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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第五章 魔剣と少女と国民探し

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5

「最近、厳しすぎません?」

「きつー」

 カイザーの目の前には、疲労を浮かべて息切れをしている《赤鴉》のメンバーがいる。

 彼らは揃いも揃って、カイザーの課した訓練に音を上げていた。《赤鴉》は傭兵集団であり、少しぐらいの無茶ぶりには慣れている。彼らのリーダーであるカイザーはレイシアほどではないにしても、無茶ぶりをしてくるような人物だった。

 ――しかし、彼らはひしひしと感じていた。最近、カイザーが前にもまして《赤鴉》のメンバーに厳しくしていることを。

 その理由をカイザーが彼らに告げることはない。しかし、リーダーであるカイザーのことを信頼しているからこそ、彼らは必要以上に理由を聞くことはなかった。

「駄目だ、まだ、行けるだろう?」

 カイザーがそのように彼らに対して厳しくするのにはもちろん理由がある。

(……レイシアとゼクセウスがこの村をしばらく空けるっていうんだったら、俺がしっかりしないといけない。王とその武器がいなければ成り立たない国なんぞ、国などとは言えない。そんなものレイシアが望む最強の国家にはなりえない)

 カイザーは霧夜とチュエリーから、レイシアと霧夜が外に出て国民探しに向かうことを聞いていた。このタイミングでそういうことをしようとするのか、村がどうなってもいいと思っているのか――色んな常識的な反論が頭に沸いた。

 そしてそれを口にも出した。

 しかし、そんな保守的な考えであるのならばレイシアの望む最強国家など出来るはずがないと言われ、その通りだとカイザーは納得した。

 そもそもこんな未開の地であり、一歩間違えればすぐに人の命が失われていくようなキレイドアに国家を作っていこうとしているだけでも常識なんて投げ捨てていることだ。ましてや、今まで長い歴史の中で誰一人として成し遂げてこなかったキレイドアに国家をつくるなんていう目標がそんな常識にとらえられていては叶うはずもない。

 レイシアには常識なんてものは何一つとして通じない。——『魔剣』を国造りに関わらせ、自ら『魔剣』を所持することを望んだ女が、常識など持ち合わせているわけもない。

 さて、カイザーも納得はしているので、レイシアと霧夜が国民探しに向かうことに関してはなんの異存もない。寧ろ、ちゃんとこの場所を国家とするためには人が少なすぎるというのもあってそのことには賛成である。

 しかし、ただ一つ困っていることと言えば、そのレイシアと霧夜が外にいく事実を隠した状態で《赤鴉》のメンバーを鍛えなければならないことであった。

 レイシアと霧夜がいなければ、この村の戦力はがた落ちである。あの一人と一振りがいるからこそ、この村は平穏を保てているともいえるのだ。なので、ある程度戦える力と知恵を磨かなければどうしようもない。幸いにも竜人という存在が味方になったため、空の脅威は減少したが、まだまだこのキレイドアには危険があふれている。

(……レイシアは確かに外に国民探しに行くなんて言う面白いことが出来るって知れば飛び出していきそうだが)

 そう、レイシアが飛び出していきそうだからという理由で、レイシアに隠し通さなければならないのだ。こちらの準備が整っていない状況で、レイシアが村から飛び出していくというのは大変なことになってしまう。

 正直言って、《赤鴉》のメンバーはレイシアに問われたら正直に答えてしまいそうなので、露見しないためにも伝えるわけにはいかない。カイザーはレイシアに「最近厳しくしてるわね」と言われるだけでもハラハラしてしまうわけである。

(……ゼクセウスとチュエリーが、レイシアが退屈していてうずうずしていると言っていた。ならば、俺が出来ることは俺やこいつらがもっと戦う術を身に着けることしかない)

 正直、レイシアと霧夜が常に此処にいる状況ならばもっとカイザーを含む《赤鴉》の者たちは彼女の強さに甘えて強くなることがもっと遅かったかもしれない。それだけレイシアと霧夜がいる状況というのは、死の恐れが下がるのだ。

 だから、こういうきっかけがあるからこそ、身が引き締まってもっとこのキレイドアでの暮らしに順応していける。

「――まだ、どんどんいくぞ」

「はいっ」

「きつっ! でも頑張るぞ」

 カイザーの言葉に《赤鴉》のメンバーはキツイと口にしながらも、何だかんだで根性を見せてついてくる。

(俺について此処までやってきたこいつらを死なせるわけにはいかない。今はなんとか暮らしていけているけれど、此処はキレイドア。人が足を踏み入れることが出来ないとされていた地。化け物たちが徘徊し、生きていくことが難しい土地。——その土地で生きていくためには、俺も無茶をする)

 死なせるわけにはいかないと決意して、カイザーは《赤鴉》のメンバーを連れて森の中を駆けるのだった。




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