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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第十章 魔剣と少女と戦いと

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12

 魂をただただ喰らい、敵を殲滅する。

 霧夜は最近、よく敵対する者の魂を喰らっているのもあり、その力は増していると言えるだろう。

 誰かの魂を喰らうと言う行為は、『魔剣』にとっては力をつけるための食事のようなものである。霧夜はレアシリヤを存続させたいので、力をつけていけることは喜ばしいことだった。

 霧夜に乗ったり、掴まったりしながら空から攻撃してくるレイシアのことはそれはもう噂になっていた。

 見目麗しい亡国の姫君が次々と侵略者を撃退していく。

 それは現実味のない物語のようなもの。噂だけが独り歩きしていると勘違いしているものも中にはいる。またその噂が事実だと知っているものに関してはどちらかといえばレイシアのその力を警戒している様子を見せている。

 人とは違う力を持っているというのは、それだけ周りにとっては恐怖の対象なのでそういう風に警戒されるのは当然のことであった。

 そしてその『魔剣』の噂が広まれば広まるほど、聖教会のことを刺激する。

 ただでさえレイシアは聖教会を敵に回している行動をし続けている。彼らがレイシアとその所持する『魔剣』を亡ぼそうとするのは当然であった。

 ――だからこそ多くの魔法使いを投じてまで、滅するために動いている。

 その関係で、レアシリヤの中にも一人死者が出てしまった。誰も亡くならずにすべてが上手くいくのが一番良い。だけれども、それは難しいことなのだ。

「――聖教会の魔法使いを相手にするなら、私とアキで行くべきね。あとは竜人たちにも協力してもらおうかしら」

《そうだな。普通の奴らが魔法使いを相手にするのは難しいだろう》

「ただ殺されに行くようなものだものね。それに他国の連中も聖教会が動き出したからと、私たちが亡ぼされるのは当然だと思っているみたいだもの。それを覆せたらきっと楽しいわよ。まぁ、覆す気しかないのだけど」

 時刻は夜。

 人の行動が狭まるその時間に、レイシアと霧夜は森の中を歩いている。

 ――つい先日、聖教会が動き出したからである。どれだけレイシアと霧夜が特別で、力があろうとも真正面から聖教会の魔法使いを相手にするのは骨が折れる。どうやら本気でこちらを潰しにかかりたい彼らは、幾人もの魔法使いや教会に仕える信仰深い騎士たちをこちらに送り込んでいる。それだけの戦力が送り込まれるということがまず異常である。

 聖教会は、戦わずして勝つことも多い組織である。それは彼らがあまりにもこの世界で有名で、力を持つ存在だから。そういう敵に回したら潰されることが分かっているからこそ、そのまま傘下に下ったり、和解することも多い。

 彼女は全く聖教会に怯えていない。どれだけ力を持っているかなど関係がない。自分の物を奪おうとする存在を誰であろうと許す気はない。何もしないままに自分の物が奪われることなど嫌なのだ。

「天幕があるわね。見張りもいるけれど、行けるかしら」

《まぁ、夜襲は襲撃者側からしてもリスクが大きいからな。それだけ視界が悪いし、夜に動く魔物も多いし。わざわざこのキレイドアの地で夜に襲撃をするのって結構危険だから、向こうも夜襲が行われるとあまり考えていない気がする。だから行けんじゃね? 少しずつ敵を間引いて、殺して、減らしていけばそれでいいと思う》

「それもそうね。よしっ、やりましょう」

 レイシアは楽しそうにそう言い切ると、まずは石を近場で投げてみる。そういう何かの音を聞けば魔物が現れたのではないかと警戒して出てくるからである。この地には魔物が多く生息しているので、そういう魔物の警戒はしなければならない。

 音が鳴ると、すぐに騎士たちが動き出した。

 魔法使いらしき人の姿が見えないのは、今は休んでいるからだろう。レイシアには分からないことだが、魔法を使うには集中力がいる。寝不足では魔法は上手く使えなかったりするのもあり、基本的に休むようにしているのだろう。特に聖教会に所属する魔法使いはエリートばかりである。

 そのエリートである彼らは、死の危険を感じるような状況に陥ったことはないだろう。だからまだ油断している。

「何か音が――」

 近づいてきた存在を殺す。

 ただその息の根を止めて、ひっそりと天幕へと近づいていく。

 少女がただ一人で聖教会の野営地に襲撃を仕掛けてくるなど、彼らは考えてはいない。

 魔法使いの居る天幕の場所はすぐに分かった。

 それだけその存在は聖教会にとっても特別だからこそ、厳重に守られるものなのだ。

 ――その周りには、何名かの騎士がいる。

 彼らは欠伸をして、退屈そうにしている。こういう場所で緊張感がないのは、やはりレアシリヤのこともキレイドアのことも舐めているからだろう。

「あの中にいそうよね」

《どう潰す?》

「魔法使いの息の根をとめたいから、上から何か落とす? 火で燃やすとかもありかしら」

《でも周りの木まで燃えて、キレイドアの森自体が消滅レベルになるとやばいぞ。その分、侵略しやすくなるし》

「まぁ、それはそう。毒でもぶちまけましょうか」

《そうするか。俺がばらまいてくる》

 霧夜はそういうと、低空で自身の身体を浮かせる。その剣先に毒物の球体のものをぶらさげる。これは投げればそのまま破裂し、毒が放出されるものである。



 

 

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