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レイシアと霧夜は、浮浪児たちを誘拐している誘拐犯のことを探っている。
霧夜から誘拐犯をとっちめるのは問題ないと許可をもらったレイシアはご機嫌である。レイシアは大人しくするのが苦手である。
どんな時でも暴れたいと思っているし、自分の好きなように動きたいと望んでいる。そんなレイシアにとって、この国民探しは楽しいけれど退屈だった。こそこそと動き回るのは性に合わない。
そんなレイシアの息抜きも込めて霧夜は誘拐犯をとっちめることを許可したわけである。
ちなみに
《忍者と言えば黒装束だよなぁ。なんか黒装束身に纏ってやらないか?》
などと霧夜は口にして、「逆にそれは目立つわよ」とレイシアに呆れられていた。
これだけ霧夜が楽しそうな様子を見ると、レイシアは霧夜にとってニンジャというものが特別だということを嫌でも理解する。
霧夜という存在は、自分のことをあまり語らない。——人間であったという過去をレイシアは知っているが、その当時の事を欠片も知らない。暁霧夜という元人間の魔剣は、あくまでも今を生きている。そんな霧夜が口にする過去に繋がるニンジャの話は、レイシアにとって面白かった。
《そうだよなぁ……。黒装束に金色の髪なんて目立つよな》
なんていって残念そうに言っていた霧夜に、何を残念がっているんだかとレイシアは思ってしまった。
さて、そんなわけで黒装束を纏わず、レイシアはニンジャとしてこそこそと誘拐犯のことを探ることにした。
加護持ちのレイシアと、『魔剣』である霧夜が本気で動けばどうなるかといえば、それはもう素晴らしい動きを見せる。
裏路地で浮浪児を誘拐しようとしたものを捕まえることに成功する。
レイシアは、フードを被り、仮面をつけている。顔を相手に悟られないようにする必要があるからだ。正体不明の男か女かも分からないものにものにとらわれ、誘拐犯は怯えていた。
その誘拐犯を拷問していく。相手が死のうが生きようがレイシアにとっても霧夜にとってもどうでもいいのでその情報を聞き出すための拷問は容赦がなかった。
ちなみにこんな少し怪しい恰好をしているのは、夜に誘拐犯を直接捕まえる時だけである。それ以外はもう少しこの街になじむような恰好をしている。
人の命が軽い世界なので、誘拐犯がなくなった所でそこまで気にするものは少ない。寧ろ一般人は誘拐犯がなくなることを喜ぶことだろう。
「んー、中々情報を知らないものが多いわね」
《そりゃそうだろ。下っ端にそんな重要な情報を与えるものは然う然ういないだろうな》
「つまらないわ。もっとド派手にしたいわ」
《もうちょっと自重しろって。ニンジャっていうのは正体不明だからこそ、良いものなんだ。正体不明で、裏でこっそり動き、それでいて行った結果だけが広まるとかそういうのこそがいいんだよ!!》
忍者ということを語る時だけ本当に霧夜は活舌でやる気満々である。やっぱりレイシアには、それが不思議な気持ちになってしまう。
誘拐の実行犯たちは次々とレイシアと霧夜の手によって、捕らえられ、殺されていった。
霧夜は元人間とは言え、本質は既に『魔剣』でしかないので、寧ろ人の魂を喰らえることに意気揚々としていた。幾ら常識人のような言動をしていようとも、暁霧夜と言う存在は人ならざるものである。
レイシアと霧夜の暗躍は続く。
日に日に、誘拐の実行犯たちに焦りが見え始めていた。上から何か言われているのだろうか、浮浪児たちを何としてでも誘拐しようとしている。どうしてそこまで浮浪児を誘拐しようとしているのか、それがレイシアには分からない。
誘拐するにしてもお金が欲しいというのならば、権力者の子供を攫った方がずっと効率が良い。浮浪児なんていなくなったところで誰も気にしない。そこまで考えたところで、だからこそだろうかと考える。誘拐した浮浪児を、消耗品のように扱っていると考えるべきだろうか。
そう言う風な思考に陥っているレイシアの前でまた誘拐が行われようとしている。もちろんだが、レイシアはそれを阻止する。加護持ちであるレイシアだからこそ、その誘拐犯のことをどうにか出来ているが、その誘拐の実行犯たちの強さは日に日に強くなっている。
邪魔する存在を殺すようにとでも言われているのかレイシアに向かってくるが、レイシアは軽くその男に勝利する。レイシアが浮浪児を助ければ、彼らはキラキラした目でレイシアのことを見つめているものだった。
自分の危機にかけつけてくれたヒーローとでも思っているのかもしれなかった。
「誰が、誘拐をしようとしているの」
「お前、女か……!!」
「だからなに? はやく答えなさい」
レイシアが声をかければ、男は忌々しそうにレイシアを見たものだ。
最初は口を割らなかった屈強な男も、レイシアと霧夜にいたぶられて、命乞いをし始める。
その情けない姿を見据え、またレイシアは「誰がやっているの?」と問いかけた。
――そして男は口を割る。
その男は誰が指示を出しているのか知っていたのだ。
その指示を出しているのはこの街を治める家だった。




