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レイシアによってなぎ払われた木々は家を作る材料に使われることになった。ほとんど何もかもない状況で資源を無駄にするなどという選択肢はありえないのである。
木々をなぎ払ったとき、どすんっという音とに反応して魔物が何体かやってきたもののどうにかすることができた。レイシアにかかればそれぐらいできることである。
そして一番難儀したのは、切り株を取り除く作業である。レイシアや霧夜を使って土ごと掘り起こした際は、切り株が宙を舞った。勢いよく掘り起こしてそのままの勢いでどーんと飛んでいった。遠くからも見えたことだろう。キレイドアの周辺諸国の人々に村を作っていることを悟られたくないため、そうやって掘り起こすことは禁止され、掘り起こすなり、斧で叩き割るなどして撤去する。とりあえず、家をひとつ作ってみた。
そこで全員で寝泊りする。もちろん、見張りを立ててだ。男女同じ部屋だが、特に問題は起きなかった。が、上空からの追撃により屋根を持っていかれる。
キレイドアに生息する空中を飛ぶ巨大な鳥である。見張りを立てていても対処が難しい相手である。
「あの鳥って、山のほうに飛んでいっているけど巣があるのかしら?」
屋根を持っていかれた方向を見つめながらレイシアがいう。人の住むユトラス帝国の地に隣接しているのは、森だ。その奥には山がある。レイシアたちが家を建てているのは山に近い部分だ。
木があるときは、あの鳥もレイシアたちを狙いにくかっただろうが、木を切り倒したせいで狙いやすくなったようだ。もっとも木が茂ったままであったらそれはそれで魔物による襲撃も感知しにくいのだから、やはりこの地は人にとって生きにくい。
《そうじゃねぇの? それにしてもあの山結構高いよな。標高何メートルあるんだろうか》
「上空からの襲撃の対策をしなければならないわね」
《本当こんな場所で国を作りたいとか、レイシアは頭おかしいよな》
「ふふ、頭がおかしい? 上等よ。私が作りたいのは最強国家だもの。それにしてもあの鳥、どうにかしとめたいけれど……アキ、飛べたりしない?」
《いや、あんな高度まで上がれねぇよ、さすがに。レイシアが俺を投げて倒すとか? それか弓?》
「それいいわね。アキを投げればきっと届くわ」
《あとは、魔法が使えればいいが、ここに魔法使えるやつはいねぇしな》
「そういう人材も後々集めていかなければならないわね」
さて、レイシアと霧夜は持っていかれた屋根を修復し、その屋根の上で会話をかわしていた。もしあの鳥がやってくるというのならば、落としてやるとでもレイシアは意気込んでいる。
《集まるのか? 現状まだ国どころか、村でもねぇぞ、これ》
「建国の第一歩なんてこんなものでしょう。とりあえず私たちがここで生活はできてはいるってだけでもよいことよ。人数も増えているし、進歩しているわ!」
《まだまだ、国なんていえねーけどな》
「そのうち、誰にも文句を言われない国にしてみせるわ」
《人間の寿命が終わるまでにできるのか?》
「できる、できないではなく、するのよ!!」
レイシア、霧夜の言葉に対して自信満々に言い放つ。どこからそんな自信がわいてくるのかは定かではないが、やる気満々である。
「レイシア様、休まなくて大丈夫でしょうか。ずっと見張りをしていますが」
「問題ないわ。一匹ぐらいあの鳥を落としたいの!」
《まだ落とせるかもわかってねぇだろうが》
ちなみに、レイシアはあの鳥を落とす! と意気込んでおり、休みもせずに空を見上げている。あの鳥を一匹でも落としてからではないと見張りをやめる気はしないらしい。どちらにせよ、あの鳥をそもそもどうにか出来るかを証明しなければこのキレイドアでは生きていけないだろう。
しばらくすれば、上空をとぶあの鳥が見えた。
レイシアのいる場所を狙っているわけではないだろう。通過しようとしているところに霧夜を投げる。しかし突き刺さらない。動いているそれに当てるのは難しかったようだ。霧夜は空へと舞い上がり、そして落下する。
霧夜を投げられたところでレイシアの存在に気づいたらしいそれは、レイシアに向かってくる。鋭い嘴がレイシアのことを狙っているが、まだ落下を続ける霧夜はレイシアの手元には返ってきていない。
レイシアは、長剣を抜き、なぎ払うように手を動かす。それの嘴へとあたり、それがよろめく。長剣は、折れた。それの嘴は硬いらしい。
レイシアは仕方がなく、それの体を蹴り上げる。嘴以外の部分は硬くないらしい。流石加護もちといったところか、それを肉弾戦で倒そうとしている。とりあえず上へ飛び上がれないように翼を引っ張っている。無理やりそれが飛び上がる。そのころ、霧夜が地面に落ちた。
霧夜を取りにいく暇はレイシアにはない。よろよろと飛び上がったそれの上にいるレイシアはそれへの攻撃をやめない。しばらくしてそれは上に乗せたレイシアごと落ちた。もっともレイシアは地面にたたきつけられる前に飛び降りてなんとか着地する。ドスンッという音を立ててそれは落下する。
《……めちゃくちゃやってるな。肉弾戦しているとか。つか、剣が折れるとかどんだけ硬いんだよ、こいつの嘴》
レイシアが霧夜を使わずにそれを倒したことに、霧夜はあきれたような声を出す。
また、その戦いを見ていた周りは周りで呆けているのであった。




