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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第二章 魔剣と少女の森での生活
29/197

11

 「戦える奴以外? そうね、あんまりいないわ」

 魔物を引きずってかえってきたレイシアに、霧夜とチュエリーが早速どういう人脈を作ってきたのかと問いかけてみた所、案の定そんな答えが返ってきた。

 レイシアがそういう人間であるという事は理解していたものの、予想通りの答えに霧夜は少し落胆した。

 国を作りたいなどと、そういう大望をレイシアは抱えている癖に色々と考えが足りな過ぎるのだ。それを思うと、霧夜には口が存在しないが、溜息も吐きたくなるものである。

 《やっぱりか…》

 「レイシア様ですものね」

 「ちょ、何よ、二人とも!!」

 であって間もないチュエリーにまで、”レイシアだから”という理由で納得されてレイシアは不機嫌そうな表情を浮かべる。

 《お前が、国を作るっていうのに考えなしだからだろうが!》

 「だから、お前っていうのやめなさいって! 別に考えなしなわけではないわよ。とりあえず私の国の国民になってくれるかもしれない存在ならアキのいう脳筋な存在だろうとも別にいいじゃない」

 《悪いってはいってねーだろうが! でも国を作るっていうならお前みたいな頭を動かすよりも手が出る奴ばっかだと国として成り立つわけねーだろうが!》

 「だから、お前ってやめなさい!」

 《どんだけ、お前呼ばわりが嫌なんだよ。あーはいはい、レイシア。これでいいだろ。でだ、脳筋ばっかの国とか絶対長続きしないからな!」

 レイシアと霧夜はそんな会話を交わす。

 まぁ、霧夜がいっていることももっともなことである。頭を動かすよりも手が出る人間ばかりが溢れている国なんて、正直言ってよっぽどの奇跡が起こらない限り長続きはしないだろう。

 (なんで、『魔剣』の俺がこんなこと考えなければならないんだよ!!)

 霧夜はレイシアと会話をつづけながらもそんなことを考える。

 霧夜は元人間とはいえ、『魔剣』である。ヒトではなく、モノであり、道具だ。幾ら自我があるとはいえ、その本分は使われる事のはずである。

 だというのに……、何故、自分はこんな事を思考しなければならないのだろうと、霧夜は思うわけだ。

 「アキとチュエリーがいるじゃない」

 《だ・か・ら『魔剣』の俺にそんなこと任せようとするんじゃねぇ! この非常識女!》

 「非常識って何よ。だってアキは私の国のために考えてくれるでしょう?」

 《……俺は『魔剣』だぞ? 少なくとも、俺は俺が面白いように動くんだぞ?》

 「知っているわよ。でもそんな風に忠告してくる時点で、アキって『魔剣』のくせにお人よしよね」

 《あのなぁ、『災厄の魔剣』とか呼ばれている俺に何を言っているんだよ》

 霧夜はレイシアと話していて、疲れてきていた。霧夜は『魔剣』である。そもそも所有者はくるっている者が多く、こんな風に会話を交わすことに対して想定さえしていなかったのだ。

 それが面白いといえば面白いのだが、レイシアは型破りすぎるのであった。

 「それに、確かに戦好きが多いけれどアキがいっていた頭が固そうな人もいるのよ!」

 《ほんとかよ!?》

 霧夜、自慢げなレイシアの言葉に驚愕の声を上げる。

 「ええ! まぁ、少ないけど」

 《……そうか》

 「何よ、そのがっかりしたような声。足りないならこれから増やせばいいでしょう?」

 レイシアはそんな風に簡単に言ってのける。何ともポジティブというか、楽観的である。

 足りないなら、増やせばいい。

 そんな風に簡単に言うが、普通に考えてこれから未開の地であるキレイドアに作る新しい国にやってきたいなどと思う人々など数少ないだろう。

 (いっそのこと、他国で内乱とかでも起これば行き場のない連中を誘う事も出来るだろうが……。そいつらにしてみてもキレイドアで暮らすのはまずためらうだろう。国づくりねぇ……、俺も『魔剣』としての生は長い方だろうけど、国づくりにかかわった事はねぇしなぁ)

 正直人の社会で何が起ころうがどうでもいい霧夜は、世界が動乱に向かえば面白いし、国民も増やしやすいだろうなどと考えていた。

 「レイシア様とゼクセウス様は、本当に仲がよろしいですね」

 《どこが!?》

 「ええ、私とアキは仲良しよ」

 チュエリーがにこやかにほほ笑みながら告げた言葉に、霧夜とレイシアは正反対の言葉を返す。

 「本当に仲良しですね」

 《……そうか、まぁいいや。とりあえず、レイシア。国民を探しに行くにせよ、もっとこのキレイドアについて知る必要があるのは確かだろう》

 「それはそうね」

 上からチュエリー、霧夜、レイシアの言葉である。

 《まず、国づくりの大前提として人が暮らしていける場所を確保することが第一であり、次にすべきことといえば村づくりだと思う》

 「そうですね」

 「そうね」

 《外の連中に悟られないように村を作るとすると、奥地に作る必要があるから……。そうだな、奥地で村を作れそうな場所の候補を探すことがしばらくすべきことだな》

 「私もそう思います」

 「そうね、とりあえず私たちだけなら割とどこでも生活していけるけれど、大人数で生活するとなるともう少し考える必要あるわね」

 霧夜は自分の言葉に頷くチュエリーとレイシアを見ながらも、何で結局俺が仕切っているんだろうと何とも言えない気分になるのであった。





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