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レイシアたちは順調に国民集めを行っていた。
上手く行きすぎて、レイシアはご機嫌であった。自身に対して、どうしてそこまで自信があるのだろうかと人によっては思うような――、そんな大きな自信がレイシアにはありありと現れていた。
『魔剣』として生きているとはいえ、霧夜はどちらかというと常識を持ち合わせていて、一般人としての思考も持っているので、どちらかというと心配していた。
(……このまま、順当にいくか? そんなことはありえないだろうな。大抵、物事というのはこういう風に順調に進んでいる時にこけるのだと思う。レイシアがこれだけ調子に乗っているということは余計に何か起きそうな感じがするしな)
そんなことを考えている霧夜は、レイシアに向かって声をかける。
《レイシア、上手くいきすぎたからとそのまま上手くいっていくと思うなよ? 油断した時が一番駄目なんだからな?》
「アキは煩いわね。なんていうの? 母親みたいに細かいわ。それか継母みたいな」
《いや、俺は男だし、母親みたいと言われても嬉しくないし》
「男ねぇ、アキって子供とかに煩そうよね」
《いや、俺は親になったことねぇよ。普通にレイシアより子供だったんだからな?》
「へぇ、アキって年下なの?」
《人間だった頃の話だからな? 今は『魔剣』としての生が長いからレイシアよりは長生きって言えるだろう》
今のレイシアよりも年下だった霧夜は、『魔剣』になった。昔の話を少し話すと霧夜はちょっと不思議な気持ちになった。好んでレイシアに自分のことを語ろうとは思わない。でも確かに一緒に過ごしていればいるほど、霧夜とレイシアは互いを知っていっているのだと言えるだろう。
そんなこんな会話をしながらレイシアたちは港街へと到着する。
キレイドアから大分遠い位置までやってきたものである。レイシアと霧夜は此処から違う大陸にまでいってしまおうと考えていた。
こういう港街の船だと、身分を深く気にしない者の方が多い。それだけ人の出入りが大きいと言えるだろう。
さてそんな場所でレイシアと霧夜は引き続き国民集めをしようとしていた。
宿を取り、一息つく。
レイシアは体力があるので、すぐに霧夜を背に背負ってずかずかと歩いていく。
一切、レイシアは戸惑いも不安も見せずに進んでいくのだ。一切、心のブレというのが彼女にはない。彼女は信じたものを、100%信じている。自分の行いに間違いがあるなどとは考えない。……ある意味最高のポジティブともいえるのかもしれない。
ずかずかと歩いているレイシアは、怒鳴り声を聞いた。
「お前たちなど働かせるわけがないだろう」
そんな声だ。
そちらに視線を向ければ、背の小さな集団がいた。大人にしては小さい。おそらく、人間以外の血が混ざっているのだろうことが想像できる。
レイシアは興味を惹かれた様子だ。
霧夜もそちらの声を聞く。
《なぁ、あれってドワーフってやつか?》
「混血じゃないかしら」
ちなみにこんな会話は言葉には出していない。
《ドワーフは、なんというか俺が『魔剣』になりたての頃に一度関わった気がするが……、何だかあの頃は色々大変だったからあまり記憶にないんだよな。レイシアは?》
「私も遠目にしか見た事ないわ」
レイシアはそう答えながらマジマジと彼らを見ている。レイシアはその人間よりも背が低い存在たちに興味があるようだ。
レイシアは彼らの会話を聞く。
彼らはその背も相まって、興味をいただいている。
彼らのことを周りが注目している。その中には、嫌悪の目を向けているものも多い。
色んな種族が存在しているこの世界だが、見た目の差によってはこういう差別が行われることも多い。特に混血は迫害されることも多かったりするのである。
このキレイドアのある大陸は色んな種族が存在しているが、それでもこういう種族は珍しいものである。色々な種族がいようとも、その種族を差別しないわけでもない。同じ種族でも異なる点があれば、差別というものは少なからず行われたりもするのだ。
レイシアは思考する。
こういう種族は何が出来るだろうか。そしてこれだけの扱いをしているというのならば、居場所がないのではないか。
――そして何よりも面白いのではないか。
レイシアはそんな思いに口元を緩めた。
「――ねぇ、きっと楽しいわよね、アキ」
レイシアは小さな声で、今度は口に出してそう言った。その口元は楽しそうに歪んでいる。
《楽しいかもしれないが、ああいう種族を呼び込むのも色々大変じゃないか》
「それは竜人たちもいるわけだし、どういうのがいようといいわ。私は私を王としてくれるなら、どんな相手でも受け入れるわよ。そもそも、そういう種族の違いを気にする私ならアキを使わないわ」
《そりゃそうだな》
そもそもの話、剣なので種族とは言えないのかもしれないが、レイシアの作る国で一番特殊なのは『魔剣』である霧夜である。
レイシアは早速、怒鳴りつけられて落胆している彼らに近づいていくのであった。




