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148 失敗を把握してこそ、次の業務に活かすことができる。

「さて、宣言通り。NG名場面上映会を実施する。各自飲み物を噴かないように気をつけろ」

「「NOoooooo!?」」


 PV撮影も無事終わり、その日はそのまま業務は終了。

 夕方六時を回った俺たちダンジョンテスターチームに加えスエラ、メモリア、ヒミク、そして一人は寂しいと半泣きになりながら飛びついてきたケイリィさんを加えてパーティールームに集まった。

 時間をかけたPV撮影の打ち上げを兼ねた反省会だ。

 当然反省会という名目ならNG集の公開は欠かせない。

 撮影班の悪魔に頼んでダビングしてもらったDVD片手にその旨を宣言してやると二箇所から叫び声が上がる。

 今回のお笑いMVP候補の海堂と南だ。

 順調に進んだとは言っても、一発で撮り終えたわけではない。

 何度かやり直し、監督が納得するまでしっかりとした映像を撮った。

 そして納得できない部分を含め純粋に失敗した部分を映像にまとめてもらった。


「さすが悪魔、楽しむことに関しては天才的だ。身体強化を利用し最新鋭のパソコンを最大限までに活かした映像編集テクニック。それを活かして冗談半分で反省資料として頼んでみたら喜んで作ってくれた。本来の仕事の画像編集しながら五分でおもしろが……いや喜んでNG集を作ってくれた。おそらくテレビ局あたりが見つけたら即スカウトするレベルだったろうな、あれは」

「今面白がってっていおうとしたっすよね! あと先輩! 悪魔がそんな面白い話に飛びつかないわけないじゃないっすか!! 本来の仕事優先してほしかったっすね!? そんなことに力入れないでいいっすよ!!」

「そうでござる!! なんでござるかこれ! 吊し上げでござるか!? いじめでござるか!? それなら拙者断固として抗議するでござる!!」


 時々ノリと勢いでとんでもないことをしでかす魔王軍であるが、スエラたちで知ってはいたがパソコン操作に身体強化を使い、PC三台同時併用とは恐れ入った。

 目ではしっかりと二本の腕が縦横無尽にマウスなりキーボードなりを操作しているのを見ていたが、一般人が見たらきっとその悪魔は阿修羅に見えただろうな。


「別にお前らは見なくていいんだぞ?」

「「?」」

「俺らは見るけどな!」

「「うわ、最悪だ! この人最悪だ!」」


 そんな悪魔が作ってくれたこのNG集はまさに悪魔の囁きだろう。

 過去にないほど、いや多分俺は教練を楽しんでいた教官たちと同じように、俺の表情は悪い笑みで染まっているだろう。


「次郎さん、からかうのはそこらへんにしておいて始めませんか? ヒミクが作ってくれた料理も冷めてしまいますよ?」

「そうだな、全員飲み物は渡ったな。一部の意思を無視してはじめるぞ」

「「「「はーい」」」」

「え!?」

「マジでこの空気ではじめるでござるか!?」


 仕方ないなと苦笑しながら間に入ってくれているスエラであったが、彼女自身も見ること自体は反対していないので心の中でこのNG集がどんな代物になっているか楽しみなのだろう。

 各々、それこそ成人しているあるいはスエラを除く異世界組は酒を手に取り、未成年組は好きなノンアルコールドリンクを手にとって乾杯の姿勢をとる。

 海堂と南も慌てて飲み物を取り、乾杯の輪に入る。

 そして始まる上映会であるが。


「NO!? やめるっす!! そこは罠っすよ!! そこは避けろ!! なんで俺はここでドヤ顔したっすか!?」


 手始めに映ったのは海堂、最初こそガチガチに動き出したが、何体かのモンスターを切り伏せるとそこまで難しくないことに気づき自然体の動きで戦い始める。

 だが、モンスターの強さに対して余裕が出てきたのが運の尽き。

 調子に乗った海堂はというと。


『今必殺の炎獄剣!』


 堂々と中二病全開の発言をしながら歯を光らせるようなカメラの位置取りでキメ顔を晒していた。


「なんでござるか、炎獄剣って、中二病にするならもう少し、センスってものを、ダメでござるあのキメ顔がツボに」

「なによ、あれ、本気でやったの? すっごく生で見たかったわ、だめ、見てたら絶対笑って手元が狂ってたわ。おまけに技外してるしっぷ」

「……」

『アミー? ダメだ、完全に笑いを堪えてて聞こえてない』

「笑うなら一思いに笑うっすよ!! そういった中途半端な笑いの方が傷つくっす!」

「「「アハハハハハハハハハハ!!」」」

「本当に笑いやがったっす!? うちの女性陣は容赦がない!?」


 最初は海堂の自尊心のため口元を引きつらせ笑いを我慢しているのがわかる女性陣であったが、我慢しきれていないのが丸分かりで開き直った海堂の指摘によってその栓は解き放たれ笑い声が部屋に響く。

 女性陣に盛大にウケた海堂は開き直って自棄酒に走りながら、どうっすか! と異世界組にも話を振るが。


「至って普通の炎の付与魔法ですよね? どこかおかしな点がありましたか?」

「いえ、特には。多少過大に公言されているようでしたが、それ以外は特に代わり映えしない技かと」

「そうよねぇ、もっと炎を大きくしたりしたほうが、いや彼の魔力量から考えるなら収束させた方が威力が上がるわね」

「剣の振り方も甘いな。あんな大振りではなく、もっと脇を締めて鋭く振ったほうが威力も鋭さも上がるな」

『う~ん、僕的にはあそこで炎を使うよりも風の方が効果的だと思うけどどうかな?』

「……勝くん、冷静に評価されるのも、キツいっすね」

「ドンマイです」


 渾身のキメ顔がスルーされ、NG集の意味合いを完全に真面目な方向に捉えた彼女たちのアドバイスに別方面でも傷つく海堂であった。

 かく言う俺は、どっちの方面の反応も理解できるので、それをつまみに楽しみながら黙って映像を見ている。


「っく、こうなれば道連れをって次は南ちゃんじゃないっすかぁ」

「なぬ!?」


 そして最初にダメージを受けた海堂は水を得た魚のように、いやこの場合感染者を増やそうとするゾンビの如しと言えばいいのだろうか?

 奈落の底から逃げようとする南の足をガシっと掴む海堂の姿が幻視できた。

 ニマリと決して綺麗とは言えない、悪意が含まれた海堂の笑みなどお構いなしに、腹を抱えて笑っていた南は一瞬で冷静になり画面を遮ろうと前に立ちはだかろうとするも。


「は、離すでござる!! 後生でござるから離すでござるよ北宮!」

「いいじゃない、海堂だって晒したんだからあんたも反省がてら晒されてきなさい」

「コヤツ酔っているでござるな!? おのれェ!?」


 北宮は酒に弱いのか?

 いつものきつい表情がなりを潜め、場の雰囲気にノって南を羽交い絞めにする北宮は楽しそうだった。

 その口元から漂うアルコールの臭いに南は北宮が酔っていることに気付くも、魔力で強化された彼女を振りほどくことができず無情にも南の場面は流れていく。


『拙者がァ! いる限り! この場で負けはないでござる!!』


 最初は冷静にござる口調がたまに抜けるくらいに真面目にやっていたのに、普段のダンジョンアタックで砕ける余裕をもててしまったが故か、元ひきこもりの設定はどこに消えてしまったのだろう。

 多分、もっと経験を積めば見事な歌舞伎役者になるだろうと思えるほどの見事なポーズだ。


『はぎゃぁ!?』

「あ」


 ただ、お前も海堂と一緒で調子に乗らないほうがいい。

 ポージングのあとに、後頭部めがけてモンスターが飛んできて見事に激突してしまった。


「ぷ、はぎゃぁってはぎゃぁってなによ」

「そ、そうっすね。格好良く決めたあとにはぎゃぁって」

「……」

「あれは仕方ないでござろう!? いきなり背後からモンスターが飛んできたのでござるから!? というかあのモンスター、勝のミスでござろう!?」


 南の場面で何かに気づいた勝、そしてちょうど画面が切り替わった時、やってしまったと南の方を見る勝がちょうど映る。

 明らかに南のカッコつけるシーンを邪魔したように見えてしまうが、勝からしたら普通に失敗しただけの話。

 それがタイミングが重なってコントのような形になってしまった。


「なんというかすまん。だけど」

「だけど? なんでござるか?」

「はぎゃぁはないと思うな」

「「「ぷ、あはははははははははははははは!」」」


 そして、勝の言葉で海堂たちは爆笑して気づいていなかっただろうが画面の奥で勝が南のリアクションを見て別方向を見て笑いをこらえている場面を俺は見逃さない。


「南さんは視野が広いのでサポートがうまいのですが、なぜあの場面であのような格好を? もう少し冷静であればあのようなことをしないはずですが、メモリアどう思います?」

「昔、父に聞いたのですが勇者は何かとポーズを決めるのが日本の勇者の習わしらしく、戦いの最中でも剣を天に掲げ兵を鼓舞し士気を向上させたとか」

「なるほどねぇ、あれはパーティーのためにやったことなのね。ちょっと周りの警戒がおろそかになって失敗しちゃったけど、これは次の課題ね?」

「ふむ、確かに私が仕えていた勇者も似たようなことをしていたな。私からしたら恥ずかしくないのかと思ったが、兵はそれでやる気になっていた」

『う~ん、なんだろう僕もこの光景に見覚えが』


 南からしたらただノリと勢いで決めただけだろうが、常識の違いと過去の話からのどこかずれた勘違いのおかげで受けた異世界組からの思いのほか高い評価に赤面し顔を隠すように手の平で覆いその場にうずくまる。


「あ、穴があるなら入りたいでござる。こんなに冷静な評価が恥ずかしいなんて知らなかったでござる」

「あんたからしたら、ノリでやっただけだろうしね」

「わかっているでござるよ!! こうなったら北宮お前も道連れにしてやるでござるよ!!」

「ふふん、この私に限ってそんなことあるわけないでしょ」


 日本組と異世界組の温度差が思いのほかいい具合にバランスをとっている。

 なんだかんだで楽しい雰囲気になっているパーティールームで海堂、南、勝と来た。

 いきなり失敗するであろう二人を出した時点でネタ切れだと思った北宮は完全に油断している。

 甘いぞ、裏で何かを企むのが大好きな悪魔がこの程度で終わるわけがない。

 あいつらは油断している時にきっちりいいタイミングで刺してくる。

 次を飾るのはもちろん。


『凍てつアイタ!? あ、詠唱失敗しちゃったじゃなぁいいいいいいいいいいいいいい!!』

「え!?」

『あ、やばい杖に罅入っちゃった。これ直るかしら?』

「「っぷ」」


 全力で杖をフルスイングしている北宮の画像であった。

 バッティングセンターでOLとかが全力フルスイングしている光景を一度だけ見たことがあるが、それとよく似ている。

 そして、見事なフルスイングだったが彼女の使っている杖は木製、鎧を着ているモンスターに対していかに魔力で強化していても耐久面では金属鎧に劣る。

 ミシっとひび割れた杖を見て冷や汗を流す北宮の姿がバッチリと映っていた。


「そういえば、変なタイミングで撮影が止められた時があったっすね南ちゃん?」

「そうでござるな海堂さん、拙者もなんでかなって思ったでござるが、こういうことでござったかぁ」

「魔法使いが、ゴブリン相手に杖でフルスイング」

「よく、腰の入ったいいスイングでござるよ?」

「「でも魔法使いが武器を壊すって」」

「あんたたちそこに並びなさい!! 凍らせてあげるわ!!」

「「きゃぁ」」


 今まで笑われた仕返しに、すべての言葉に笑みを付随させ煽る海堂と南に北宮は魔力を練りこみながら追い回すが二人もダンジョンテスター、逃げることには慣れがある。

 静かにかつ料理に被害が出ないように逃げ回る三人を脇目に異世界組の評価はというと。


「そろそろ北宮さんにも接近戦をすすめる頃合でしょうか?」

「そうですね、杖だけではなくもう一つくらい攻撃手段を持つのは悪くないでしょうね。あのように咄嗟の時に武器を壊してしまった時に対応できたほうがいいでしょう」

「それなら拳なんてどう? 篭手で手を覆えば武器にも防具にもなる。日本で言う一石二鳥ってやつよ」

「ふむ、まずは手頃なモノから行くのがいいか。目標は最低でも魔力強化なしで岩を砕くあたりか?」

『う~ん、もう少し基準を上げてもいいんじゃないかな?』

「あはははは、魔法使いって大変なんだネ」


 アルコールが入っていても冷静に評価する異世界組に、魔法使いとはなんだろうと疑問に思うアメリアは静かに同意する。

 自分がバジリスクの頭の上に大道芸並に空中三回転ひねりを加えてYの字で着地したシーンが流れるのを見て、鬼ごっこに夢中になっている三人が気づかなくてよかったと安堵している。


「すごい器用だな」

「あははは、ありがとう」

「アメリアさんは身のこなしが軽いですね、このまま行けば空中歩行も覚えるのも早いのでは?」

「そうですね、ポジション的に覚えて損はないですね」

「なんなら私が教えてあげようか? コツを覚えればすぐにできるわよ?」

『ふむ。アミー、教えてもらったらどうだい?』

「か、考えておきます」


 それから、珍プレーやらNG場面が順番に映し出されるたびに異世界組と鬼ごっこをしていない日本組の反応を楽しみながら打ち上げは続く。

 そして器用に部屋の中で鬼ごっこしている三人も段々と勢いが収まってくるタイミング。


「あ、次は次郎さんですね」

「おお! 主だ!」

「静かに見ましょうねヒミク」

「お、次郎君かぁ、どんなのを見せてくれるのかしら?」

「「「ハァハァハァ、何!?」」」


 ついに俺の番になったわけだが。


「ククク、なんだかんだ言って先輩もやらかしているんじゃないっすか」

「そうでござるね、散々恥をかかせてくれた恨み、ここで晴らすでござるよ」

「そうね、さぁ見ようじゃない。次郎さんのNG場面を」


 スエラが俺の映像が映った時に名前を出したので、三人の反応がすごい。

 ギラリと目を輝かせ画面に食いつくように見る三人は鬼気迫るほど気合が入っている。

 さて? 俺はどんなNGを出した?

 NG集の中身は俺も見たわけではない。

 なのでもしかしたら俺の気づかない部分で失敗していたかと心当たりを探すも一向に思い出せない。

 そもそも、俺が気づかない部分だ。

 俺が知るはずもないかと、酒のつまみにされることを覚悟して黙って見ていると。


 ガシグシャ


「「「は?」」」


 飛んできたゴブリンの頭を見ないで鷲掴みにし握力で砕く俺の姿が映った。

 そして、そこから始まるのは淡々とモンスターを処理する俺の姿、だが、その笑みは教官と似たような表情であり最後のテロップで。


『顔が凶悪すぎて使えません(笑)』


 そう表示された。


「り、リーダーの表情が怖くてPVに向かなかったって」

「せ、先輩? 落ち込まなくていいと思うっすよ?」

「そ、そうね。映っていない映像は問題ないんだからいいんじゃない?」


 三人は必死に笑いを堪えているのがわかる。

 なので俺はニッコリと優しい笑みをイメージして言う。


「笑っていいんだぞ?」

「「「なら遠慮なく」」」


 一気に笑う三人に対して俺はしばらく優しく微笑むのであった。

 ちなみに異世界組のコメントとしては、戦闘に関しては問題は現時点ではないという。

 ありきたりな結果に終わったのであった。




 今日の一言

 もう少し、表情に気を使うか。


今回はこれで以上となります。

面白いと思って頂ければ感想、評価、ブックマーク等よろしくお願いします。

これからも本作をどうかよろしくお願いします。

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