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街を治める家が浮浪児たちを攫おうとしている、という事実はレイシアが不機嫌になるのにも十分だった。
《レイシア、何でそんなに不機嫌なんだ?》
「どうしてって、そりゃ当然よ!! 長が下についているものを食い物にしているのは、どうかと思うもの!! そりゃあ、下についている人になめられてはいけないわよ。お父様とお母様はその優しさに足元を掬われたもの。でもそれはなめられないようにするというだけで、こうやって食い物にすることではないわ。
私の目指す王の姿は、民に強さを見せつけ、民を導き、民に怖れ敬われる王よ!!」
《そうか。まぁ、レイシアがどんな王を目指しているかは分かったけど、それで何で不機嫌になるんだ?》
「何でって、そりゃあ気に食わないのよ。ただ、気に食わないの!! ただむかつくから私はそういう街の長をぶちのめしたいの!!」
レイシアは宿の中でそんなことを言い放った。
どこまでも自己中心的な発言であるが、まぁ、それがレイシアという少女であった。
ちなみにレイシアは街をおさめる家が誘拐事件の糸を引いているというのを知って、すぐさま暴れようと思っていたのだが、霧夜に止められて一旦宿へと戻ったのであった。
霧夜としてもレイシアの憂さ晴らしのためにも正体を悟られないように暴れるのならば問題はないが、その前にひとまずジェラーラたち……レイシアの国の国民になることを選んだ存在をこの街から去らせるべきだろうと思った。
そんなわけで霧夜からの忠告の元、レイシアはジェラーラたちにレイシアの国を目指すように指示を出した。ひとまず色んな準備についてはこの街以外で行うようにと告げて、彼らをレイシアは送り出した。
少しずつ小分けして減っていく浮浪児たち。だけどこの街の人々は、浮浪児たちにそこまで関心はないので、勝手にいなくなった、勝手に死んだといったそういう認識するだけである。
ジェラーラは、「お姉様の国に必ず辿り着いて見せます」とそう誓っていた。その目を見ていると、霧夜もレイシアも少なからず彼女だけはキレイドアの中にある村へとたどり着くだろうとそんな風に確信したほどだった。
「さーて、アキ、大暴れしましょう」
《はいはい。レイシアの好きなようにしなよ。レイシアが大暴れしたってばれないなら、どれだけ暴れても俺は止めはしない。たまに憂さ晴らししないと、レイシアはもっと変なところで大暴れするだろうが》
「よく分かっているじゃない。だからやるわよ」
レイシアは不敵に笑ったかと思えば、霧夜を背に抱えて、宿を飛び出すのであった。
闇の中を移動するレイシア。一切の無駄な動きはせずに、動くレイシア。
レイシアはこの街をおさめているものの屋敷へと向かった。その屋敷は当然のように警備があつい。それでもレイシアと霧夜にとっては、どうにでもなるのである。
レイシアは霧夜と共にさらっと侵入し、屋敷の主の元へと向かう。途中でレイシアのことに気づいたものもいたが、全部気絶させて進んでいく。
レイシアは眠っている領主を見つける。すやすや眠る領主をたたき起こす。
「な……」
声をあげる領主からレイシアは、情報を聞き出す。浮浪児たちは、他の場所に売られていったようだ。もっと何か理由があるのかと思っていたが、なんともしょうもない理由であった。……領主は浮浪児のことは領民と思っていないようだ。
寧ろこの街に居るのにふさわしくないと思っているようだ。要らないと領主は思っているようだ。
ならば、レイシアは全部もらってしまおうかとそんな思いさえもわく。要らないなら、もらってしまおうと。
レイシアは領主から聞きたいことを聞いて、領主を痛めつけて、領主館から出ようとする。その時には警備のものたちが集まっていた。流石にレイシアが忍び込んでいたことは悟られていたのである。
さて、レイシアは、その向かってきた警備兵たちを、霧夜という『魔剣』を使って全員殺しつくした。レイシアという加護持ちの少女相手に、並の警備兵が束になっても敵うはずもないのである。
そんなわけでさっさと殺しつくしたレイシアは、霧夜と共にさらっと抜け出すのであった。
「霧夜、浮浪児いらないならもらいましょうよ!!」
《いや、全員は無理だろ。意趣返しするにしても、俺達の元へこない連中を全部街の外へ放出させるとか? そうしたほうがいいんじゃないか? この街は混乱に陥るだろうし。浮浪児とはいえ、街の一部になっている存在だからな》
「……まぁ、それもそうね。私についてこない連中もいるだろうし」
《そうだぞ。ちゃんとそのあたりを考えておかないと。ただ先導して街からいなくならせることぐらいはできるんじゃね? あの場所に住んでいると不幸になるとか、そんな風に噂を広めるとか》
「ふーん、まどろっこしいわね」
《どちらにせよ、領主の屋敷であれだけ派手にやったからこの場所が危険だとそんな噂は広められるだろうなぁ》
「とりあえず、浮浪児たちに工作して、その後はトンズラかましましょうか。この街でこれ以上国民が増やせないって言うならここにいる意味もないもの」
結局のところ、レイシアは浮浪児たちにずっと工作をしつづけることも面白くないと思ったのか、少しだけ工作をしてそのまま他の街にいくことにしたらしい。
レイシアは結構飽きっぽい性格なので、考えていた飽きたようだ。
霧夜は相変わらずだななどと思う。
レイシアはその後、浮浪児たちに工作をして一部を街の外に流出させ、街を後にするのであった。




