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「我らは,竜の血を引いている」
――空を飛んでいた不思議な人種達は、そんなことを口にした。
竜。
それは、魔物の中でも最強に名高い種族である。
空の覇者。
そう呼ばれる存在である。
その存在の血を引いているという話を聞いたレイシアはというと、
「竜の血!? 何それ、かっこいいわね??」
と大興奮だった。
とはいえ、霧夜も竜の血として興奮していないわけではない。
(竜はとても強くて、憧れるよな。そんな竜の血を継いでいる種族があるとか知らなかった。竜人か? なんかすごくいいな。なんかかっこいいし、俺も竜人とかなりたい)
人間であった頃にそういうものに憧れなかったわけではない霧夜である。正直言って竜という存在の血を引く存在と聞いて表面には出ていないが霧夜も大興奮だった。
急に興奮した模様のレイシアに、彼らは驚いた様子を浮かべるが、続ける。
「詳しくは分からないが、昔は我らも人と共にあったようだ。しかし、人と暮らすことに対して嫌になってしまった我らの祖先はこの、人の手が加わっていない場所に住まう事を決めたのだという」
人と昔は共にあった種族。
だけど人と共に歩む事をやめた種族。
それがレイシアと出会って、レイシアの下につく事を決めた。それはなんて面白い事だろうかと霧夜は思ってならない。
「それで貴方達、何が出来るの? 飛べるのは分かったけれど、竜のように硬かったりとかするのかしら?」
レイシアは興味津々と言った様子で彼らに対して、まくしたてるように質問をする。霧夜はレイシアが聞きたい事を全て聞いてくれているというのもあって、黙って聞いている。
口を開いたら『魔剣』らしかぬ事を口走りそうだからというのももちろんある。霧夜は『魔剣』になってからというもの、なるべく『魔剣』らしくあろうとしているのである。
「そうだな。人よりは肌が丈夫だ」
「そうなのね!! 後は何かあるかしら? 火とか噴けたりとか?」
「……俺は出来ないが、昔出来た人はいたらしい。鍛えれば出来るようになるかもしれない」
「そうなのね。じゃあ是非、火を噴けるようになりなさい!!」
出来ないと言い放った者に、レイシアは意気揚々と火を噴けるようになりなさいと無理難題を押し付けていた。霧夜はそれを聞きながら、火を噴くための訓練ってなんだろうかと小さな事を考えてしまっている。
「で、アキ、何を黙ってるの?」
《あ? 聞きたい事、レイシアが聞いているし、黙ってるだけだ》
「何よ、それ、アキもちゃんと口を開きなさい!!」
《はいはい……。で、レイシア、こいつらを国民に出来たのはともかくとして、どうするんだ?》
黙っていればレイシアにちゃんと口を開けと言われてしまったので、霧夜は渋々口を開く。竜人とかかっこいいなーなんていう心の内を出さないようにしながら、冷静な口調を心掛ける。
「どうするって?」
《国民にするのが目標じゃないだろう。国民にしたこいつらをどう扱うかだよ。キレイドアに長く住んでいるなら俺達よりもキレイドアに詳しいだろうし、情報を聞きだすのは当然として――。同じ国民だとすれば、村の連中と挨拶させた方がいいだろう。とはいえ、レイシア以外がこんな山の上までは来れないだろう。あとはこの集落をどういう扱いにするか。このまま此処にこいつらに住んでもらうのか、それとも一部だけ下の村に来てもらうのかとか。そういうのも考えた方がいいだろう?》
霧夜は一先ず、気になった事を聞き出す事にした。どうせ、レイシアは何も深く考えていないので、考えなければならないのは霧夜やチュエリーである。国を作って女王になるというのならば、もっときちんと考えてほしいと思ってならない。
「どうするかって、考えてなかったわ!! アキ、そのあたりはアキがチュエリー達と話し合って考えなさい!」
《レイシア……やっぱり丸投げかよ》
「ふふふ、だってアキならちゃんと考えてくれるでしょ? それに私は面倒な事を考えるのは嫌いなのよ!!」
それは自信満々に言い切っていい事ではなかったが、レイシアは悪気もない様子で言い切った。
《……はぁ、そう。じゃあ、えーとお前たちは何て呼べばいい? 竜人ってイメージだから竜人でいいか?》
「あ、はい。大丈夫です」
霧夜とレイシアの会話に呆気にとられたのか、少し戸惑った様子で彼ら――竜人は答えた。
《じゃあ、そうだな。まず、こちらの村の方で話し合いをしてからお前たちに何をしてもらうか、どうしてもらうかというのを決めたいと思う。なのでそれまでは此処で大人しくしてくれていればと思うのだが、それでもいいだろうか?》
「はい、大丈夫です。……魔剣というにしては、凄い魔剣ですね」
「ふふふ、アキは凄いのよ!」
《だから何で本人である俺じゃなくてレイシアが自身満々なんだよ……》
「私の魔剣だからよ!!」
そんな会話を交わすレイシアと霧夜を見て、竜人達は面白そうに笑い声をあげるのだった。




