いつも通りになれない日
日にちが開いてしまいました。
スミマセン!!
やっと更新できましたので、読んでいただけたら幸いです。
「6年目、だよね」
「6年目だな」
「6年目ー」
「・・・・・・」
「そうだね、だって」
「「・・・(だからなぜ分かる)・・・」」
ああ、いつもの通りだ。
おれは何となくそう思った
ここは放課後の図書室。今俺たちは昨日由香から聞いた話を日向と真里菜に話している。
「で、どうするのこれ」
日向が目の前にある雑誌の記事と一冊の本をじっと見ていった。
真里菜は先日由香が見つけてきた古びた本をじっと読みこんでいる。
「分からないっ」
そしてなぜか自身満々な様子で言い張る由香。
「だと思うよ」
日向はそれを分かっていたかのように、そんな由香を意に反さぬ様子で流していた。
俺は雑誌の記事であろう冊子を摘み上げる。
「そもそもここに書かれていることを鵜呑みにしていいのかもわからない。」
俺の言葉に真里菜が無言でうなずく。俺は続けた。
「ただ問題なのが6年目ってことだ。これは数字が明確になってる。さらに今年はまさにその6年目なんだ。これに信憑性があるかどうかはよく分からないが、何かあった後じゃどうしようもできない。でも、何をしようにもこれじゃ、情報量が少なすぎる」
「だよねー、俺的にはできることがあるかっていうところから疑問ではあるけど」
日向は苦笑しながら呟く。
「まあ、それもそうだけどな」
俺も、全く日向に賛同できる。が、
「そんなの、分からないぞ?」
俺は「だろ?」と笑った。
「蓮も由香と同じでよく分からないものに興味を持つよね」
日向は肩をすくめた。由香と同じだというのにはあまりいい気はしないが、間違っていはいない。だから敢えてそこは訂正しない。またここで意味のない話題を広げても、また由香が変につっかかてくるだけだ。
「え、日向それどういうこと」
とまあ、無駄な気づかいするほうが無駄だったようだが。
「そこは、いま重要じゃないぞ、由香」
「えー、だって、私にとっては聞き逃せないセリフだったよー?」
「どうでもいいだろうが」
「よくないね」
「ったく、お前はそんなに俺と似た者同士がいやか」
「そりゃ、もちろん」
「ふん、かわいくねえな」
「誰がよ、蓮だってもう少し素直だったら可愛げあるのになー」
「「・・・・・・・・・ていうかさ/つかさ」」
「「可愛いって言われても嬉しくないよ/ねぇよ・・・・・・・・あ」」
「やっぱ、似た者同士じゃん」
「・・・・・・・・(コク)」
俺たちは、ギュンッと顔を日向たちのほうへ向けて、全力で否定した。
「「全然似てない!!」」
「室内ではお静かにっ」
そこでとうとう先生からの叱りの声があがった。
俺たちは慌てて頭を下げる。
「「す、すみません」」
先生はやれやれと溜息をつきカウンターに戻っていった。
「あははは、怒られちゃったね」
日向は「バカだなあ」といって笑った。
「くっ・・・・・・・・たく、真似するなよ」
「っ、そっちこそ」
俺と由香はお互いににらみ合う。
「ちょっと、そのままいがみ合っていたら話は進まないよ?室内ではお静かに、だからね?」
日向がなだめる。
「・・・・・・ふん」
「・・・・・・・・むう」
「ふふ、じゃあ話を進めよう」
日向は俺たちの状況を面白そうに眺めていた。
確かに、俺と由香は変なところで似た者同士だと思う。まあ、それがもともとの性格のせいなのか、昔から一緒にいたせいなのかはわからないが。
「とにかく、情報は足りないし、これがホントのことかもわからない。このままじゃ、出来ることだって見つかりっこないし、とりあえず情報収集ってとこが一番無難だよね。でも、町の人とかはともかく、先生が教えてくれるかは微妙だなぁ」
「そうだな」
俺は相槌を打つ。
「じゃあ、二手に分かれない?私と真里菜は最高塔でもう少し情報を探してみる、二人はいろんな人から話を聞いてみればいいんじゃないかな?」
由香が提案した。
「ああ、そうしよう。そのほうが効率いいしな」
「そうだね」
「・・・・・・・・・・うん」
やっと本から顔を上げた真里菜も合図地を打った。俺は真里菜の声を今日初めて聞いた気がした。
「あ、真里菜っち!やっと話してくれた―」
それはどうやら由香も同じだったようだ。
「・・・・・・・・・・・・ごめ」
「いいよー!真里菜っちの声は私にとって癒しだし、たまに聞けるからご褒美感あるし!そんな真里菜が大好きだし!あ、でも、ちょっと寂しかったから、やっぱぎゅー!」
由香はそういって真里菜に抱きついた。
「・・・・・・・・・・ゆか、おも、いよ」
「えー」
「ほらほら、由香どいてあげて。真里菜に体重かけ過ぎだよ」
「うー」
ごねる由香の頭を真里菜がポンポンと優しく手を置いた。そして微かに微笑む。
「うぅ、分かったよ、真里菜」
「まさに以心伝心だね、由香。女子同士の友情ってやつ?」
「日向、多分それお前が言うようなセリフじゃないと思うぞ」
「あれ?」
「その様子じゃ、自分の凄さに気づいてねぇな」
「全くだよ。まあ、女子の友情だって負けてないけどねー」
「・・・・・・・・・・うん、負けてない、友情はかたい」
「もう、不意打ちだよ、そんな嬉しいこと言うの」
「お前、真里菜相手だと人変わるよな」
「何よ、蓮」
「別に」
「なになに、羨ましいのか」
「んなわけねぇだろ」
「おーい、なんだかさっきみたいな雰囲気になってるよ?まーた怒られちゃうって」
「分かってるよ」
「だーいじょうぶだって、相変わらず心配性だなぁ」
由香は、ひらひらと手を振った。
「二人はどうしてもなぁ、何か言わないと心配で」
うーん、と日向は頭をかしげる
「・・・・・・でも、それが日向のいいところ」
「ありがとう、真里菜。なんだか照れるよ」
日向は頭をかいた。
ガラガラガラ・・・・
そこで図書室のドアが誰かが入ってきた。
「あ、お前たちまだ残ってたのか」
「堀内先生!あれ、先生は何しに?」
入ってきたのは、堀内雄大という男教師だった。ルックスがよく、人当たりもいいため、男子生徒にも女子生徒にも人気がある。
「ああ、俺もたまにだけど本を借りに来ているんだ。この学校の図書室は本の種類が豊富で飽きないからな」
「へえ、そうだったんですか。先生本が好きなんですね」
「意外か?」
「いえ、言われてみればそんな感じはします」
「はは、そうか。ところで、お前たちは何してたんだ?」
「ああ、それは・・・・・」
「先生、これ見てくださいよ!私昨日こんなもの見つけて、みんなにも話していたところなんです。気になる内容だったから、どうしてもこれが何なのか知りたくて・・・」
「さえぎるなよ・・」
俺は小さく溜息をついた。
「ん?どれだ?・・・・ああ、これか・・・」
「え、先生知ってるんですか!?」
日向が身を乗り出す。
「知ってるも何も、俺6年前この学校にいたんだよ」
「え、でも先生が正式に先生になったのって23歳なんじゃないんですか?6年前って先生20さいですよ?」
「ああ、それはそうだが、実は俺が大学生の時、丁度この学校に実習で来たことがあってね。だから知ってるんだ」
「え、そうだったんですか!」
「ああ、うん。でも、これ学校の機密情報みたいなものなんだけど」
「そうなんですか?でもそれって、実習生である大学生に知られていいものなんです?」
「実はね、この学校はほかの学校と違うんだ」
「へぇ?」
俺は、少し興味がわいた。
「この学校に実習に来る学生はね、先生の資格を取ったらこの学校に就職が決まったも同然で来てるんだ。俺もその一人だったってわけだよ。で、そこに書かれていることもその場で見せてもらったんだ。ほかの学校に就職するわけじゃなくなってるんだから、自分たちの手元で学生の面倒が見れるからそこに書かれていることが変に広まる心配もないしね。」
「そうなんですか!・・・・・・というか、なんて学校なんだよ、ここ」
思わず日向が心の声を漏らす。堀内先生は少し苦笑した。
「まあ、設備はそろってるし、先生方も良い方ばっかりだから、いい学校だと俺は思うよ。俺だってここに就職できるって聞いた時には断る理由もなかったし。そういうきちんとした学校である上に、あんなことを引き受けてくれる学校なんだからなぁ、そりゃ特別扱いでもしなきゃ割に合わないだろ」
「あんなこと、ですか?もし、良かったら俺たちに教えていただけませんか、先生」
次は俺が質問する。
「うーん、そうだなあ、でも君たちはもうそれを見つけちゃったわけだし、教えてもいいかな。まあ、俺が教えなくたっていずれ知るんだろうけど。」
「じゃあ、私たち消えちゃうってこと!?」
由香が激しく動揺しながら言った。すると堀内先生は笑って言った。
「いやいや、そんなんじゃないよ。君たちは・・・・なんていうのかな。使命?を持っているんだよ」
「・・・・・・・・・使命・・・?」
真里菜が小さく首をかしげる。
「使命、ですか?」
俺も真里菜に続けた。
「ああ、使命だ。詳しくいうと、6年に一度に生まれる子供たちの中に特別な子供たちがいてね、その子供たちは、この学校に集められるんだ。つまり君たちのこと。だから、君たちはある程度、中学校で縦社会いっていうものを学んだら、違う学校に移るんだよ。君たちの能力にあった学校にね」
「・・・・・なんですか、それ。俺たちは、ほかの人たちとは違うってことですか?」
なんだか、疎外感を感じて俺の口調は少し強くなってしまっていた。堀内先生は少し慌てたように言った。
「ああ、嫌な気持ちにさせたんなら悪い。そうか、君たちはその時になるまで教えられないのか、特別な力を持ってるんだってこと。まあ、確かにあっちに行ってからじゃないと能力がどんなものなのかわからないとは、聞いたことがある」
「あ、いや。別に気分を悪くしたわけではないです。少し驚いただけなので。すみません。気を遣わせてしまって」
「いや、いいんだよ。子供なんだしそれくらいのほうが。抱えこむのはよくないしね。こんなこと俺から言っちゃいけないことだということは分かっていたんだけど、君らどちらにしろ、そのこと誰かに聞きに行くつもりだったんだろ?」
「はい」
「だろうと思ったよ。まあでも、重く考えないでいいと思うよ」
「そう、ですか?」
「うん、それに・・・」
「それに?」
「もう一つカミングアウトするとね、」
先生は続けた。
「楽しいところだよ」
先生はそういって右手の人差し指を立てて口に当て、「秘密ね」と言って、カウンターへいってしまった。
そして、図書室のドアをあけ「暗くなる前に帰れよ」と言って先生はドアを閉めた。
「なーんか、いろいろ一度にほとんど分かっちゃったね」
由香がポツリと呟いた。
「ああ、そうだな」
俺も、うなずく。
「でもさ、」
由香は俺のほうに向きなおって明るく言った。
「ちょっと、わくわくしない?自分たちは何かの力をもってて、必要とされてて。どっかの異世界にでも飛び込む気分だよ。面白そうじゃん。私たちだけしか歩めない人生ってもんがあるってことだよ。ちょーラッキーじゃん!」
由香は好奇心いっぱいの満面の笑顔を俺たちに向けた。
「さすがだね、由香。由香のポジティブ思考には感心するよ。こっちまで引き込まれるくらいの勢いだからね」
「・・・・・・・・うん、すごい。だから由香は人に好かれる」
「えへへ、」
「ったく、楽観的すぎるのもどうかと思うけどな」
俺はこの日何回目かの溜息をついた。
が、俺も毎回由香の笑顔に救われているのは、認めざるをえない事実だった。
そして、自然と笑顔になれる。それがこいつのいいところだろうなと、思うのだ。口には出したこともないが。
俺は顔を上げ、笑って言った。
「帰るか」
「うん!!」
由香が元気に答える。
「そうだね」
「・・・・・・・・うん」
二人もうなずいた。
そして俺たちは、図書室を後にする。
のだが、俺と由香は気が付かなかった。
日向が少し暗い顔をしていたこと、真里菜がそれに気づいていたことに。
でも、その日の帰り道には、明るい声がこだましていた。
いつも通りで、いつも通りではない帰り道。
新たな事実。俺たちの未来。
それを知ってもなお俺は、今この時間はまだ、いつも通りだと思った。
ありがとうございました。
次話もよろしくお願いいたします!