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さて、レイシアに国民探しに向かうことを言ってからはや一週間。
その間にレイシアは「いますぐ行きたい」と何度もごねたが、何とか一週間は留めて準備をすることに成功した。本当ならもっときちんと準備をしたほうがよいのだが、レイシアはすぐさま行動したがる存在なのである。
(本当にぎりぎりまで隠していて良かった。下手にさっさと知られたら村の方で準備が出てきていない現状で飛び出さなきゃいけなかったら大変だったからな)
霧夜はそんなことを考えながら、レイシアに背負われている。
「ふふ、じゃあ行ってくるわ!!」
「はい。いってらっしゃいませ、レイシア様、ゼクセウス様」
「軽いな……。長期間この村を空けるというのに……」
行ってくる、と笑顔で言い放つレイシア。それに対してにこにこと笑って送り出すチュエリー。何ともいえない表情でコメントをするカイザー。それぞれ反応が違った。
レイシアと霧夜は長い期間、この村を空ける予定である。それにしてはレイシアの行ってきます、は軽い。まるで日帰りで出かけるようなノリである。
これからこの村を空けようとしているレイシアと霧夜の元には、村に住まう全員と竜人たちの姿もある。
「ふふん! 別に村を空けたぐらいで、貴方達はつぶれないでしょう? 私は私の国民を信じているもの。この位で貴方達はきっとつぶれない。私が帰ってきた時もきっと、貴方達は大丈夫よ」
レイシアはとても晴れ晴れとした表情で告げる。
レイシアの中では、それは当然のことなのだ。まったくもってレイシアは心配など一つもしていない。彼女の中ではこの場所が国になることは必然で、国になることは当たり前だと思っているのだ。
欠片もそのことを疑っていないレイシアに、チュエリー以外は呆れや茫然とした表情を浮かべる。
「レイシア様は本当にぶれない方ですね。私たちはこの場を必ず守り抜いて見せます。寧ろレイシア様達が戻ってくるまでに今よりも発展させてみせます。貴方様が驚くぐらいの変化をお届けしますわ」
「ちょ、チュエリー……。そこまで言っていいものか!? 確かにそれが理想だが」
「チュエリーは本当に良い子ね、私は楽しみにしてるわ。あと、そこの貴方は何を怯んでるの。言っていいものか、ではなくやるのよ!! いいわね?」
レイシアにそんな風に睨まれて、弱音を吐いた男は「は、はい」と頷いていた。
レイシアに背負われている霧夜は、やれやれといった心情である。最も、今の霧夜は大剣の姿なので表情などは分からないものだが。
「まぁ、いいわ。とりあえず貴方達、私は貴方達を信じているんだから。ちゃんとやりなさいね。そして、私のことを信じなさい。私は大量の国民を連れて必ずアキと戻ってくるんだから」
レイシアは、心配そうな表情を浮かべる彼らの一人一人の顔を見渡して、自信満々に言い切った。
レイシアは彼らを信じる。だからこそ、彼らにもレイシアを信じてほしいと、そんな風に言ってレイシアは微笑んだ。
その笑みは、何処までも美しい。
自信に満ち溢れた強い笑みは美しく、見る者を魅了するような魅力が確かにある。
それだけのカリスマ性のあるレイシアだからこそ、彼らもレイシアの国を作りたいなんて突拍子もない大きな野望を叶えることについていこうとしているのだ。
「ふふ、良い顔しているわ。さっきまでの表情とは違うわね。いいわ。その表情のままで、私がいない間、やり切りなさい。うつむく事は許さないわ。私の国民なんだから、私のことを信じて、前を向いて過ごしなさい。私の国民は、ちゃんとこの村を守っていける。いいわね?」
そう言い切ったレイシアに、彼らは頷いた。
下を向く事は許さない、前だけを向け――こんな未開の地でなんて無茶なことを言うのだと、人によっては文句を言うだろうことを言い切ったレイシア。そしてその言葉に何も言い返さず、真剣な表情で頷いた彼ら。
その間には確かな信頼関係が出来ている。
(人っていうのは不思議だよな。俺も昔は人間だったけれど、今は《魔剣》だしなー)
霧夜は、もう長い間、《魔剣》として生きている。レイシアと出会うまでは、《魔剣》生の中で誰かと会話をすることもなかったような存在だ。
だからこそ、なんとも不思議な気分になりながら彼らの会話を聞いていた。
「じゃあ、行ってくるわ。次に戻る時は、絶対に国民を連れてくるわ。期待してなさい」
そうやって笑みを浮かべるレイシアのことを、皆が前を向いて、送り出すのだった。
その背に背負われる霧夜は、どんなことになるだろうかとレイシアとの国民探しに心を躍らせるのだった。




