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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第二章 魔剣と少女の森での生活
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9

 「レイシア様は、思い切った方ですわねぇ」

 《……思い切った方っていうか、色々考えなしなだけだろ》

 チュエリーと霧夜は二人で会話を交わしている。

 この場にレイシアはいない。その辺を探索してくるといって、一人で出かけていった。霧夜は「俺を持っていかなくていいのか?」といったものの、「一人でも生きていけるようになりたい」とそんな風に口にして霧夜を置いていった。

 「何かあったら呼ぶから」といって、一人で出かけていったレイシアはやっぱり色々ずれている。まぁ、この周辺はしばらく生活しているのもあって、勝手知ったる場所となっているからよっぽどのイレギュラーがない限り問題はないだろう。

 「それで、ゼクセウス様。ゼクセウス様はキレイドアに国を作ることをどのように考えておりますか?」

 《………チュエリーも『魔剣』の俺にそんな意見を求めるな」

 「あら、だってレイシア様はゼクセウス様と私に頭を使う事を求めるといっておっしゃったではないですか」

 《確かにそういったけどよ、俺は武器だぞ?》

 「ここまで明確に意志があるのですから、人と変わりませんわ」

 《おおおう、お前も流石このキレイドアで暮らしていたってだけあって、色々ずれているな》

 霧夜は何とも言えないようにいった。霧夜が人型を取っていたならさぞ微妙な顔を浮かべていた事だろう。

 「それでどういたします?」

 《どうもなにもなぁ……。お前の言うとおり、キレイドアの奥地に作るのが良いとは思うが……。少人数で『国を作りました』なんて堂々と宣言したところで潰されるのがオチだしな。このキレイドアでも生きてこれる存在ってことで捕まえられて利用される未来が浮かぶ》

 霧夜はそんなことを考えながら、それはそれでまぁ楽しいかもしれないと考える。

 元々愉快犯である。『魔剣』として、生きる事を受け入れて、剣生を精一杯楽しんでいる霧夜であるから、レイシアがそういう目にあったとしても面白いとは思った。国を作るのを見届けるのも楽しいのだが、それで挫折するのもまた面白いかもしれないと。

 レイシアが生きているのと、死んでいるのとどちらが面白いか、それを考え解かなければならないかななどと考えている霧夜である。

 そんな霧夜に、大切な事を考える事を任せるレイシアはおかしい。普通は『魔剣』になんてそんな重要なこと任せられない。

 「その通りです。ゼクセウス様は、『魔剣』であるというのに、やはり人のような考え方をするのですね。面白いですわ」

 チュエリーは霧夜が元人間であることなど知りもしないが、そんな風に告げる。のほほんとしているように見えて、勘が鋭いらしいチュエリーである。

 《でも俺に任せない方がいいぜ? 俺はレイシアが生きようが死のうがどうでもいいからな》

 「ええ、でもレイシア様はゼクセウス様と私に任せるといいましたもの」

 霧夜がはっきりと告げても、そんな風ににこにこと笑っている。大体、『魔剣』と一緒に居てここまで落ち着いているのも、普通ではない。

 霧夜はそのことに呆れてしまう。

 (面白いけど、レイシアもそうだが、こいつも非常識すぎるだろうが!)

 そんな風に突っ込みを入れたくなる霧夜であるが、突っ込んでも仕方がないと思ったのか口を開く。

 《そうか、まぁ、どうなってもしらねーならいいけど》

 「それならばそれで楽しむとレイシア様はおっしゃったので問題ないわ」

 《……あいつは、本当に》

 チュエリーの言葉に、霧夜はこの場にいないレイシアの事を思って内心溜息を吐いた。

 (あいつが、ああだから、本来『魔剣』ならしなくていい心配をしてしまうのか。ああぁ、くそっ。レイシアを生かした方が面白くなりそうだなとも思っちまうんだよなぁ。あいつも、それがわかっているから、俺に任せようとするのか、それとも、本当に考えなしなのか……全く)

 怯えられるというのならいつものように『魔剣』らしく脅せばよかった。『魔剣』らしくただ道具としてあればよかった。短い付き合いなら、そういう『魔剣』としてあればよかった。

 でもレイシアは、くるって『魔剣』に手を出したわけではなかったから。

 明確な目的があって、『魔剣』を求めた。

 そして、国を作るという途方もないような夢を願うレイシアに興味を持った。そのために、レイシアを使い手に選んだ。

 国を作るなんて言う夢をかなえようとしているレイシアに付き合うと決めたのだからその分付き合いは長くなるのは当然だ。

 『魔剣』には明確な寿命というものは、ない。『魔剣』が消える事はあるが、どんなふうに消えていくかも現状はわからないものである。だからこそ、長い野望だろうが、付き合おうと思ったのは寿命がわからないからこその気まぐれといえるだろう。

 そんなわけで、素を出して、それで遊んでいるわけだが、レイシアは『魔剣』に振り回されるわけではなく、逆に霧夜が振り回されているという不本意なことになっている。

 「ゼクセウス様? どうなされましたか?」

 《……なんでもねぇよ。それより、これからキレイドアをどうするかだっけか》

 「はい。私はレイシア様と付き合いが短いですからね。ゼクセウス様は私とはまた違った視点で考えられるのではないかと思うのです」

 《いや、俺もそんなに付き合い長くないし》

 「それでも、ゼクセウス様だからこその視点があるでしょう?」

 チュエリーがそう言い切るから、霧夜は少し考えて口を開くのであった。




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