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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第二章 魔剣と少女の森での生活
31/197

13

 「ここはなぎ倒していい?」

 《……あのなぁ、もうちょっと考えろって言っているだろう》

 「ここもあそこもダメって、どこならいいのよ!」

 《知るか! でもレイシアみたいに考えなしにどこでもなぎ倒すっていうのは論外だからな。村を作る場所の候補をいくつかあげておくぐらいに留めておくのがいいだろう》

 「面倒だわ」

 《……レイシアが勧誘しているっていう村人候補たちの意見も聞いてからどうにかするのがいいからな。本当にいるのか甚だ怪しいが》

 「失礼な奴ね。私はラインガルが滅んでから国を作る事を目標に動き続けたのよ? 勧誘はきちんとやっているわよ」

 行き当たりばったりで、短い付き合いの霧夜にもわかるほどに大雑把な性格のレイシア。本当に勧誘に乗ってくれたものが居るのかと霧夜は何とも言えない気持ちになる。

 「レイシア様も、ゼクセウス様もこのキレイドアで本当に余裕ですね」

 レイシアと霧夜の傍には、第一国民であるチュエリーが苦笑いでそう告げる。

 軽口をたたいている彼らは実は魔物と対峙していたりもする。キレイドアでしばらく暮らすうちにレイシアと霧夜はキレイドアの魔物に大分慣れていた。

 彼らの特性なども理解してきており、最近では割と対処が簡単になってきている。

 「私とアキが居ればここの魔物たちでも楽勝よ」

 《大きく出すぎだろ。キレイドアはまだ未知の場所なんだから、油断しすぎるといけないぞ。油断は禁物だ》

 「ゼクセウス様は本当に噂とは違いますね。私もレイシア様とゼクセウス様が揃っていれば何も問題がないと思いますが」

 人間二人と、魔剣が一振り。そんな中で一番慎重な発言をしているのが魔剣である霧夜というのは何ともおかしな話である。

 「アキ的には、どういう場所が一番いいと思う?」

 《とりあえず水源はちかい方がいいとは思う》

 「それはそうね。人には水が必要だわ。幸いキレイドアは水源には困らない土地のように思えるけど、ただ水に潜む魔物も馬鹿に出来ないわ。あまりにちかづきすぎると襲われるなんてことにはなるのではないかしら」

 《それはそうだ。というか、キレイドアで生活するなら危険と隣合わせなのは当然だろう。少しぐらいのリスクがあるのは当たり前だ。このキレイドアに生息する魔物の生息地なども考えて土地は選ぶべきだ》

 「まだ未知の事が多いものね」

 《そう。だから候補を探しながら何がどう危険なのかっていうのを学ぶのも重要だろう。キレイドアに好き好んで住まおうなんて馬鹿はそうはいない。そんな物好きな連中を死なせないためには情報は必要だ》

 『魔剣』の霧夜は相変わらず真面目にまともな事を言っている。

 暁霧夜は元人間の『魔剣』である。『災厄の魔剣』なんて恐れられていて、人としての感覚はおそらくもう持ち合わせていない。それだけ剣として生きた生が長すぎたというべきか、暴虐な一面も持ち合わせている。

 が、これだけ真面目な発言も出来る霧夜からは、人間だった頃の真面目な性格がうかがえる。

 チュエリーは、レイシアと霧夜の会話を聞きながらも、二人の会話が面白くて小さくくすくすと笑ってしまう。

 (『魔剣』なのにゼクセウス様は本当に面白い性格をしておられる。レイシア様もこのキレイドアに国を作ろうなんてなさっている方はそうはいないもの。故郷を出る事になってキレイドアで暮らす事になった時はどうなることかと思っていたけれどお二人に会えた事は本当に運が良かった)

 チュエリーは事情が重なり、キレイドアにいる。人生に希望は正直なかった。だけど、レイシアと霧夜に出会えた。そしてこんな国づくりなんていう途方もない目標の手助けを出来ることがなんだかわくわくしていた。

 《王様になるなら国民をコントロールもしなければならないって、思うが……レイシアにはそんな難しい事できねぇか》

 「何よ、馬鹿にして」

 《いや、だってレイシアは国民を上手く動かすなんて器用な真似できねぇだろ》

 「そうね、じゃあアキがやってよ」

 《……レイシア、『魔剣』を国政にかかわらせようとするな。俺は武器だから、そういうのは人が考えるもんだろうが》

 当たり前のように国を作ったとして国政に『魔剣』をかかわらせようとするレイシアはやはりどこかずれている。

 幾ら自我が明確だろうと霧夜は『災厄の魔剣』である。

 幾ら真面目な事を言っていようともその心は愉悦を望んでいる存在である。

 それを理解していながら、国政にそれをかかわらせようとするなんてイカレているとしか言えない。

 「剣でも、アキはアキだもの。それにアキに任せた方が面白い国が出来るわ、きっと」

 「そもそも、現段階でもゼクセウス様は国づくりにおける頭脳を担当しているわけで今更だと思うのですが」

 二人とも『魔剣』に任せ過ぎである。多分まともな考えをする存在が居れば必死で止めるだろうが、生憎ここにはまともな人間はいなかった。

 霧夜はそんな二人に、呆れたように溜息を吐くのであった。




 ―――それから二人の人間と一振りの『魔剣』はキレイドアをもっと熟知するために行動をうつし、村を作るために適した場所を探し出すのであった。



中途半端かもしれませんが、二章は一旦これで終わりにします。

仲間一人と出会い、そして村づくりのために動き出しています。

三章は色々人が増えていく予定です。

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