15
レイシアという少女は、何処までも自分のやることを疑わない。——自身の行動が間違っているなんて間違っても思わない。自分は正しいのだといつだって思っている。
そういう少女である。
だからこそ、浮浪児たちに対してもいつもの調子である。
今日も今日とて、レイシアは自由気ままに彼らを勧誘している。そんな中で事件は起きた。浮浪児たちを何の目的か攫おうとしていたものたちがいたのだ。
「私の国民に何をしているのよ」
そんな不遜な言葉と共にレイシアは、その人さらい犯を伸してしまっていた。
攫われそうになった少女――ジェラーラはそんなレイシアに驚く。毎日毎日謎の言葉と共に勧誘してきた不思議な女性が自分の事を助けてくれるだなんて思っていなかったのだ。
「大丈夫?」
「……何で、私を助けたの?」
「何でって、貴方が私の国の国民になるからじゃない!!」
貧困で、餓えている自分に対して、そんな物言いをするものは初めてであった。
ジェラーラは思わずその物言いに笑ってしまう。これだけ偉そうで、これだけ堂々としている人なんておかしいったらありゃしない。それでいて底辺をさ迷っているジェラーラからしてみれば、レイシアのような存在が眩しかった。
「――貴方はやっぱり変な人。どうしてそんなに自信満々なの?」
「どうしてって、何で私が自分の言葉に自信をもってはいけないの? 寧ろ、何故貴方はそんなに自信がないの? なんでも自信をもって堂々とやるべきよ。だってそれは自分自身で決めたことなのだから。他の誰かが否定したとしても、自分だけは自分の行動に自信を持たなければならないのよ。自分が自信をもってこそ、何事もついてくるわ。例えそれが今は叶っていないことだったとしても、自分のやることに誇りをもってやり続ければ必ず叶うわ。私は自分の夢を叶える気しかないもの」
――レイシアという少女は、何処までも真っ直ぐである。
なんでも自信をもってやるべきだと、レイシアは言う。自分自身で決めた事ならば躊躇わない方がいいとそんな風に言って、美しく笑う。その目は真っ直ぐで、自分の夢がかなわないことなど疑っていない。
――そんなレイシアが貧困している少女には眩しく見える。最初はなんて虚言を言う人だろうかと思っていたが、きっとこの人は本気で国がどうのこうの言っているのだと分かる。例え、それが嘘だったとしても、ジェラーラはこの人になら騙されてもいいのかなと絆されてきている。
その目が美しく、全くもってこれからのことを疑っていないから。
「……お姉さんは、変な人。でも眩しい。……私、お姉さんになら騙されてもいいかも」
「騙されてもって何よ? 私は騙す気なんて全くないのよ? 失礼しちゃうわ。貴方が私の国に来てくれるというのならば、ちゃんと国民として受け入れるわ。……でもそうね。私はすぐに国には戻らないわ。国民探しをしなければならないもの。だから貴方が私の国に来てくれるというのならば魔物除けを買って、向かってもらうことになるわ」
《ってレイシア、キレイドアまで一人で行かせるのは難しいだろう?」
「煩いわよ。アキ。この子一人だけで行かせるつもりはないわ。もっと此処で国民を探すのよ。この子一人だけで行かせるわけはないでしょう。複数人で行かせるわよ。こうなると、キレイドアへの伝令でもいないのが問題だわね。もう少し人手があったら迎えをよこすことも出来るのだけど」
《本当に無謀な奴だな……。キレイドアは危険地帯だからな。普通に行かせるのは難しいつーの。魔物除けがあろうとも厳しいだろうが》
「それでもいかせるのよ。だって私の国の国民になるんだから。それぐらい出来るわよね。それで、ジェラーラ。貴方は他に国民に成れそうな連中は知っているかしら?」
レイシアは霧夜と話していたかと思えば、ジェラーラを見つめてそんなことを言う。ジェラーラは突然始まった会話に戸惑いを見せている。——だけど、ジェラーラは、この不思議な少女、レイシアに魅了されてしまった。
この人になら騙されてもいいと、この人についていってみたいと、この人の夢を手伝ってみたいとそんな願望が芽生えてしまったのだ。
「――はい。何人もいます。お姉様、私が必ず、お姉様の力になる人を集めます」
気づけば、その力強い瞳に魅了されてしまったジェラーラはレイシアのことを自然とお姉様と呼んでいた。その呼び名が一番しっくりくる気がしたのだ。そしてお姉様という呼び名は、ジェラーラにとって一番しっくりくるレイシアの呼び名であった。
この人の期待に応えたい。
この人の望みを叶えたい。
そんな願望を胸に抱いてしまった。だから、ジェラーラはこのあたりにいる居場所のないものたちを、レイシアの前に差し出すことを決めた。
レイシアの国を作っているという言葉が本当かどうかも分からないのに、レイシアの態度に、言葉に――ジェラーラは気づいたら魅了されていたから。
《いや、もう本当こいつ人たらしの才能はあるよな》
レイシアに背負われたままの霧夜は思わずそう呟くのであった。




