」

「考えつくのかよ。まぁいいか。海堂、俺の分も頼むわ」

「わかったっす」

「ちなみに、俺の方も同じなのか?」

「いえ、私は別の物を作りましたわ」

「ほう。それは男の俺がもらっても問題ないものか?」

「ええ、問題ありませんわ。男性でも女性でも役に立つものですわ」

「それは楽しみだ」

「持ってきたっすよ! どうぞ先輩」

「おう、それじゃ中を開けるか」


 その薬の使い道を見出す南に苦笑し、俺も俺で袋をあさり中身を机の上に出してみれば、青かった南の薬と違い、俺の瓶の中身は透明であった。

 それの中身が空っぽではなく、しっかりと中に入っているのはわかる。

 さて、問題なのはこれの効果なのだが。


「さて、これはどんな薬なんだ?」


 見た感じ怪しい雰囲気もないので俺は油断していた。

 性転換のあとに何が来るかと楽しみにしていた俺に、ミィクは笑顔で。


「ええ、それは夜のお薬ですわ。それはもう甘美な夜をお約束できますわ」

「は?」


 とんでもないことを言ってのけた。

 見た目が女子中学生のような格好だったので俺は一瞬彼女が何を言っているのか理解できず、思わず聞き返してしまった。


「あら、女性の口から同じことを言わせるつもりですか? ひどい人」


 だが、からかうように笑うだけで彼女は答えない。


「使い方は簡単、一滴だけ飲み物に垂らせばその日一日は元気になりますわ。入れすぎると大変なことになりますので量はほどほどに」


 いやほどほどにって、そんな代物がずっしりと入っているんだが……

 しかし、そんな困惑した俺を放置ししっかりと使い方を説明したミィクは楽しそうに微笑み。


「ですが、お義兄様の場合、少し多めに入れた方がよさそうですね」


 見た目は中学生のくせ、中身は俺より年上なので思いっきりからかってきた。

 そのからかう原因はなんとなくわかる。

 ミィクの話を聞き、チラチラと期待するように俺の方を見るヒミクとメモリア、そして残念そうなスエラ。


「……反応に困るものを入れるな」

「あ、照れてるっすね先輩」

「うるせぇ」


 向こうの世界ではそれが当たり前なのかと思う代物を出され、南が遊べるものでよかったと安堵しているのを見ながら、クリスマスプレゼントの交換会は終わるのであった。



 今日の一言

 変わった日常ではあったが、おもしろかった。


今回は以上となります。

面白いと思って頂ければ、感想、評価、ブックマーク等よろしくお願いいたします。

※第一巻の書籍化がハヤカワ文庫JAより決定いたしました。

 2018年10月18日に発売しました。

 同年10月31日に電子書籍版も出ています。

 また12月19日に二巻が発売しました。

 2019年2月20日に第三巻が発売されました。

 内容として、小説家になろうに投稿している内容を修正加筆し、未公開の間章を追加収録いたしました。

 新刊の方も是非ともお願いします!!


また、講談社様の「ヤングマガジンサード」でのコミカライズも決定いたしました。

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