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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第三章 魔剣と少女の村づくり

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 (すげぇな、レイシアは。人だった頃の俺とは大違いだ。圧倒的なカリスマと強さ。それでいて、自分というものを持っている。あれだけ自信満々に、迷いなく、私を信じなさいなんて言える奴なんてそうはいない。だからこそ、面白いと思うんだがな)

 『災厄の魔剣・ゼクセウス』は、レイシアとカイザーの会話を聞いていた。レイシアが信じなさいといった言葉も、カイザーが捧げた誓いも、全て聞いていた。

 彼は、それを見ながら以前の自分———ただの、人だった頃を少しだけ思い出していた。人としての生より、魔剣として生きている生の方が長い、けれども、暁霧夜にとって、人間だった頃の記憶は鮮明に残っている。

 ただの、人間。

 どこにでもいるような、人間。

 『災厄の魔剣』などと、物騒な名前で呼ばれる霧夜が、そんな人間だったなどと告げたとして、レイシアでさえ信じないかもしれない。でも、霧夜にとって、それは事実であった。だからこそ、素直にレイシアという人間に対して、凄いという感想を抱いていた。

 レイシアとカイザーがその場を離れた後、霧夜は誰の手も借りずに、移動する。

 そうすれば、移動している霧夜に気づいたチュエリーがかけよってくる。

 「ゼクセウス様、どこにいかれていたのですか?」

 《ちょっと見学しにな》

 霧夜はチュエリーの言葉に答えながらも、チュエリーのことも面白い存在だと思っている。

 あんな出会い方をして、霧夜が『災厄の魔剣』などと呼ばれていることを知った上で、霧夜のことを慕って、信頼しているようなのだから、不思議な存在である。

 「楽しそうですね」

 《ああ、楽しかったぞ。チュエリーも、楽しそうだな》

 「ええ。私はレイシア様とゼクセウス様が楽しそうにしているのが好きですもの」

 《俺が言うのもなんだけどもよくそんなに魔剣を信じられるな》

 「ゼクセウス様は特別な魔剣ですもの。それに、私はゼクセウス様に例え切られたとしても今が楽しいから後悔はしないと思いますもの」

 チュエリーはにこにこと笑いながらそんなことをいう。

 不思議な女だ、と霧夜はやっぱり思ってならない。結局どうしてチュエリーがキレイドアにいたのかもわかっていないことだが、まずそれもおかしなことで。それでいて一人でこの森で過ごしていて、レイシアと霧夜にあって何に惹かれたのか知らないが、レイシアと霧夜を信頼しきっている。

 「それにしてもカイザーの件はどうにかなったのでしょう?」

 《なんで知っているんだ》

 「さっきレイシア様とカイザーが二人そろって戻ってきたからすぐわかったの」

 《そうか……》

 「レイシア様はゼクセウス様を手放すことはきっと一生ないでしょう。そのことがカイザーにもわかってよかったですわ」

 《どうして断言できるんだ?》

 「きっと、そうだろうってなんとなくわかるのですよ。ゼクセウス様には死という概念がないかもしれませんけど、私はレイシア様が亡くなるその時まで、ゼクセウス様を傍に置いているんじゃないかなって思いますもの」

 《なんだ、それ》

 思わず霧夜はつぶやく。

 チュエリーは盲目的にレイシアと霧夜のことを信頼している。そのチュエリーにそのようなことを断言されると、本当にそうなるのではないかというそんな思いに霧夜はかられそうになる。

 (あいつが、俺を手放さないね……。あいつが面白い限り手伝おうと思っているけどあいつの命がなくなるまで傍にいるとはおもえないけどな。……レイシアは寿命以外で死なない気がするし)

 霧夜、チュエリーの横を浮いて自分で移動しながらそんなことを考えていた。

 「あ、アキ!」

 そんな風に移動していたら、霧夜は声をかけられる。霧夜のことをアキと呼ぶのはレイシアだけである。

 「カイザーとお話しなさい! カイザーとアキに仲良くしてほしいの」

 レイシア、カイザーと霧夜に仲良くしてほしいと思っているのは本心らしくそんなことを言い放つ。レイシアの隣にいるカイザーは、何とも言い難い表情を相変わらず浮かべてはいるが、そのことを了承する。

 (本当……『災厄の魔剣』と呼ばれている俺を国づくりに手伝わせようとして、それでいて魔剣と人を仲良くさせようとするなんて、レイシア以外いねぇよな)

 霧夜は改めてそれを考えて、レイシアという存在がおもしろいと感じてならない。

 (チュエリーがいうようにレイシアが死ぬまでここにいるとは思えねぇけど、まぁ、俺にとって一番長く傍にいる使い手にはなるだろうけどな)

 霧夜はそう思いながらもレイシアの手の中に納まる。

 レイシアはそれに笑顔を浮かべて、

 「ほら、カイザー、アキと思いっきり話しなさい。アキは凄く面白いのよ」

 と楽しそうに笑って、霧夜を手にした手を差し出すのであった。

 カイザーはそれに発強いて呆れた顔をしながらも、頷くのであった。


 そして一人の男と、一振りの魔剣の会話が始まるのである。




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