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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第十章 魔剣と少女と戦いと
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4

「アキは、この部屋にもっと追加したいものとかある?」

《追加したいものねぇ。俺は剣だし、特には。家具なんてなくても構わないし》

「まぁ、アキは何処でも生きていけるだろうけれど、アキは私の伴侶として人の姿になることだってこれからもきっとあるわよ? その時にどういったものがいるのかは考えておいて」

《必要があれば、人の姿にもなるか……。といってもなぁ、俺は長い間、剣としての姿で過ごしてきたから何がいるっけってなってる》

「これからは人の姿に今以上になってもらうようにはなるわよ。だってあんたは私の伴侶なんだもの。私の代わりに手助けもしてもらう予定だもの》

 レイシアは楽しそうにそう告げながら、ベッドに寝転がっている。

 彼女は『魔剣』である霧夜は本当に国政に深く関わらせようとしている。それは他の国からしてみれば、正気の沙汰ではないと思われるようなことである。

《……レイシアは頭使うことはあんましないもんな》

「そうよ。だから、あんたが文官を率いる感じね。宰相的な役割?」

《いや、俺にそんなのやらせようとすんなよ。流石に宰相的な地位はちゃんと人にやっておけ》

「まぁ、流石にアキにはそういう地位はやらないわよ。アキはあくまで私の伴侶だもの。それに私が死んだ後、アキを縛り付ける気はないわ。あんたが好きなようにしたらいいもの」

 彼女は霧夜をずっと国に縛り付ける気は全くない。

 建国には関わらせるつもりだし、この国にとっての特別な剣として広めたいとは思っている。それでもずっと、レイシアが死んだ後もこの国の礎となることを望んでいるわけではない。

 自分の自由を阻害されることがレイシアは嫌がっている。だからこそ、誰かに何かを強要することはしようと思わない。

《ははっ、そんな風に言われると気が楽だ。下手に国を支えてくれなんてちょっと気が重いからな》

「アキって、そういうところは小心者よねぇ。城は出来たし、人も増えてきたから色々ともっと整えていかなければならないわ。ひとまず城は作ったわけだし、次は城下町ね。城を囲うように街を作ってどんどん大きくしていきたいわね」

 楽しそうに彼女は、将来の話をする。その先に不安なんて全くないと、そんな風な様子を見せている。

《城下町って響きがいいよなぁ。黒壁の白を囲うように作るものだと、周りも黒い壁で囲んだ方がそれっぽいかな?》

「まぁ、そうね。街全体を壁で囲うのはやるべきだもの。それも黒で統一して、ドワーフたちには良い感じに城の上から見て綺麗な並びなればいいわよね」

《そうだな。一から作るんだから、ちゃんとしたものにしたいよなぁ。というか、城下町を一から作るなら今の家は作り変える感じか?》

「そうね。今の作っている仮拠点ってまだ簡易なものだもの。ちゃんとした家を作ってあげたいわよね。それぞれの国民が望むものにはしたいけれど。アキも城の外に何か仮拠点欲しいなら建てていいわよ」

《それ、いるか?》

「でも城下町でそういう場所がある方が何かあったと時に動きやすいんじゃない? それにアキって秘密基地とか好きでしょ?」

 からかうように彼女が藁れば、霧夜は肯定の言葉を返す。

《ああ。そうだな。そういうのは好きだ。……どうせならそういう場所も作るか。その方が楽しいし》

「私は女王としてこの場所を統治するけれど、自由に外を歩き回ることをやめるつもりはないわ。だからそういう時に使える場所にしたいわね」

 彼女はこの場所が国として認められ、大国へと成長したとしても自由気ままに外で歩き回る気満々である。普通の王族であるのならば、自由はほとんどなくなるだろう。警護の面もあるのだから。

 でもレイシアは、おそらく自分が好き勝手動いて死んだところでそれはそれと思っている。この国は強者が治めるとしているので、レイシアが死んだらまた別の強者が治めるだけである。

「私は死ぬ気はないけれど、死んだ時のことはちゃんと国内で伝えておくべきね」

《まぁ、それはそうだな。レイシアが自由に動けば動くほど、そうやって死ぬ可能性だって増えるし。そういう何かの事態のために備えておくことは重要だ》

「そのあたりもちゃんと考えてはおくべきね。アキ、書簡を送ってきた相手とは戦いになるかしら」

《そうだな。こっちが要望を受け入れなかったら、それだけ向こうは反感を持つだろうし。まぁ、このあたりは魔物も多いから攻めてくるのは難しいだろう。ただそのあたりも準備しておかないと》

「ふふっ、そうね。とりあえず負けるわけにはいかないわね。負ければそこでこの国は一度終わる可能性もあるから。折角作ったものを奪われるのは癪だし、全員ぶっ飛ばして最強国家としての名を広めたいわ」

《ああ。それが一番いいな》

 そうやって魔剣と少女は楽しそうに会話を交わすのだった。



 ――戦いの火種は、既に燻っている。

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