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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第二章 魔剣と少女の森での生活
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 さて、キレイドアの森の中で人が暮らしている痕跡を見つけたレイシアと霧夜は、その人物を探すことにした。

 しかし、

 「どこにいるのかしら」

 《さぁな。ここは広いからな》

 その存在がどこにいるのか二人には全くわからなかった。

 キレイドアは未開の地、危険な場所。そんな場所は広い。人がほとんど踏み入れた事のない広大な土地。

 危険な魔物が溢れるこの場所に、その存在がどういう目的で訪れているかも二人には見当がつかない。

 レイシアと霧夜は、レイシアの「最強の国をキレイドアに作りたい」という願望のもとにこのキレイドアを徘徊している。

 キレイドアがどういう場所か知るために。

 キレイドアの中で人が生活できるっていう事を証明するために。

 彼女たちは野望を胸にここにいる。しかし、レイシア以外にここにいるものはどういう目的でこの場にいるのだろうか。何を思ってこの危険な森の中へと足を踏み入れたのだろうか。

 こんな場所に踏み入れるものが自分以外にも居ることが面白くて仕方がないと、その存在に対する興味がわいて仕方がないと、そんな風にレイシアは笑みをこぼす。

 「―――うふふ」

 《何、不気味な笑みを浮かべてんだよ》

 「あら、不気味なんてひどいわね。女の子に向かってそんなこといってはもてないわよ?」

 《もてるももてないも、俺は『魔剣』だしなぁ》

 「『魔剣』でも、アキは人化出来るし、元人間だってことは女の子に欲情したりしないの?」

 《バッ、お前、なんてこと聞くんだ!》

 レイシアのからかうような言葉に霧夜は叫んだ。

 その反応にレイシアは少し驚く。長い時の中を、生きてきた、そんな『魔剣』があまりにもウブな反応をしているからだ。

 「アキ……あんたもしかして童貞なの?」

 《ぶっ》

 レイシアの問いかけた言葉に霧夜は噴き出した。そのまま、咽るような声がレイシアの腰に下げられた『魔剣』から発せられる。

 「図星なの? え、うそ。人間として生きたっていってたわよね。それに加えて『魔剣』としてかなり年いっているでしょう? それで童貞って」

 《あー、もううっせぇ!! 人間だった頃の俺なんて十代のガキだぞ。それに俺が『魔剣』として人化出来るようになったのはここ数十年だし、長い間剣として生きてきてんだよ! 欲情とかそんなの今まで考えたことなかったしな!!》

 霧夜は思わずといったようにそんなことを叫んだ。

 ちなみにこれは、キレイドアの森の中を探索しながらの、魔物を葬りながらの会話である。なんとも緊張感がない会話である。

 「あはははっ」

 《な、なんだよ》

 「もう、面白い。アキって本当に『魔剣』としても、『災厄の魔剣』で最高峰の実力と知名度だしさ、アキ自身も面白い」

 レイシアは心底おかしいとでもいう風に笑っている。

 自分が手にしている『災厄の魔剣』が面白すぎて、おかしそうに、愉快そうに笑う。

 《な、そんなに笑うな!》

 「あはは、だって童貞って面白すぎ。童貞って。『災厄の魔剣』が童貞ってっ」

 《何度も連呼すんじゃねぇよ。女が連呼することじゃない!》

 「あはははははっ、もう何いってんの、アキ。アキって所有者を不幸にする、災厄を生み出す魔剣とか言われている癖に、ウブとか、本当やばい。笑う」

 《いつまで笑ってんだよ!》

 いつまでも笑い続けるレイシアに、霧夜は思わずといったように声を上げた。

 (『災厄の魔剣』なんて呼ばれている癖にこんなにウブだなんて。魔剣らしく雰囲気だそうとしているのか、なんかやってたし。実際はこんなんだし、やばい面白い)

 互いに利用し合っているだけで、信頼関係なんてであったばかりのレイシアと霧夜にはないけれどもそれでも互いに面白いという感情は確かにあって。

 「だって面白いもの。アキって本当に面白い。私が手に入れた『魔剣』が貴方で良かったわ。だってこんなに面白い、自我を持ち合わせた『魔剣』なんていないもの」

 《俺も俺のほかに自我持っている奴ってか、これだけ自我を保っている奴は見た事ないな》

 「こんーな面白いアキを使うことが出来る私は幸運ってことね」

 《……そうかもな》

 「あら、アキてれてる?」

 《……さぁな》

 案外照れ屋でウブらしい霧夜に、レイシアは益々面白そうに笑っている。

 そうしている間にも、レイシアはどんどんキレイドアの中を進んでいた。

 「あ」

 《また痕跡だけか》

 そうしているうちに、また見つけたのは痕跡である。

 このキレイドアの中で確かに生活しているだろう者の姿は見えない。

 ただ痕跡だけしか、レイシアたちには見つけられない。

 「もっと探してみましょう。近くには居ると思うんだけど」

 《まぁ、そうだな》

 「まったく、この私が探しているんだからもっと見つかりやすくていいのに」

 《なんて無茶ぶりをいってんだよ。向こうはレイシアの事なんてしらねーし、レイシアが見つけやすい場所にはわざわざいないだろ》

 そんな掛け合いもしながらも探すが、結局痕跡以外は見つからなかった。




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