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霧夜とチュエリーが国民探しのことを話し合っている時に、レイシアは何をしていたかと言えば、高い木の上に登って空を見上げていた。
今日の天気は晴れ。
青い空が広がっている。
その下でレイシアはというと少し退屈そうな顔をしている。
レイシアという少女は、何よりも楽しい事が好きだ。自分がやりたいことをやり切る事が好きだ。そして強い信念を持っている。
――だからこそ、レイシアは現状のままでは満足しない。
キレイドアという未開の地。強大な力を持つ魔物が闊歩する場所で、村を作り、仲間を増やしている。それだけでも驚きに値することだ。
この短期間でそれだけの成果を出しているというのは側から見れば十分な事なのだ。それなのに、レイシアはそれでは満足することはない。
でもそれだけの強い欲望を持っているからこそ彼女は、立ち止まらない。
(アキとチュエリーが色々考えてくれるって言っていたけれど、どのくらい面白い事を考えてくれるかしら)
レイシアはキレイドアに村を作る事が出来て、竜人を仲間にすることが出来たことを嬉しく思っていないわけではない。しかし、もっと面白い事になることを期待していたレイシアにとっては現状は拍子抜けしているのだ。
レイシアは木の上で目を瞑ると、昔の記憶が思い起こされる。
幸せだった幼少期。
そして国の崩壊。
その幸せが崩れ落ちた瞬間を見たからこそ、レイシアは望んだ。最強の国家をつくることを。
その時の感情が無くなる事なく心にずっと残っているからこそ、レイシアは《魔剣》を求め、此処までやってきた。
(ふふ、まだまだここは最強には程遠いがもっと強い国にして、誰もが恐れるような場所にしたいもの。現状はまだまだ外に知られてしまったらつぶされちゃうから駄目だっていうし。うーん、もっと手っ取り早く強く出来たらいいのに。でもそんな簡単にいかないものね)
レイシアは考えなしなようで、本当に何も考えていないわけではない。頭で考えるよりも行動しようとする少女だが、一応国のことはきちんと考えている。霧夜とチュエリーが代わりに考えてくれているというのもあって、そういう一面が見えていないだけである。
多分、もう少し霧夜がレイシアの代わりに色々考えたりしなければ、レイシアももう少し頭を使ったかもしれない。
(アキは本当に『魔剣』とは思えないぐらい面白いし、これからがどんなふうになっていくか楽しみだわ。アキとチュエリーが考えてくれること次第では、いっぱい遊べるだろうし。あー。もっと退屈しないことをしたい)
そう考えて遠くを見ていたレイシアは魔物の存在に気づく。
その大きな魔物は村の方へと向かっている。あの大きさからみて、人を食らうこともためらわないだろう。
レイシアは、国民を守る義務がある。
王として、村に来られるわけにはいかない。
(アキは今いないけど、いいわ。いけるわ)
レイシアはそう判断して、木の上から飛び降りる。まるで猫のようにしなやかに着地すると、そのまま魔物の方へと向かっていくのであった。
幸い、その大きさからその魔物は足が遅かった。
だから、レイシアは一気にかけると、その魔物に向かって石を投げ、意識をそらさせ、殴りかかった。
レイシアが魔物を殴り倒すと、大きな音がその場一帯に響いた。
そしてその後、レイシアは魔物を引きずって村へと戻るのだった。相変わらず規格外で、ぶっ飛んでいるレイシアであった。
その魔物は解体されて素材にされたり、美味しくいただかれたりした。
このキレイドアの中は特に弱肉強食な世界である。
「アキ!! 何か面白いこと、考えた?」
《まだ考えれてない。ちゃんと考えるからしばらくは大人しくしてろ》
「もー、まだなの? じゃあ、私はそれまでに沢山魔物を狩るわよ」
《王になるんだから、もっと戦い方の伝授とかにも力を入れろよ》
「それは当然ね。私が望むのは私だけが最強の国ではないもの。私が望んでいるのは国家自体が強い国だもの。国民達だって強くならなきゃ意味はないわ」
レイシアはそう答えて、しばらくの間それに力を入れることにした。
霧夜は国外に国民探しに行くことを言わずに、村の連中を強くするようにレイシアを誘導出来てほっとした。レイシアのことなので、国民探しの事を言ったらそういうことをせずに今にでも飛び出しそうなので、ぎりぎりまで隠さなければいけないと霧夜はまた気合を入れるのだ。
そう考える霧夜の隣でレイシアはばくばくとお肉を食べている。
「ねぇ、アキってお肉食べたいとか思わないの? 人間の姿になれるのならば、食べたらいいのに」
《あー、まぁ、食えるけど》
「なら、食べなさい!!」
正直《魔剣》になってからそういうことをしなくても生きていけるので、何かを食べたりとかしていなかった霧夜。
レイシアに促されるがままに人間の姿に変化して、霧夜は久しぶりに食事を取るのだった。




