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レイシアと霧夜は、レアシリヤに戻ってきた。
レイシアと霧夜が戻ってきた時に、既にレイシアたちが勧誘した者達はそこにいた。もちろん、全員というわけではない。キレイドアと呼ばれる地はそれだけ過酷であり、そこにたどり着くことが出来なかった人は当然、いた。途中で亡くなった者も多いが、それも当然のことである。
それでもなんとかこの地にたどり着いた者は、何かを乗り越えたものの力強さがそこにはあった。このキレイドアにたどり着くというだけでも、当たり前の日常をただ過ごしてきた彼らがキレイドアの地までやってきたというだけでも大きな挑戦であったと言えるのだ。
――この土地にたどり着いた者たちはそれはもう驚いたらしい。
レイシアが言っていたことが本当だったのだと驚き、この場所で逞しく生きていることに驚いたという。そして最も驚いたのは、レイシアが戻ってきて、霧夜のことを知った時だろうか。
キレイドアというこの土地で生きているというだけでも驚愕だが、それよりも『魔剣』を、それも《災厄の魔剣》と呼ばれる恐ろしい『魔剣』を所有していること。そして当たり前のように国作りに関わらせようとしていることにも驚いているようだ。
霧夜という存在がこの場所で当たり前のように受け入れられ、当たり前のようにレイシアの手によって国作りに関わらされている。
それは驚くべき事実なのだ。
普通なら『魔剣』を手にしようとは思わない。
普通なら『魔剣』を国政に関わらせようなどとは思わない。
だけれどこの場所ではそれが当たり前だ。この場所を動かしているレイシアがそれを望んでいるから。
「アキ、あんた、何ぼーっとしているのよ。ただたてかけられているだけだとつまらないでしょう?」
《あのなぁ、俺はあくまで武器だぞ。誰にも話しかけられることなくただ存在しているなんて今までよくあったことなんだよ。別にそれに対して何かを思ったりはしねぇよ》
「ふぅん。武器ってつまらなさそうね?」
《安心しろ。絶対お前は武器になんてならないだろうからこんな退屈な目にはならないだろう。それに国を作って女王になるっていうなら、退屈とは無縁だろうな》
「そうね。私には無理だわ! アキはその辺達観しているわよね」
霧夜は意思があろうともあくまで『魔剣』である。武器でしかない。だからこそ長い間放置されても気にしないし、『魔剣』としての生は終わりが見えないからこそ少しぐらい時間の流れがゆっくりでも気にしない。
愉快犯なので、何か気になることがあれば行動的にもなるが、それ以外では基本的に喋らない。そもそもの話、レイシアが所有者になるまではこうして会話を交わすこともしていなかったので、こうして当たり前に喋れている状況が稀なのである。
(……でもまぁ、レイシアが所有者になって、レイシアのせいでこれだけ喋るのが当たり前になって、『魔剣』になってから一番行動的になっているから、もしレイシアが亡くなる時が来ても今まで通りってわけにはいかないだろうな)
――霧夜は今まで喋らないことに慣れていた。此処まで自我を露にして過ごしたことなんてなかった。今ではそれが当たり前だから、将来、自我を喋る『魔剣』を受け入れる者たちがいなくなったとしても、昔とは違う姿を見せるだろうとは確信していた。
レイシアは霧夜から話を聞いても、そこまで深く関心を持たない。だから話を軽く聞いた後は、すぐその場を離れた。
レイシアは率先して新しくこの場所にやってきた者たち、レイシアが勧誘した者たちがこの場所に慣れるようにと率先して動いている。
本人曰く、「国民を暮らしやすくするのは女王として当然でしょ?」などと当たり前のように言っていた。この場所に国をつくることを確信している――そういう力強い瞳が、その場所で暮らす人々の気持ちを高ぶらせるのだろう。
そのカリスマ性を霧夜は素直に凄いと思っている。
(――ここも人が増えて、レイシアに心酔している連中も増えてきている。これだけの数がいてレイシアに心酔している者しかいないというのがある意味おかしいよな。そのうち人が増えればレイシアに反感を持つ者も出てくるだろう。レイシアは自分が女王になるつもりで、その女王の地位を誰かに渡す気は全くなりそうだけど……。レイシアはどうするだろうか。あいつのことだから全く悩みもせずに対応していきそうだけど。反発する反乱分子は躊躇いなく殺すだろうし。まぁ、俺は人の魂をどんどん喰えるならそれはそれで嬉しいけど)
レイシアは建物の壁に立てかけられたまま、その場所を見ている。その場所で生きている人々を見ながら、そんな思考をしている。
あくまで『魔剣』としての、人ならざる者の思考。
霧夜はこれからそういうレイシアに反発するものたちが増えて行けば、どんな行動をするだろうかとそんなことを考えて楽し気に心の中で笑う。
――最も例えレイシアが国民に反発された場合も「面白いから」という理由で霧夜はレイシアに使われるだろう。




