19
レイシアと霧夜は街を後にして、次の街へと向かっていく。
もうレイシアの頭には、もう暴れた街の事はない。レイシアはいつも前ばかりを向いていて、過去の事は気にしない。
そもそもレイシアが過去を振り返って、悩んでばかりの少女であったのならば、彼女はラインガル王国の面影を求めてさまよっていたことだろう。レイシアは過去を振り返らないからこそ、新しい国を作ろうとしているのだ。
「アキ、次はどうする?」
《とりあえず次の街に行って、集められそうな国民は集める。それでさっきの街よりも離れていたほうがいいだろうな。あまり派手にやると面倒なことになると思う》
「それはつまらないわ」
《そういうと思ったよ。とりあえず魔物退治を進めて、適当にお金稼ぎながら少し離れた場所まで行こうぜ。それはそれで楽しそうだろ?》
「そうね。それも楽しいかもしれないわ。でも私はもっともっと楽しくやりたいわ」
《ちょっとは我慢しろ。どちらにせよ、レアシリアの存在が知られたらレイシアが望むように息継ぎする間がないぐらいの忙しさになるんだから、いまぐらい我慢しろ》
道を歩くレイシア、その背に背負われている霧夜。二人はマイペースに会話を続けている。暑い日差しの中を黙々と歩き続ける。時折水分はとっているが、スピードを緩めることもなく、延々と歩き続けるだけの体力があることは見るものによっては驚きであろう。
レイシアは基本的に黙っていられないような人間である。そんな人間だからこそ、平穏というものを好まない。もっと面白いことがずっと起きてほしいと望んでいるレイシアを霧夜はなんとかなだめる。
霧夜の言葉を聞いて、レイシアはなんとか我慢をすることにする。レイシアも頭が悪いというわけではないので、納得をする。
「まぁ、いいわ。アキがそういうのならば我慢をするわよ。今は、準備期間ね。周りが私たちの存在を知ったらその利権を奪おうとするでしょう」
《だな。キレイドアで人が生活を出来るという実績を小さな村が持っていると知れば、そりゃあ奪おうとするだろうな。それで奪われれば、レイシアを信じてやってきた連中は殺されるか、奴隷になるかだな》
「そんなことにはさせないわ。私はあそこを大国にするのよ。どこよりも強く、誰もに恐れられ、畏怖する国にね。そしてその国のトップに私は立つの。それ以上の未来は認めないわ」
レイシアはいつでも、だれの前でもぶれない。レイシアと霧夜はいわば国を作るための初めての同士ともいえるべき関係であるが、レイシアと霧夜の関係はそんな単純なものでもなく、互いを信頼しあっているような関係ではない。彼らの関係は何処までも共犯者と言えるようなものである。
レイシアは霧夜に弱音などはきはしない。そもそもレイシアの心の中には、弱音なんてものはないのかもしれない。そう思えるだけの、それだけの心の強さを持ち合わせているのである。
《レイシアはなんというか、色々とずれていて、色々とおかしいよな。レイシアのような年頃の女でそんな風に言えるものなんて然う然う居ないだろう》
「あら、私は私よ。というか、私以上にアキの方がおかしいじゃない。アキは人間から『魔剣』になったのでしょう? そんな風な存在なんて他にはいないでしょう? というか、アキって、人間だった頃の年齢含めるともう何百年とか?」
《いや、俺は人間だった時、レイシアぐらいだったからそんなんじゃない》
「ふぅん。そうなのねぇ。面白いわね。私ももしかしたらこの後人じゃなくなったりするのかしら? そんな未来ももしかしたら来るかもしれないわね。でもそうね……私は人間として生きて、女王になって、そして名を馳せて死にたいわ」
レイシアは霧夜が同じ年ぐらいの頃に『魔剣』になったと知り、そんな風に答えた。
レイシアはあくまで人間として生き、女王として名を馳せ、そして死にたいとそんな風に言っていた。
そんな風にレイシアと霧夜は会話を交わしながら進んでいく。
幾つかの街を通り過ぎ、いくつかの街に寄る。寄った街では、少なくとも一人か二人かは国民として誘う。
大きな街になればなるほど、その場所に居場所がないような存在はいるのだ。そういう存在をピンポイントで狙い、レイシアは国民に誘っていく。
レイシアのカリスマ性が、レイシアの国の国民を増やしていくのだ。また、戦闘系の職業のものはもっと単純だ。強さというものに憧れるようなものであるならば、一度でもレイシアの圧倒的な戦い方を見れば、すぐについていくことを選ぶ。レイシアにはそれだけの強さと魅力がある――とそう霧夜は思う。
間違っても人間だったころの自分ならばそんなことを出来なかったと思うので、霧夜はレイシアの凄さを改めて実感するのである。
さて、順調に国民を少しずつ集めていたレイシアは、どうしても国民にしたいという人々に出会った。




