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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第五章 魔剣と少女と国民探し

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「何をやっているの?」

 レイシアはそう言いながら、男たちと女性の間に割り込む。

 見て見ぬふりをしていた周りは、レイシアがそれに関わったことに驚いているようだ。声をかけられた女性は助かったという表情をしながらも、心配そうな目もしている。

「あぁ? なんだ、お前」

「嬢ちゃんもいい顔しているじゃないか。この女の代わりに嬢ちゃんがなるか?」

「何の話よ? 私はただ面白そうだから話しかけたのよ。何か理由でもあるのかしら?」

 レイシアはあくまで男たちに対してそう言い切った。

 力があるものが力ないものに何かするのはかっこ悪いと思っている。それでもレイシアはこの世界がそう言う綺麗ごとで終わるとは思っていない。――理由があるなら、男たちが女性に絡むこともあるだろう。

 それに男たちの言い草からすると、女性にも少しの非はある可能性もあった。しかし力づくで連れて行こうとするのはどうかと思うが。

「この女はなぁ、兄貴にぶつかったんだよ!! だから代わりに良いことをしてもらおうかと思ってなぁ」

 などと口にする若い男。兄貴というのは、この五名ほどの男たちの中で、一番年上の男性の事らしい。この男たちはどうやら一人を兄貴と慕って、つるんでいるらしかった。

 レイシアは思ったよりもつまらなく、特に意味もない理由で女性に絡んでいたのを知ってへーという気持ちになった。

「なんとも情けない理由ね? 良い男ならば、そのくらいのこと見逃すのがかっこいいわよ? 今の貴方達、凄くかっこ悪いわ」

 レイシアは全くの躊躇いもなしにそう言い切る。

 誰にでも自分の意見を言い切るレイシア。背中に背負われている霧夜は、やれやれといった気持ちだが、レイシアを止める気もない。出来れば目立たない方がいい。それは事実だが、もうレイシアは関わる気満々で、止めても無駄なのを知っているので、霧夜は諦めていた。

「かっこ悪い? 兄貴を誰だと思っている!! 兄貴にぶつかったなら詫びてもらう必要が――」

「煩いわね。私が気に食わないの。だから止めているだけよ。貴方が誰であろうが、私には関係ないもの」

 流石にここで「私は女王になる女だ」というレイシアの本音は口にしなかった。

 そんなことをこの場で言ったら大変なことになるのはレイシアだってわかっているのである。幾ら脳筋なレイシアでもその位の分別はある。

 レイシアの言葉に男たちは逆上した様子を浮かべる。

 周りはざわめく。

 目の前にいる男たちは、よっぽどこの街で有名なのだろう。しかしそんなことレイシアには関係ない。

「――あぁ? お前も連れて行ってやろうか」

「やれるものなら、やってみなさい」

 レイシアはただそう告げる。

 そして向かってくる男たち。ナイフを持っているものもいる。よっぽどこの地域は荒れているのだろう。それでも目の前の男たちは、レイシアからしてみれば小物である。

 一般人からしてみれば、大きな力を持っている存在かもしれないが――、国を作ろうとしているレイシアと『魔剣』である霧夜からしてみれば小さな存在である。

 向かってくるものたちをレイシアは、霧夜を抜きもせずに気絶させ、女性を連れてそのままそこから去った。



 そしてレイシアは、女性の手を引いて人通りのない方向へ向かった。





「とりあえず逃げれたわね!!」

「……た、助けてくださってありがとうございます。で、でも……私を助けてしまったら……」

「関係ないわよ。それで、あいつらはなんなの?」

「し、知らずに助けたんですか!?」

 その栗色の髪を持つ、大人しめな女性だった。だけれども、その女性はレイシアの言葉に驚いたように、大きな声をあげた。

 女性にとってみれば、レイシアが何の事情も知らずに自分の事を助けたことが衝撃だったのだろう。

 その人気が全くない裏路地で、レイシアは女性と向き合う。

「ええ。だって私には関係ないもの」

「か、関係ないって……」

「ねぇ、それであいつらは? 私はどうにでもするわよ。やろうと思えば、何だって出来るもの。だからこの手を取りなさい!」

 聞いていた霧夜は新手の宗教か何かだろうかと思ってしまった。

 しかしレイシアの言葉はやっぱり真っ直ぐで、そして人を惹きつける何かがある。

(やっぱりレイシアは、人を惹きつけるカリスマ性がある。どれだけ現実味がない言葉だったとしても、レイシアが言うのなら本当のことのように思える。例えば、俺が人型で同じことを言ったとしても周りの心を動かすことはあまりできないだろう。だからこそ、レイシアは面白いんだけどな)

 霧夜は、レイシアと女性のやり取りを聞きながら愉快で仕方がなかった。

 ――レイシアの言葉に、レイシアが何者なのか、レイシアが何を考えているのか、レイシアがどのように先ほどの男たちをどうするか、それを一切知らないのに、頷いた。

 それはあまりにもレイシアという少女が魅力的だったからだろう。




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