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「彼らはこのあたりを治めているならず者の集団です。彼らは自分たちに逆らう者を許しません」
「まぁ、そうなの。逆らうものを許さない思想は分かるし、力があるのは良いことだけれども、ぶつかった女性をどうにかしようとして使うのはかっこよくない奴らね」
レイシアは、女性の言葉にそんな持論を口にする。
ラインガルの姫であったレイシアは、その思想に染まっているのもあり、力があるのは良いことだと思っている。誰よりも強くなり、それでいて最強国家をつくることを目標にしているレイシアは、逆らうものを許さない思想も分かる。
けれどもそれをぶつかってきたからという理由だけで使うのはカッコ悪いと思っていた。
「貴方は……不思議な人ですね。でもどうするのですか。これでもう目をつけられてしまいましたよ。シュガードファミリーに」
「つぶすでもいいし、逃げるでもいいわね。貴方はどうしたい?」
レイシアはその位簡単だとでもいうように言い切った。レイシアは自由である。普通、人は何らかの柵があるものである。何らかの要因があって、動けないことが多い。だけれどレイシアにはそんなものはない。
何があったとしても、レイシアは自分がやりたいことをやるだろう。例えば誰かが人質に取られても、その行動で何か周りが大変な目にあおうとも――そんなものはレイシアには関係ない。
「……貴方は、何気ないような態度で凄いことを言うのね。冗談みたいなことを」
「あら、冗談じゃないわ。やろうと思えば、あんなものをつぶすことぐらい私には出来るわよ。貴方が信じるか信じないかは別にしてね。貴方がどうしたいか私に言わなかったとしても私はあいつらが気に食わないから突っかかってくるなら、つぶすわよ」
結局のところ、レイシアの中では気に食わないからどうにでもする気である。最も突っかかってこないならそのまま放置することもあるだろうが。
(本当に突拍子もないことを言っているように見えるけれど、レイシアにとっては簡単に出来る事なんだよな。こいつにとっては自分が口にしたことは何でもできることなんだ。出来ないなんて全くは思っていない。そして実際にやり遂げる。本当に……加護持ちとはいえ、ただの人間の癖に思いっきりが良すぎるんだよな)
霧夜はそんなことを考えながら、特に声をかけることもない。
レイシアがやる気に満ちているのならば、止めても無駄だと思っているからかもしれない。ついでに言えば、最近レイシアに使われることで、人間だった時のことをよく思い出している。その人間だった時の感覚からしてみれば、女性を連れ去ろうとするのは褒められるものではないのだから。
「――ほ、本気ですか?」
「本気よ。本気。ねぇ、貴方はどうしたい?」
「わ、私は……彼らがいない方が嬉しいけれど……、シュガードファミリーがいることで良いこともあるの。ならず者だし、ああいう事はよくあるけれど……シュガードファミリーのおかげでこの街は助かっている面もあるから」
「ふぅん。そういう面があるから、大変な目にあっても皆黙認しているってわけね」
レイシアは興味津々といった様子である。結局の所、そういう一般的に言えば悪い者でもいなければ困ったりもするものである。平和に見える場所でもすくなからずの闇はあるものであるものである。
「でもこのままでは破綻するだけね。別にこの街が破綻することは私には関係はないけれど、こうして出会ったのも何かの縁だもの。貴方どうしたい? あいつらをつぶせないならつぶせないでもいいけど、それなら新しい場所に住まいたいとかない? それだったら私の所に来てもいいわよ」
「え、えっと?」
「というか、貴方も目をつけられたってことよね? だったら一緒に私と来た方がきっといいわよ。いいでしょう? 来なさいよ」
レイシアは半ば強制的な言い方をしているが、レイシアの言うことももっともである。結局の所、シュガードファミリーに目をつけられているからこそこの場所に留まり続けることは難しいだろう。万が一、向こうが忘れてくれたとしても――何かあった時にはまた目を付けられるだけである。
「……はい」
そして結局の所、レイシアの力強さに頷いてしまうのであった。詳しく話を聞いていなくても、レイシアがあまりにも自然に、当たり前のように誘うから。それに頷いてしまうのである。
「じゃあ私が国を作る場所にたどり着きなさい。場所は此処だから」
「え、はい」
「たどり着けなかったらそれはそれよ。たどり着けたら、今より刺激的な日々をあげるわよ。ひとまずこの街に残ったままは危険よね。此処から去る?」
「え、はい」
そのままレイシアはその女性をシュガードファミリーの影響があるエリアから連れ出すのであった。
ちなみにレイシアが即座に移動したからだろうか、そのシュガードファミリーに接触されることはなかった。
《レイシア、つぶさなかったんだな。つぶすかと思ったのに》
「向こうからきたらつぶすつもりだったけれど、まぁ、いいかなって」
《本当に自由だな》
自由気ままなレイシアはそのまま亡国――ラインガルのあった大陸を動き回わる。




