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「もーー、まだ思いつかないの!! 私は退屈なのよ」
さて、霧夜との国民探しがこの後待っているとは知らないレイシアは、待ちきれなくなったらしく不満そうに声をあげていた。
カイザーたちが何が何でもレイシアにばれないようにひっそりと準備をこなしていた結果であるが、霧夜はレイシアに装備されながら、その様子に呆れていた。
《レイシア。国主になるっていうなら、そんな子供みたいに駄々をこねるな》
レイシアは自分の欲望に対して、真っ直ぐだ。国を作りたい、最強の国家にしたいというのはレイシアの中での一番の欲望で、だからこそキレイドアに国を作ろうという行動を起こしている。
それはレイシアの美点でもあり、欠点でもある。行動力があることは悪いことでは決してないが、国主となるのならばもっと冷静さが必要である。
「……そうはいっても、退屈なのよ」
《もう少し待て。ちゃんと考えてやっているから》
霧夜としてもこれだけレイシアが不満そうな顔をしているのは困る。
今は村という小規模な集まりだから問題がないが、これから国に至った場合、国民の前にそんな醜態ともいえる姿を見せるのは問題だろう。
「その言葉、ちゃんと信じて良いのよね?」
《ああ、もちろんだ。だからそんな睨むな》
霧夜はレイシアにそう答えながら、まだ準備終わらないのかなと思考する。
予定としては、レイシアが痺れを切らせる前にこの村がやっていけるように準備を整える予定だった。チュエリーとも話していたが、レイシアは我慢強い性格では決してないからだ。
だからこそ、即急に準備を整えたかった。
(思ったより、この土地はずっと生きにくい)
しかし、やはり未開の地とされていたキレイドアは一筋縄ではいかなかった。加護もちであるレイシアがいるからこそ、此処で穏やかに暮らしていける。当たり前のように日常を謳歌していられる。
だけど、他の人間はそうではない。
もっとはやく準備を整えられればと思ったものの、レイシアと霧夜が居ない間に此処が持つほどまだカイザーたちは鍛えられていない。
いっそのこと、魔法が使える人間でもいたら別かもしれないと思うが、そんな存在は生憎ここにはいない。
《レイシア、ちゃんと考えてはいるが、退屈だっていうならゲームでもしないか》
「ゲーム?」
《ああ。俺とお前で、どっちが魔物を多く狩れるかとかそういうやつ》
「人化したアキとってこと?」
《ああ。そういうゲームをするのも楽しそうだろう? いっそのこと、他の連中も巻き込んでそういうゲームをしてもよい》
霧夜はレイシアの退屈を紛らわせるためにそんなゲームを提案した。レイシアが目を輝かせてそれに乗ってきたので、霧夜はひとまず安心するのだった。
……他の連中も巻き込んでと言ったのもあって、カイザーたちも巻き込まれることになってしまったのは悪かったと思っているが、霧夜としてみればこういうゲームを通してもっとカイザーたちがキレイドアに適応していけるだろうし問題がないと思っていた。
「っていうか、人化ってあんまり時間保てないんでしょ?」
「……まぁな。でもレイシアに使われてから魔物とか沢山切っているし、その分、調子もいいんだよ」
レイシアに使われるようになってから、沢山の生き物を霧夜は切っている。霧夜はあくまで《魔剣》であるので、剣として使われれば使われるほど調子が良くなるのであった。
おそらく、またどんどん生物の命を奪っていけば《魔剣》としてレベルアップしていって人化ももっと長時間出来るようになるだろうと霧夜は推測していた。
「ふぅん。まぁ、いいわ。アキには絶対に負けないから」
「ああ。俺もやるからには負けるつもりはない!」
さて、レイシアと霧夜が自分は絶対に勝つとバチバチしているのを見て、カイザーは「……俺たちは俺たちなりに頑張ろう」と周りに激励の言葉をかけるのだった。
加護もちと《魔剣》相手に勝てる気は彼らには全くなかった。
――ちなみにこういう狩りにおけるゲームがこの場所で催しとして定着していくのは別の話である。
「ふふん。私の勝ちね!」
「……次はかつ」
さて、そのゲームにおいて今回はレイシアが勝利を収めた。霧夜も大きな魔物を狩ってきたものの、レイシアの方が大きなものを狩っていたのだ。霧夜は悔しそうな顔をしたかと思えば、人化の限界が来たのか、人化を解く。
さて、レイシアが退屈しないようにとそれから連日ゲームは続けられるのであった。カイザーたちは他にもやることがあると参加をしない時もあったが、レイシアと霧夜は毎回参加していた。
そして、レイシアが勝ったり、霧夜が勝ったり――それを繰り返す。
そんな日々が続いた中で、チュエリーがようやく、
「準備が整いましたわ、ゼクセウス様!」
と霧夜の待ち望んでいた言葉を口にしたのだった。




