エピローグ
10/1 三話目
レアシリヤはその一連の戦いを持って、聖教会から『闇の国』『魔王の国』『闇に堕ちた国』『狂った女王の国』などと様々な呼び名をされることとなる。
女王レイシアは、『魔剣』を伴侶とした。
その事実がまず、まともな思考をしている者に受け入れられないのは当たり前のことであった。
当の本人は「本当に『魔王の国』なんて呼ばれているなんておかしいわね。今後発生する『魔王』とどう区別する気なのかしら?」と楽しそうに笑っていた。
キレイドアという未開の地に築かれたその国は、徐々に力を増していくことになった。
居場所のない者たちの行きつく先になり、国民の数も増えていった。女王はどんな人種もどんな事情を抱える者も受け入れていたため、急速に発展していったわけである。
《災厄の魔剣・ゼクセウス》の名を持つ霧夜のことも、その認識を書き換える作業が彼に内緒でひそかに行われていた。本当に霧夜のことを『建国の剣』にしようと、レイシアやレアシリヤの民は考えていたようである。
レイシアはただ面白そうだと思ってそうしているだけだが、他の民はこれを重要な任務だとはりきって取り組んでいたようだ。……その結果、「あ、『建国の剣』様だ」などと移住民の子供に言われるようになり――霧夜はようやくそこで事の顛末を知り、ひと悶着あったようだ。
聖教会は『魔剣』が国政に関わる国として、当然レアシリヤを敵視した。ただ何度も何度も侵略を試みてもその国は倒れなかった。
聖教会の前には女王レイシアと、『魔剣』である霧夜が立ちはだかった。
国のトップが前線に出て戦い、その強さを示す。
どんな侵略者たちが現れても、女王と『魔剣』はぶれることなく、撃退し続けた。
そして国内では力自慢の者たちが王位を奪おうと挑んでくる。それらに関しても全て彼女は勝ち続けた。
……それこそ、レイシアが子供を身籠っている時でさえ、彼女は周りが止めるのも気にせずにいつも通りだった。彼女が加護もちだからなのか、幸いにも子供は無事に生まれていった。
少女と『魔剣』の子供たちも、その両親の姿を見て育っていき、その考えに染まっていくことになる。
『魔剣』である霧夜の方がまともな思考をしていたのか、レイシアと子供たちが突拍子もないことをするのをとめる彼の姿が国ではよく見られることとなった。
レイシアは、レアシリヤを建国した偉大なる女王としてその名を歴史に刻んでいった。
元ラインガルの姫であったことなど、女王になった後のレイシアの偉業を前にすればもう誰も思い出さないほどの些細なこととなった。
その女王が治めるその国は、聖教会以外からはレイシアの望む通りに最強国家と呼ばれた。
大陸最強の軍事国家であったラインガルの亡びを目撃した少女は、そうして最強国家をつくるという目標を叶えたわけである。
とはいえ、その国が最強であり続けるためには勝ち続けるしかない。
――だから、レイシアは戦って戦って、戦い続けた。
戦い続けた彼女は、全勝し続け、女王であり続けた。
年を重ねてもなお、彼女は現役で、最強を示し続けた。
だけど、それでも人間である彼女の命は有限である。
「私の命も、そろそろ無くなりそうね」
《……ああ》
「ほら、アキ。私が神の元へ、魂を奪われちゃうわよ。喰らいなさい」
年を取り、出会った当初より弱々しくはなっている。とはいえ、レイシアは命の灯が消えかけている時でさえいつも通りだった。
その魂を『魔剣』が喰らったかどうかは、本人たちのみが知る話である。
というわけでこれで完結です。
物凄く時間がかかってお待たせしてしまいましたが、書きたいことは書けたと思います。
結構書いていて難しかったですが、最後まで書ききれたので満足しています。
ただ矛盾点なども多々ありそうなので、後から見返して修正するかもしれません。
『魔剣』という単語が好きなので、レイシアと霧夜の物語は書いていて楽しかったです。
此処まで読んでくださりありがとうございます。少しでも何か感じていただければ嬉しいです。また感想もいただければ嬉しいです。
2023年10月1日 池中織奈




