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ルインベルを抜け、レイシアと霧夜はルーベに辿り着く。
ルーベの街は、ルインベルよりも住民たちの活気があふれている。とはいえ、相変わらず普通の街よりは、傭兵や冒険者が多く、治安は良くはないが。ルインベルの隣の街だというのもあって、レイシアはこの街でも指名手配のようにされている怖れも十分にある。
《レイシア、油断をするんじゃないぞ。一先ずは此処でレイシアが指名手配されていないかを確認したほうがいいだろう。ここで死亡したと思われているのならば、今後安心して国民探しを出来るだろう》
「それまでこそこそしたほうがいいの?」
《そうだな。なるべくそっちがいいだろう。……あとは下手に喋らないようにな。俺も人前では喋らないようにする。まぁ、俺からレイシアに語り掛けることは出来るけどな》
レイシアと霧夜がそんな会話をしているのは、宿の客室の中である、
レイシアが霧夜と初めて出会ったルインベルでは、傭兵や冒険者があふれかえっていたため宿がほとんど空いていなかった。このルーベの街も傭兵や冒険者がいるものの、ルインベルよりはそういう人々は少ない。ルインベルは外から来た人々の方が多いが、ルーベの街は住民の方が多い。ルインベルはキレイドアに最も隣接しているので、これだけ近い街同士でも街のありさまは違う。此処はルインベルへの中継点の一つである。
そんなわけでレイシアはルインベルよりも簡単に宿を取ることが出来、その宿の中でのんびりしているのだ。
レイシアとしてみれば、すぐにでも街を探索して面白いものを探したかった。しかし、霧夜に止められ、大人しくしている。まぁ、これだけ大人しくしているのは、以前ルインベルを訪れる前に散々探索をしたからというのもある。初めての街であったならば、レイシアはこんなに我慢が出来なかったかもしれない。
霧夜はこれから新しい街を訪れたらレイシアはどうなるのだろうかと、若干の不安を覚える。
「此処でも探す?」
《本格的に探すのはもっとルインベルから離れた場所でがいいだろうな。この街では偶然そういう人がいたら案内するぐらいはありかと思うが……、下手に勧誘しまくっても目立って大変だろうが。ただ問題は戦えない奴を勧誘する時だな。どうやってあのレアシリヤまで行ってもらうか……》
「その辺はどうにでもなるんじゃない? チュエリーだって行けたんだもの。行こうと思えば誰でも出来るわよ。いけないと、出来ないと思うからこそ無理なのよ。やる気さえあればどうにでもなるわ」
レイシアはそう言い切った。
ベッドの上に座って、足をぶらぶらさせながらそんなことを語るレイシアは、こうやって国民探しを出来ることが楽しいようで、楽し気な表情を浮かべている。
レイシアの中には、不安は一切ないようで、その目には強い力が宿っている。
そういう態度をされると、その傍にいるものは何でもなんとかなると思えるようなものだ。霧夜もレイシアがあまりにも簡単に出来ると言い張るので、何でも叶うような気持ちになる。ただ、それを信じすぎると足元をすくわれる気がするので、霧夜は俺がしっかりしないとと気合を入れる。
《それはそうだが、下手に動いて、レアシリヤのことが悟られればいまだとすぐにつぶされるからな。一先ず人の少なさそうな裏通りをぶらぶらするのがいいか。それだとアンダーグラウンドな連中も多いだろう。しかし、ちゃんと勧誘する連中は選別する必要がある。今の所、レアシリヤにいる面々は問題はなさそうだが、そのあたりはきちんとしなければ内側からも崩れるだろう》
「あーもう、アキはガタガタ煩いわよ。細かい事、言い過ぎね、『魔剣』なのに」
レイシアは長々と話す霧夜に、うんざりしたように声をあげ、そのまま背中を倒してベッドに横になる。
《はぁ……レイシアがしっかりしねぇから、俺が『魔剣』なのに気にしなければならないんだろうが》
「ふふふ、アキがそういうのだから私は安心して暴走出来るんじゃない。まぁ、アキがいなかったらもっと考えずに突き進んでる自覚はあるけど」
《……レイシアはよく行き当たりばったりで、ラインガルが滅びた後、一人で生きられたな》
「それはあれよ。行き当たりばったりだからこそ、良い巡り合わせがあったのよ。あとは私に加護があったからね」
《レイシアはそういうことが出来たかもしれないが、普通の人はそれが出来ない。もう一人ではないのだから、ちゃんと考えろよ》
「はいはい」
レイシアは霧夜の言葉に聞いているのか聞いていないのか分からない、適当な返事をして、眠くなったのかそのまま眠りにつくのだった。
寝息を立て始めたレイシアに、霧夜は何とも言えない気持ちになるのだった。




