213 火のないところに煙は立たない。だけどその煙を気にする人は少ない
またもや一日遅れて申し訳ありません。
少々ごたごたしていました。
もしかしたら今週も遅れるかもしれませんが投稿は絶やさないように頑張りますのでよろしくお願いします。
「変な宗教勧誘の話か?」
つい傾けていた酒を止めて、若干素面の時の口調で聞き返してしまった。
ぱっと聞くだけならまず間違いなく、幸運になる壺か魔除けのペンダントといった効果があるかわからない何かを売りつけられそうな内容ではある。
海堂の話は、ツイッターやSNSによく見る都市伝説のようなものらしい。
それだけなら、ただのゴシップネタとしてよく見る記事の一つでしかないのだが。
「違うっすよ~。なんか本当にある話らしくて、うちのテスターの何人かが話しかけられたらしいっすよ」
実体験があるのなら本当だと言うのはさすがに信用できない。
海堂の言う話も又聞きの伝聞のような形だ。
噂という範疇で収まってしまう。
「その話なら私も聞いたことがあるわよ」
「北宮もか?」
「ええ、魔法使いの集まりの時に聞いたわ」
「ええ、拙者は知らないでござるよ」
「あんたは集まりに来ないでしょうが」
だが、その話を知っているのが増えれば信憑性も増してくる。
私も聞いたと便乗してくる北宮の方に顔を向ければその内容を思い出すように顎に指をあてて話し出す。
「詳しい話は聞いてないけど、いきなり話しかけられて悪いものが憑いてるって言われたみたい。言われた子は最初は相手にしていなかったけど、しつこく神社の方に来るように言われたみたい」
「穏やかじゃないな」
質の悪い宗教勧誘だったらシャレにならないと思い、そしてクリスマスで話す話題でもない。
「まぁ、予想通り海堂の話はくだらない結果に終わったな」
「ちょ!? 先輩、言い方がきつくないっすか!?」
「アホ、クリスマスになんで変な宗教勧誘の話を聞かんといけないんだ。もう少し話題を選べ」
「それもそうね、もう少し明るい話題の方がよかったんじゃないかしら」
「ええ~、北宮ちゃんも話題に乗ったじゃないっすか」
「話の流れに乗っただけよ」
嫌な話題というだけで話をぶった切るのは悪いと思ったが、せっかくのお祝いの席にそんな話題で盛り上がるのもどうかと思い記憶の片隅にとどめる程度の感覚で次の話を振ろうと思ったが。
「すみません。遅くなりました!」
「あ、勝!」
遅れてきた勝が来たことによってその話題提供も必要じゃなくなった。
「すみませんヒミクさん。料理の方手伝えなくて」
「構わない。お前も忙しかったのだろう。仕方ない」
まず最初に一緒に準備する予定であったヒミクに謝罪に行く勝を見ながら、ジュース片手に近寄る南を見る。
「遅いでござるよ~何かあったでござるか?」
「少し、家の用事があっただけだ」
「そうでござるか?」
「ああ」
「それならいいでござるよ。なら、ほら勝もグラスを持つでござる!」
「ああ、ありがとう」
遅れてきた用件を南が聞き出そうとしているが、勝は大したことはないと言いその理由を言わないことに違和感を覚えつつ。
「みんな~グラスを持つでござる! 乾杯するでござるよ!!」
テンションの上がった南に合わせる形で俺もビールを掲げる。
「「「「「メリークリスマス!!」」」」」
テンションの高いメンバーの掛け声とともにグラスが打ち鳴らされ、ようやくクリスマスパーティーは本格的に動き始める。
催し、というわけではないが軽くトランプや王様ゲームといったありきたりのゲームをしているうちに時間というのは流れる。
「それじゃぁ、そろそろメインイベントのプレゼント交換をするっすよ!」
「いくでござるよ!!」
そしてアルコールが入れば人間、多少の羞恥心は消え去る。
ステータスが上がるたびに、酔いに対する耐性も上がっている気はするが、酔いはする。
その酔いも思考が鈍くなるほどではない。
だが、人それぞれの体質もあってか海堂と南のテンションは俺たちの中で一番高いと言える。
ムード的には盛り上がるのでいいと思いつつも、もう少しおとなしくできないものかと思いつつ、この後の出来事が楽しみな俺は、今にもクラッカーを打ち鳴らし、乱発しそうな二人の勢いを苦笑しながら眺める。
そうして海堂が抱えるほどの箱が持ち出されてきた。
「この中に番号を振ったカプセルが入ってるっす。番号は向こうのプレゼントと対になっているっすから、引いた番号がプレゼントになるっす! 引く順番は、レディーファーストといきたいところっすけど、それじゃつまらないっすからこれを用意したっす。南ちゃん!」
「了解でござる!! いでよ、ビンゴマシン!!」
そして助手のように海堂の隣に立っていた南は元気よく、大きめのビンゴマシーンをテーブルの上に置いた。
「見てのとおりなんの変哲のないビンゴマシーンでござる!!」
「ジャイアント謹製のビンゴマシーンとかじゃ、ないだろうな?」
「いや、それは考えたんでござるが、拙者的にシャレじゃすまなさそうだったんで今回は見送ったでござる」
「考えたのかよ」
その作りが意外としっかりしていることから何かとデメリットを付与したがるジャイアントたちが関わっているのではと思ったがそのようなことはなく、ごく普通に売っている物だった。
あの変態的発想をするジャイアントたちのビンゴマシーンだと一回回すたびに何か大事なものが削れそうだからな、これは確認しておいた方がいい。
そして、こちらもまたなんの変哲もないビンゴの時に使う紙を受け取り、不思議そうにその紙を見る異世界組に海堂と南が説明する。
「今からこれを回して番号が書かれた球が出てくるっすから、その数字の書かれた場所に穴をあけるっすよ」
「それで列ができたらビンゴでござる! ビンゴした人から景品くじを引いてもらうでござるよ!」
どこのバラエティ番組の司会かと思うくらいノリノリにやる二人にスエラ、メモリア、ヒミク、シィク、ミィクの異世界組は黙ってうなずき、真剣にその紙を見つめる。
このまま和気あいあいとパーティーが進めばいいなと思った。
まず最初に上がったのは正しく天運というのを味方につけている双子の天使組。
中央が空白のこのビンゴ用紙、五列五行、二十五マスの内容で、最短で四球でビンゴできるわけなのだが、シィクが四球、ミィクが五球でビンゴを達成してみせた。
「これは何かしら? わかるかしらミィク」
「わかりませんわ、シィク。こちらの物は……武器かしら?」
「勝、プレゼントに調理器具はないでござるよ。それも圧力鍋はないでござる」
「いや、みんな自炊しないって聞いていたから、少しでも役立てばいいかなって」
「いや、料理初心者が持っててもあんまり使わないでござる」
「でも、持ってると便利だぞ? ヒミクさんも前新しいの買って使いやすいって」
「拙者に当たってたらどうなってたでござる?」
「……盲点だった」
「勝」
シィクが引き当てたのは勝が用意した圧力鍋。
バイト代を奮発して買ったなかなかの上等品。
これがあれば、豚の角煮や肉じゃがといった煮込み料理はもちろん、米だって炊けてしまうと主婦にはお勧めの一品らしい。
だが、あいにくと異世界組の、それも今まで料理ということをしてこなかった天使に贈られても反応に困るだろう。
実際箱から出した鍋を武器だと認識しているシィクを見ればプレゼントのチョイスがずれている感が否めない。
まぁ、それで海堂にうまい飯でも作ってくれと祈りながら次に移り。
「これは、なにかしら? いい香りがするわシィク」
「ええ、本当に、花の香かしらミィク」
「入浴剤よ、私が選んだいろいろな花の香りのする奴よ。結構いいやつなんだから大事に使いなさいよね」
「綺麗ですね。私たちの世界ではあまりないものです」
「スエラさん、よかったらお店教えますよ?」
「はい、ぜひ」
そして、二番手に当たったミィクと言えば綺麗にラッピングされたかごに入った入浴剤を引き当てた。
こっちのプレゼントは北宮が用意したものらしく、北宮らしい趣味の良さを感じる。
異世界の花の香りということで、好き嫌いが出るかと思ったが、双子天使は素直に喜びの表情を見せている。
ほかにもスエラやメモリア、ヒミクも少し羨ましそうな表情を見せているところから女性陣には好評のようだ。
ただ。
「北宮、それリーダーや海堂先輩に当たったらどうするつもりだったんでござる?」
「別にいいじゃない。次郎さんならスエラさんとかに贈ればいいだけだし、今なら海堂さんも使い道はあるでしょ」
「結果的に良かった感が半端じゃないでござるね」
「そのにやついた顔黙らせてあげてもいいのよ?」
南の言う通り、男性陣である俺たちに当たっていたら間違いなくプレゼントをほかのだれかにプレゼントする流れになっただろうな。
だからこの結果はある意味で良かったと言える。
そしてプレゼントが異なることによって、どんなものがあるのかと楽しみを増やし、圧力鍋で微妙な雰囲気になった空気が流され次に移るのであったが。
「三十七番でござる!」
「主よ、これでいいのか?」
「ああ、それでいいぞ」
「うむ、それなら南、私はビンゴだ」
「っく、さすがは天使、運は独擅場でござるか!」
「私は堕天使だ」
「いや、そういう問題じゃないと思うぞ」
それに続く形でヒミクが七球目でビンゴを達成。
横一列に穴の開いた紙を確認し、問題ないことを告げると悔しそうに南がくじを引くように箱を差し出す。
それに手を伸ばし中から球を一つ取り出す。
そしてその番号のプレゼントはというと。
「これは、なんだ?」
「あ、それ拙者でござる! ムフフフ、当ててしまったでござるか、拙者今回はかなり奮発したでござるからな!!」
南の用意した番号を引き当てた。
そして南が用意したプレゼントはなかなかの大きさを誇る。
それこそ、ほかのプレゼントの中でも群を抜いて大きい。
いったい何を用意したのかと周りが警戒しているなかヒミクが紙袋から取り出したのは。
「ふふふふ、拙者が用意した名作レトロゲーム詰め合わせパックでござる!!」
俺が見てもなんとも懐かしいと言わざるを得ないゲームの数々。
どれくらい懐かしいかと言えば、映像がかなり綺麗に描かれリアルになったこのご時世に、ドット絵とポリゴン絵を出すくらい懐かしいと言えるレベル。
そしてそのゲーム筐体は見たところ新品に見える。
「おまえ、どうやってこれを用意したんだ?」
「フフフフ!秋葉原になら揃ってるでござる!!」
「主、これはなんだ?」
「簡単に言えば遊具だ」
「なるほど遊具か……遊具、なのか?」
「……後で使い方を教える」
「うむ、頼む!」
だが、俺たち日本組なら懐かしいと呼べる代物でも、異世界組からすればただの箱。
ヒミクの頭には疑問符が浮かびこれはいったいなんなんだと箱をあらゆる角度からみて見定めようとしていた。
それに対して、積み木のように使うのではないかと危惧したのであとで説明するとし、一旦袋の中にしまわせた。
そして四番目となるとそろそろ俺たち日本組から出てきてほしいところなのだが。
「あ、私ダ!! ビンゴダヨ!」
その願いが通じたのか、四番手はアメリアだ。
ヒミクよりも二玉遅れ、九玉目でビンゴを達成したアメリアは嬉しそうにそのビンゴ用紙を掲げ例の箱の中に手を伸ばす。
そして出てきた番号を海堂に見せ、海堂が持ってきた景品は何かといえば。
「何かな何かな……? 封筒?」
「あ、それ私です」
「メモリアさんの景品? なんだろウ?」
綺麗な郵便封筒を渡されたアメリアは不思議そうに中を見ていいかとメモリアに確認すればどうぞと言われ、封を切り中を見る。
「うちの商会で使える割引券です。商会が潰れない限り期限はありませんので」
「いや、いいんっすかそれ? しかも七割引きっすね。原価っすか?」
「? 誰がもらっても喜び役立つものを贈る習わしだと聞いたのですが、ダメでしたか?」
「ダメではないと思うぞ。宝くじを贈る輩もいるからな」
「アハハ、ちょっと驚いたけど嬉しいヨ! こんど、メモリアさんのお店でお買い物するネ!」
「ええ、言ってくださればない商品も仕入れますので」
それはメモリアの実家、トリス商会で使える割引券。
と言っても俺たちが知っているようなクーポン的なモノではなく。
どちらかと言えば商品券に近いものかもしれない。
賢者の知識によって向こうの言語は読み書き会話なんでもできるアメリアの手に現れた一枚の書状。
それは、メモリアの権限で許せる範囲での格安販売を確約する紹介状。
実家の一人娘の裁量でできる範囲とはいえ、かなりの品物を格安で買える。
若干、節約根性たくましい勝が羨ましそうに見ていたのは気づかなかったことにして。
経済事情的にあまりよくないアメリアの家庭にとってもプラスになるので、アメリアは素直に喜ぶのであった。
クリスマスという行事に不慣れだったゆえに、こういったプレゼントが混じったがまぁ、これはこれでありだと思い。
「さぁ、次に行くっす!」
パーティーはこれから盛り上がる雰囲気のまま、次に行こう。
今日の一言
噂はあくまで噂、頭の片隅に留めておくのが一番だ。
今回は以上となります。
面白いと思って頂ければ、感想、評価、ブックマーク等よろしくお願いいたします。
※第一巻の書籍化がハヤカワ文庫JAより決定いたしました。
2018年10月18日に発売しました。
同年10月31日に電子書籍版も出ています。
また12月19日に二巻が発売となります。
内容として、小説家になろうに投稿している内容を修正加筆し、未公開の間章を追加収録いたしました。
新刊の方も是非ともお願いします!!
また、講談社様の「ヤングマガジンサード」でのコミカライズも決定いたしました。




