12
レイシアの手によって、向かってきた者達は全て地に伏せている。
レイシアはそれだけ圧倒的な力を持ち合わせている少女だった。使っている獲物もまた凶悪だ。『最悪の魔剣』とレイシアの組み合わせは敵対する者達からしてみれば悪夢でしかない。
しかし、満身創痍の彼らは、決して絶望を見せていない。寧ろ、笑っていた。
彼らは何が楽しいのか、笑みを溢していて、それを見て霧夜は何とも言えない感情を感じる。
(なんというか、レイシアと同類感がひしひしとする。あと、こんな標高が高い場所でも平然と動いているレイシアってやっぱり規格外なんだよな)
霧夜はレイシアの手に握られながら、ただそんな思考をする。
「まだ、やるかしら? 私はまだまだ向かってきてもらっても問題はないわ」
……レイシアはまだまだ暴れたりないと言った様子である。一人で多数を相手にしていたというのに、疲れは一切見られない。寧ろもっと暴れたいと本心から告げている。
魔剣を構えて、彼らに視線を向けるレイシア。
「いや、もう十分だ」
「―—どれだけお前が強いのか把握できた」
「それに、先ほどの国を作って、王になるという言葉も本気なのだろう」
「ふふふっ、私が嘘何て言うわけないじゃない」
レイシアは不敵に微笑んで、彼らから視線を逸らす事をしない。いつだって本気で、いつだって真っ直ぐな女。それが、レイシアだ。
「ふっ、そうか」
「ええ。それで、私は貴方達を配下にしたいの。配下になってくれるかしら? ならないっていうのなら、なりたいっていうまでぶちのめすけど」
レイシアの言葉に、話を聞いていた彼らは笑い声をあげた。何が楽しいのか、何が面白いのか、レイシアに見つめられている彼らの目には光があった。無理やり従わされる事に対する嫌悪感など、そこにはないのだ。
「もちろんだ。俺達に勝てる存在ならば、喜んで従おう」
「あら、そうなの?」
「ああ。俺達は強い存在に従う。お前は――レイシアはそれだけ強かった。ならば、俺達が従うのも当然だ」
「ふふ、強い相手には従うのね。いいわ。分かりやすい。なら、私を王としなさい。そして私の命令に従いなさい。いいわね?」
「ああ、もちろんだ」
霧夜がなんだそりゃと思っている間にも、レイシアと空を飛んでいた彼らの間で話が進んでいた。
(強ければいいって本当にレイシアと同類感が凄い。自分よりも強ければ相手がどんな欲求でも従うという事か。レイシア以上に強い奴がいたら配下から抜けるって事か……。うわー)
霧夜はそんな事を思考していた。
強ければ従うという事は、強くなくなってしまったり、もしくはもっと強い存在が出てきてしまえば従わなくなるという事だ。
それはすなわち、永遠に強くあらなければならないという事。
レイシアがいつ死ぬかは分からないが、おばあちゃんと呼ばれる年まで生きるとすればそれは難しいのではないかと言わざるを得ない。別の強さを見せつけるか、それともそのころには配下からいなくなっているのか。
霧夜は先の先まで考えてしまっているが、レイシアは霧夜と正反対で今しか見ていないようだ。
「よし、目標達成ね!! 私は、山の麓で村を作った所なの。これをこれから国にしていくの。そのための手足となりなさい。戦闘は……今の所、大規模なのはやる予定はないけれど、まぁ、そのうち戦争とかもしなきゃかもだし。期待しているわよ!!」
《戦争しないって選択肢はねぇのかよ》
霧夜が思わず突っ込みを入れれば、空を飛ぶ者達は、何処から声が聞こえたのかと驚いた顔をする。
「ふふふ、この声はね、私の得物の声よ!! 魔剣のアキよ。私とアキに負けたんだから、ちゃんとアキの言う事も聞きなさいよ」
レイシアは霧夜の事を前に出して、そう宣言する。前に出された霧夜は、
《あー、よろしく。俺は『災厄の魔剣・ゼクセウス』。初めましてではない。お前たちが言っていた変な男っていうのは、俺だ》
そんな風に挨拶をする。
先ほど変な男と称されていたので、それで説明をする。
それに対して、先ほどよりも驚愕の表情に変わった。
「魔剣……そういうのがあるのは聞いた事があるが」
「喋れて、人にもなれるのか……」
「ええ。私のアキは凄いの。特別な魔剣だわ。だからアキの言う事もちゃんと聞いてもらうわよ」
レイシアが言い放った言葉に、彼らは躊躇いもせずに頷いた。
相手が魔剣であろうとも、強ければいいと思っているのか簡単に頷く。そういう所は本当に、本質的にレイシアという少女に似ていると言えるだろう。
「ふふ、じゃあ、色々と貴方達について話を聞かせてもらっていいかしら? まず何で飛べるのかとか、貴方達って人間なのかとか。私は沢山、貴方達に聞きたい事があるの。全て答えてくれるわよね?」
レイシアは、好奇心旺盛な口調でそう言い切った。
それから、レイシアと霧夜は彼らについての話を聞くことになるのだった。




