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「レイシア。お前の態度に不満を抱いているものがいるのは分かっているのか?」
「あら、カイザー。それが?」
カイザーは、レイシアの言葉に内心溜息を吐く。
元々傭兵の出であり、レイシアを主君とすることに定めたカイザー。彼は正直言ってその見た目通り、脳筋である。難しいことはあまり考えない豪快な男……。しかし、主君と定めたレイシアがそれを超える、未知なる領域で脳筋で豪快で、どうしようもないほどに自分勝手な人間だからこそ、カイザーは頭を使う側に回ったと言えるのかもしれない。
「……このままだと折角人を集めても反感を持たれ、レイシアが王に相応しくないと言うものがいるかもしれないだろう? そういう声が大きくなったらレイシアも困るんじゃないか」
「いいえ、困らないわ」
カイザーは、何とかレイシアという少女に妥協してほしいと思っている。
レイシアが我が道を行くのは、性格上仕方がない。そもそも自分勝手なレイシアに惹かれた身としてみれば、そういうレイシアを完全に止められなどしない。それでも王として立つことを望むのならば、民の意見を聞いて欲しいと思っている。
国とはすなわち、民である。
結局のところ、王様一人がいたところで国にはなりえない。王というものは、多くの人々に支えられていて、その民の声というのは大変重要である。
カイザーは少なくともそう思っている。
けれど、レイシアの思っていることはそれとは異なるのだろう。
「カイザー。私は自分が納得する言葉なら、私の民の言葉を聞くわ。それが合理的だと思ったら、私の目指す国がそこにあるのだと思ったら。――でもカイザー。貴方の言葉を私は聞かないわ。だって、それは私が目指すものじゃないもの」
レイシアはただ国を作りたいわけではない。本当にただ王になりたいのならば、ラインガルの復興を目指すものたちの元へ行き、傀儡の王になることだって出来る。国を作りたいというだけならば、別の方法でも、やりようがある。
レイシアが目指すのは、そういうものではない。
民の意見に左右され過ぎるような国でもなく、滅ぶことのないような最強の国を作りたい。それが彼女の望みである。
そしてその国の目指す国の在り方は、そういう民の不満を聞く国ではない。
「私の目指す国は、ただの国じゃないのよ。何処よりも強く、どこよりも生き残る国。そして歴史に名を残すような国家。それを作るのに民は必要だけど、民の不満ばかりを改善していくための国家を作るつもりはないもの」
――レイシアはそう言い切った。
歴史に名を残す国家。最強として名をのこす国。それは決して民に優しすぎる国ではない。民に寄り添うような国ではない。
そんなものをレイシアは望んでいないから。
「私が目指すのは所謂独裁国家だもの。民に寄り添うつもりは、少しはあるけれど……まぁ、そういう国ではないわ。私は私についてきてもらうことを第一にしているのよ。私の言うことを聞いて、私の手足となる民」
「それはいい。……ただあまりにも急速にやりすぎると反乱がおこるだろう」
「あらあら、アキも心配していたけど。うちの男たちは心配性すぎるわ。その時はその時なのよ。それで負けるようならば私はそれまでの人間だったっていうだけよ。まだ小さなこの共同体も纏められないようじゃ、私は国など作れないでしょうね。反乱も、反論もすべて真正面から受け止めて蹴散らせばいいの。それだけの話じゃない」
反乱がおこることをレイシアは恐れていない。そして起こってそこに何かしらの被害があったとしてもレイシアはそれもどうでもいいとさえ思っている。
真正面から受け止めて、蹴散らして、そして制圧する――。レイシアはそう思っている。
カイザーはレイシアの言葉に、息をのみ、口を閉ざした。
レイシアという存在が、その意志を全く変えないというのが分かるから。
「……分かった。しかし、レイシア。俺がそれを止めようとすることは自由か?」
「そうね。別にカイザーがどうしようとも、それは自由よ。その結果どうなろうとも知ったこっちゃないけどね。私も私で自由にするわ」
「……分かった」
「そしてカイザーがそれを止められずに、私に向かってくるものがいるのならば私は問答無用でそれをどうにかするわ。思いっきりぶちのめして、いいように使って、見せしめにするの。私が目指すのは、そういう国だから」
レイシアの言葉に、カイザーは頷いた。
さて、カイザーがその反乱を止められるのか否か、それはまだ誰にも分からないこと。
カイザーが止めることが出来ても、出来なくても――どちらでもレイシアには良かったのだ。どちらに転んでも、自分がやりたいようにレイシアは動くのみ。




