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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第四章 魔剣と少女とある出会い

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6

 霧夜は早速、人の姿のままあの空を飛んでいた存在達の向かっていた山の方へと向かう。

 人の姿のままこんな事をするなんて、少し前の霧夜は想像さえもしていなかった。霧夜はあくまで『魔剣』であり、人ではない。人として生きてきた生があろうとも、まぎれもない『魔剣』でしかない。人の姿になれたとしても、こんな風に使うつもりは一切なかったのだ。

(本当にレイシアといると予想外の事ばかりだ)

 霧夜はそんな事を考えながら、険しい道のりを軽い足取りで進んでいく。

 人間だった頃の霧夜は決して運動が出来た訳ではなかった。寧ろ、体を動かす事などほとんどしない人間だった。それを思うと、今の運動神経には違和感も湧いていた。

 とはいえ、運動神経はないよりあった方が断然良い。なので霧夜はその違和感を気にしない事にした。

 山の麓まで進む。ここまででも普通の人間だったら、大変である。途中で魔物も見かけた。襲い掛かってくる魔物は軽く倒した。人の姿のままでも重力を操ったりは出来るし、その手に剣を出そうと思えば出せる。『災厄の魔剣・ゼクセウス』と同じものを出せるのだ。……霧夜自身にしてみても不思議な事だが、『魔剣』が人の身に変化し、自身そのものである『魔剣』を出せるのである。どういう能力が働いているかは霧夜はきちんとは知らない。自分の事なのに知らないのはおかしな話かもしれないが、霧夜は最早そういうものと思っていて、深く考えていなかった。

 山の麓から、山頂の方を見上げる。標高はそれなりに高い。霧夜が人間であったのならば、準備もせずにこんな所、登りはしないだろう。しかし、霧夜は『魔剣』だ。人の身でないが故にその身一つで山を登る事も出来る。

 『魔剣』である霧夜は人間にとって必要な衣食住が何一つ必要ではない。

 衣服は人型になる時に魔力で生み出せるのか素っ裸になる事はない。食事は食べようと思えば食べれるが、必要としていない。住処も『魔剣』である霧夜は何処でも生きる事が出来る。霧夜は人の心を持っていても、決して人ではない。あくまで武器である。

 険しい道を、少しずつ進んでいく。

(全く、『魔剣』になってまで登山する事になるとは思わなかった。昔、授業の一環で軽い山登りはした事あるけど、それも随分前の人間だった頃だし、何よりきちんと整備された道だった。こんな獣道を通る事はなかったしなぁ。本当に人生……いや、俺の場合剣生か? は何が起こるか分からない)

 人間だった頃の記憶を最近、たまに思い起こすのはレイシア達と過ごしているからであろう。ずっと昔、人間だった頃の霧夜は登山に向いている小さな山を登った事があった。それは学校のクラスメイト達と一緒に登った記憶。その頃は、まさか自分がこんな場所で『魔剣』として生きている事なんて想像さえもしていなかった。

 本当に、生きていると何が起こるか分からないものだ。最も、『魔剣』である霧夜を生きていると表現するのもおかしな話かもしれないが。

 山道では、沢山の果実や食べられる草などが見られた。麓の方ではあまり見られないものまであった。もし、あの飛んでいた人種達の事が調べられなかったとしても、このあたりに生息しているものの情報を集められただけでもいいだろうと霧夜は思った。

(……あの飛んでいた連中は、山の上の方にいるのだろうか? 山頂で暮らす種族か……。なんか昔のゲーム思い出すな)

 霧夜はそんな事を考えながら、ほとんど休む事なく、ハイペースで山を登っていった。

 こうして一度も休む事なく、一度も排泄する事なく、登っていけるのは霧夜が『魔剣』だからである。

 そうして頂上付近まで登っていく中で、幾度かその目的の種族――空を飛んでいる存在を見かけた。彼らは山頂へと向かっていた。やはり、山頂か、その付近で暮らしているのだろう。

(さて、どうするかね? とりあえず情報収集をするとして……、うまく情報収集が出来るかどうか。いっその事、『魔剣』の姿になって、村か何かあるなら入り込むか?)

 霧夜はどんどん頂上へと向かっていく中で、どのように行動するかと思考を巡らせていた。霧夜は情報収集といったものをこれといって今までしたことがない。『魔剣』になってからは、狂った人に使われるままになっていたし、そういう経験がないのも当然であった。

(でもレイシアを面白がらせるためにもちゃんと情報は集めておかないとな)

 霧夜はそんな事を考えながら、村のようなものがあるのを発見する。このような場所で生活してる人がいる事に霧夜は驚く。

 村の周りには隠れられる場所がほぼない。霧夜はどのようにしようかと頭を悩ませる。

 そんな中で、

「お前、何者だ」

 と、後ろから声をかけられるのだった。




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