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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第四章 魔剣と少女とある出会い
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8

「それで、どのようになさるつもりなのですか? その空を飛んでいるような不思議な存在がこちらを襲撃してきたらどうするつもりですか?」

 喧嘩をしている霧夜とレイシアに対して、冷静にそんな疑問を投げかけたのはチュエリーであった。

 この村――レアシリアは村として何とか機能してきているが、まだまだ不完全な部分が大きい。相変わらずキレイドアにいる魔物達は危険であり、レイシアと霧夜がいなければ命が幾らあってもたらないといった状況だ。

 少なからず、ここでの生活をするにつれてカイザー達、《赤鴉》もキレイドアの魔物達を倒す事が出来るようになっているが、レイシアが最大戦力である事には違いない。

「そうだわ! アキ、今度は私もちゃんと連れて行きなさいよ!!」

《……お前は、本当に自分が楽しむ事ばかり考えてやがるな》

 人の姿から大剣の姿へと戻っている霧夜は呆れたような声をレイシアに向けていた。どうしてこうも自分が楽しみたいというその思いばかりをレイシアは優先させてしまうのだろうかとそれを考えて仕方がない霧夜である。

 国を作って、そこの女王になる、と宣言している存在でありながらレイシアは自分がやりたい事を自重する気が一切なさすぎた。

 王侯貴族という立場であるのならばそういう短慮な行動はしない方がいいだろう。それはこの場にいるレイシア以外の面々が共通して考えている事だ。

「もう、お前はやめなさいと言っているでしょうが!!」

《あーもう、煩いな。レイシア、女王になりたいならちゃんと自分の身の安全も考えて動けよ。王になりたいのならばな。別に面白い事をするなとは言わないが、もうちょっと考えて動くべきだろうが》

「もう、アキは口煩いわね。そんなんだともてないわよ?」

《俺は『魔剣』だっつーの。もてるとか、もてないとかどうでもいい》

「でもアキって男の子じゃない? 別に女性といい事してもいいんじゃない?」

 レイシアが面白そうに笑いながらそんな事を言う。『魔剣』の姿の霧夜は何を言っているんだとでもいうように、口を閉じた。

「レイシア様、ゼクセウス様、話がそれておりますわ」

 思わず口を挟んだのはチュエリーであった。チュエリーは困ったような顔で、一人と一振りを見ている。

「もちろん、こちらから接触するのよ!! 空を飛べるなんて面白い存在を引き込まないわけはないわ」

《国民にする気満々かよ》

「当然でしょう? あれだけ面白い種族を放っておくなんて私はしないわ。私は彼らが欲しいもの。それに、山の上でずっと生きている存在なんて面白いわ。このキレイドアで誰にも知られずにずっと生きていたなんてっ!! なんて面白いのかしら」

《まぁ、面白いけどな》

「でしょ? それにこのキレイドアで生きていたって事はキレイドアの事について詳しいのよ。私はこの場所に国を作ると決めたのだから、そのためにも詳しい彼らを引き込みたいと思うのは当然でしょ?」

《一番の理由は面白いからだろ?》

「よく分かっているわね、アキ」

 にっこりと、レイシアが笑った。自信満々で、自分の行動に一切の躊躇いを見せない笑み。——こんな笑みを見せているレイシアは、周りが止めても空を飛ぶ者達の元へ特攻する事だろう。そのことが、霧夜には嫌でも分かった。

 レイシアはレアシリアにとって重要な存在だ。レイシアが国を作ると決めたからこそ、皆が纏まっている。レイシアというカリスマ性のあるトップがいるからこそ、烏合の衆ではなく、こうして村として存在しているのだ。レイシアという光が欠けてしまったら、この村は解散する事だろう。

 だからこそ、レイシアの命は重い。ここでレイシアが死を迎えてしまえば、国を作るどころではなくなってしまう。

《……まぁ、あちらの動きを待っているよりもこっちから突っ込んだ方が上手くいくかもしれないというのは確かにある。先手必勝で動いた方がいいかもしれない》

「でしょ? なら、いいじゃない。行きましょうよ」

《ただし、レイシアが死んだらこの場所は終わりだ。俺だってレイシアが国を作るのが面白いからってここにいる。レイシアが死んで、国が作れないっていうなら俺は次の面白い物を探しに行くだけだ》

「分かってるわよ、そんな事」

 霧夜の言葉に返事をするレイシアの言葉は軽い。あまりにも軽すぎて、本当に分かっているのだろうかと周りが心配になるぐらいに軽かった。

《だから死なせないようにはこっちでもするが、レイシアも命は大事にしろよ》

「全く、アキは『魔剣』なのに本当に心配症ね」

《それで、行くとして、メンバーは?》

「そんなの、私とアキでいいんじゃない?」

《……それで大丈夫か?》

「本当に、心配性ね。大丈夫よ。それにそれ以上の戦力を割いたら、魔物退治などが出来ないかもしれないでしょう? 誰か死人が出る可能性もあるわ。それよりも私とアキでいってさっさと彼らを国民に引き込んでしまう方がいいじゃない?」

 その言葉に霧夜は確かに、それ以上の戦力を割くと村が魔物に襲われた場合対処が出来ないだろうと思考する。かろうじて村として保って生活が出来ているが、キレイドアは危険な魔物ばかり生息していて危険な地である。空を飛んでいる者達を仲間に出来たとしても、村が崩壊していては意味がない。

 そんなわけで結局、霧夜とレイシアでまた山頂まで向かう事になった。




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