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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第三章 魔剣と少女の村づくり
39/197

8

 レイシアは思考していた。

 どうすれば、『災厄の魔剣ゼクセウス』を認めさせることが出来るのかという点において。

 レイシアは、祖国の滅亡を受けて、最強の国家を作りたいと願った。願ったからこそ、こうして行動を起こした。夢を幼い頃の夢のまま終わらせないために、自分の思い描いた理想を願い、『魔剣』を求めた。

 (……国を作りたいといった私が、こんな少人数の集団さえもまとめられないなんて駄目だわ)

 国家とは、巨大な集団である。その長に収まろうと考えているレイシアが、この程度の小さな集団さえもまとめられないというのは駄目である。

 それさえもできないのならば、国家の長になど納まれるわけがない。

 (キレイドア。誰も打破したことのない未開の地。私はそこに国を作りたい。ならば、普通にやっていては駄目だ。生活は出来るかもしれないけれど、そこに国家を作るなんて真似は出来ない)

 レイシアのやろうとしていることは、誰もできなかったことだ。人の長い歴史の中で、誰も成し遂げることが出来なかった事だ。

 それを、レイシアは成し遂げたい。成し遂げようとしている。それは、普通にやっていて出来るものでもない。

 (『魔剣』を忌避するような普通の考えを持った人はいらないと切り捨てる事も出来るけれど、そうしていれば集まるものも集まらない。何よりカイザーたちは、私の夢を受け入れた数少ない存在だもの。私はアキがどういう『魔剣』か少なからず知っている。アキは私を特別視などしていないし、私が面白くなくなった瞬間に私の魂を喰らうだろうけれども、面白ければ私に使われてくれる)

 確かに、『災厄の魔剣』は様々な事を起こしている『魔剣』で、人が忌避するのも当然の存在だが、それでもレイシアは霧夜がどういう存在か知っている。

 (少なくとも、アキは嘘はつかない。自分を偽ることもしていない。私を面白くなくなれば喰らうといってはいるけれど、それ以外は面白ければ何でもいいという態度だもの。でも、それが、カイザーたちには分からない)

 レイシアは思考し続ける。思考の波にのまれながら、カイザーになんと告げるべきかといった点で悩んでいる。

 レイシアからしてみれば、カイザーがそこまで霧夜の事を警戒する気持ちが分からない。受けいれてしまえばいいと、そんな風に考えてしまう。

 (アキの事をカイザーがもっと知れば、そういうことしないってわかるかしら。でもアキは『魔剣』だものね。『魔剣』でも大丈夫だと知らしめるのは難しいわ。『魔剣』であるから信じられないというのもあるだろうし、とはいってもこのくらい収められなければアキが面白くないといって私の魂喰らうかもしれないし)

 レイシアは霧夜がどういう存在か分かっている。わかっているからこそ、面白くなければ終わりだと思っている。霧夜にとって面白い存在であり続けなければ、霧夜はレイシアを食らうだろう。

 これで、人格のある『魔剣』である霧夜がレイシアという存在自体を気に入っているとか、特別な感情を抱いているとかならば話は楽なのだが、生憎であったばかりの少女と『魔剣』の間に利害関係以上の思いなどあるはずがない。ないからこそ、面白くなければ終わりなのだとわかりやすい。

 面白くなければ喰らう、それは霧夜とレイシアの間にある契約だ。

 (……少なくとも、カイザーたちの魂を喰らうとまでアキはいっていないんだから、私が『魔剣』使うのぐらい許してくれればいいのに)

 と、レイシアは考えているが、普通に考えて、自分たちのトップにたつレイシアが『魔剣』とそんな危ない契約を交わしていれば下につくものは気になるものだろう。

 (……朝になったら、とりあえずカイザーと話しましょう。そして、カイザー以外にもアキを危険視している存在がいるならばとことん話して納得してもらいましょう。私は、アキを手放す事はしないもの。そもそも手放すという選択をした瞬間にアキは私を見限るでしょうし)

 カイザーは霧夜をレイシアの手から離して、レイシアが魂を喰らわれる事もないようにしたいのだろうが、生憎、手放す事を決めた瞬間に魂を喰われ、自分の命は尽きるだろうとレイシアは思っている。

 (アキを手にした瞬間、アキが私に使われた瞬間、もう私はアキを手放せなくなっている。手放そうとすれば、どうするかなんてわかりきった事だし、もう契約も交わした後に、ぐたぐた言われても困るのよね)

 レイシアは思う。今更の話なのだ。『魔剣』を手元に置くかどうかなど。

 もう契約はなされてしまったのだ。どうしようもない契約が。だからこそ、もうどうしようもないのだ。

 レイシアはどうしたものかと考え、

 「カイザー、貴方に話があるわ」

 カイザーが目を覚ましてからカイザーにそう呼びかけた。





 

 

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