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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第三章 魔剣と少女の村づくり

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 カイザー含む傭兵たちと、『災厄の魔剣ゼクセウス』の心の距離は遠い。

 普通の常識を持ち合わせていれば、『魔剣』と共に生きようなどとは、誰も考えない。『魔剣』はそれだけ危険であり、未知数の存在である。

 《この辺に作るのはどうかと思っているが……、どうするか》

 「ん? このあたりの木を薙ぎ払えばいいってだけでしょう。もうやっていい?」

 《待て待て待て、一度薙ぎ払ってしまえば木っていうのは育つまで時間がかかる。下手に薙ぎ払うべきではないと、前から言っているだろう》

 ……しかしだ、カイザーは聞こえてくる会話に頭が痛くなりそうであった。

 この会話を聞いている限り、どちらかといえば常識的な発言をしているのは『魔剣』である。そして考えなしに行動をしようとしているのはカイザーがついていくと決めた少女である。

 少女は、レイシアは、カイザーからすればついていくのに十分な強さを持つ少女である。突拍子もない事を言うのもまた魅力ともいえるだろうが、やはり、『魔剣』を進んで所持するのもアレであるし、加えて国づくりという野望に『魔剣』をかかわらせる事も正直許容が出来ない。

 (……それも『災厄の魔剣』とは)

 他の『魔剣』なら――、寧ろ意志もなく本能のままに人を狂わせる『魔剣』にレイシアが打ち勝って、それを使っているというのならばそれの方がまだ理解出来る。

 『災厄の魔剣・ゼクセウス』は自我を持ち合わせている。本能のままに魂を喰らう『魔剣』とは違う。意志がありながら、人の魂を喰える――というその事実の方が脅威である。

 如何に現状レイシアの事を面白がって、レイシアと共に歩む事を決めているとはいえ、所詮『魔剣』である。今まで散々使用者の事を狂わせ、たった百二十年の間でその名を響かせている『災厄の魔剣』。

 それは、その『魔剣』がそれだけ人を狂わせ、人を破滅に追いやってきた証であり、『魔剣』とはいえ、たった百二十年の間でそれだけ破滅を生み出してきた『魔剣』は少ない。意図的にそれを起こしてきた『魔剣』―――それを考えれば、カイザーが警戒するのも無理もない話なのだ。

 《チュエリーはどう思う?》

 「ここで問題はないと思われます。森の深みの部分に存在しますし、川も近くにあります。魔物は来ますが、レイシア様とゼクセウス様が揃っているなら敵はいないでしょう」

 そしてこのキレイドアの中で生活していたというチュエリーという女についても、カイザーは少しは警戒していた。

 そもそも人の手の加えられていない土地であるキレイドアに一人で入り、生活できたという時点で何かあるとしか思えない。キレイドアという土地に逃げ込まなければならないだけの事を犯したのだと考えるのが自然であるが、流石『災厄の魔剣』さえも受け入れるレイシアというべきか、一切チュエリーの過去について気にしていないというのだからある意味すさまじい。

 レイシアとは、そういう女である。

 寧ろそういう女でなければ、このキレイドアに国を作ろうなどと考えもしない事は明白である。

 《そうか。なら、やるか》

 「そうですね。グタグタして村を作る場所が決まらないよりは、そちらの方が良いでしょう」

 「じゃあ、なぎ倒していいの?」

 上から霧夜、チュエリー、レイシアの言葉である。一振りの魔剣と二人の女は、何処までもマイペースである。カイザーが『魔剣』に対して色々考えている事も承知の上だろうが、特に気にしていないようだ。

 《俺を使うか?》

 「ええ。アキの方が切れ味が良いもの」

 《当たり前だろうが。『魔剣』が普通の武器よりも切れ味が悪かったらあれだろうが》

 「それもそうね。切れ味が悪い『魔剣』とか笑えるわ。っていうか、『魔剣』って折れたりするの?」

 《折れた事はないからわからんが、折れたら俺の寿命も終わりだろうな》

 「あら、それは困るわね。固いものとか切らない方がいいのかしら?」

 《いや、多分大丈夫だ。オリハルコンに切りかかっても俺は折れなかった》

 「オリハルコンなんて切った事あるの?」

 《……いや、流石に切れはしなかったが。いつのだったか忘れたが、大分前の使用者が狂ったままオリハルコンに切りかかってな、正直折れるかと思った……》

 「あら、もしかしてびびってたりした?」

 《……ちょっとな》

 「アキって『魔剣』でも人間臭いわよね。面白い」

 《……ちょっとだけだぞ。本当に》

 レイシアと霧夜はなんだか仲良さそうに会話を交わしている。寧ろ『魔剣』である霧夜の事をからかってさえいるレイシア。

 やっぱりその会話をすぐ近くで聞いているカイザーは何とも言えない気持ちになってしまうものである。

 『魔剣』を意志があるとはいえ、モノとしてではなく、一人の個としてレイシアは扱っている。意志があるというのならばそれもありなのかもしれないが、やはりカイザーはまだ受け入れられない。

 キレイドアでレイシアに追いついてからカイザーがずっと思っている事なのだが、霧夜があまりにも人間臭い。

 (……『災厄の魔剣・ゼクセウス』が自我を持っているなんていう話は聞いたことがなかった。今まで隠していた? それも何のために? あとなんでこの『魔剣』は変に常識的なんだ? まるで人のようである。でも人であるというならば、人の魂を喰らうなんて真似はまずしないだろう)

 本当に、考えてみてカイザーは霧夜の存在がよくわからなかった。

 そしてそんな風にカイザーが悩んでいる中で、木は薙ぎ払われるのであった。





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