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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第十章 魔剣と少女と戦いと
171/197

3

「凄いわね」

《ああ。これだけのものをこんな風に作るなんてすごい》

 レイシアと霧夜は、目の前に出来上がった城を前に感嘆の声をあげている。

 城づくりに関しては、レイシアと霧夜は基本的にかかわっていない。建設技術の一つも持ち合わせていないので、やっていることと言えば資材集めぐらいだった。

 それ以外の事に関してはレイシアたちは役には立てないので、基本的には建設には関わらずにのんびりと魔物退治をしたり、他の手伝いをしたりしているぐらいだった。

(前世で写真で見たことがある西洋のお城と同じような造りだけど、こうやって全面が真っ黒だと威厳があるなぁ)

 人間であった頃の霧夜はまだ子供と言える年齢だった。

 だからこそ海外になど行ったこともなかったので、こういう城は前世で写真で見たものと今世で訪れたことのある場所しか知らない。

 基本的に『魔剣』として忌み嫌われ続けてきた霧夜が長期間城なんて場所に留まることもなかったので、これからこの城が自分の住まいかと思うと不思議な気持ちになっていた。

(『勇者』に巻き込まれて召喚されて、死んで『魔剣』となって、そして今は建国するレイシアの伴侶としてここにいる。……俺の人生、波乱万丈すぎるなぁ)

 改めて考えてみると、あまりにも波乱万丈。色んな事が霧夜の人生では起きている。そもそも『魔剣』となって、その名にふさわしく生きていこうと決めて、散々好き勝手してきた霧夜は誰かと結婚することなど考えたこともなかった。人の姿に変化が出来るとしても、あくまで彼は『魔剣』である。

 人類の敵ともいえるようなそんな存在なのだ。

 そんな『魔剣』のことをこのレアシリヤの人々は驚くほどに受け入れる。トップであるレイシアが受け入れているからというのもあるだろうが、それにしてもこの場所の住民たちは『魔剣』である霧夜を受け入れすぎである。

「アキ、城内を探索しましょう。私とアキの部屋を確認しないと」

《ああ》

 その城は他でもないレイシアと霧夜のために建てられたものである。

 装飾がふんだんに施された城内は、とてもじゃないが建国されたばかりの国の城とは思えないほど立派だ。ドワーフの血を引くものたちが全力を注いだ結果、こんなに立派な城が出来上がったのだ。また竜人たちが集めていたという宝石も使われており、他の国ではお目にかかれないものが出来上がっていた。

「アキ、凄いわね。ラインガルの城と引けを取らないと思うわ」

《そうだな。こんな立派な城がレイシアの物か。すげぇな》

「あら、私だけの物じゃないわよ。アキの物でもあるわ。あんたは私の伴侶なんだから」

《それもそうか。……それにしても広いな。これだけ広いものをすぐに作るなんて凄まじい》

「国民たち全員をひとまず収容できるぐらいには広いわよ。有事の際は此処が砦になるでしょうね」

《これだけ大きいと落とすのは大変だろうな》

「魔法使いやアキみたいな『魔剣』が居たら簡単にこういう場所でも崩せるわよ。建物自体を崩さなくても人を殺しつくせばそれで終わりだもの」

 二人はそんな物騒な会話を交わしながら、城内を歩く。

 外は出来上がったものの、まだ内部の家具などは準備中なので慌ただしく動いている国民たちの姿が映る。

 ひとまずレイシアと霧夜の寝室と玉座のみはきちんと整えられているらしいが、それ以外はこれからである。

《この上登ると見張り台か》

「そうね。結構見晴らしがよいわ」

 キレイドアという土地の中に建てられた巨大な城。その目立つ建物は周辺に住まう魔物たちにとっても興味深いものである。彼らはその場所に近づくと痛い目に遭うと理解するまで城に近づいてくるだろう。

 見張り台はそういう魔物たち対策でもある。空を飛ぶ魔物が窓から侵入するなんてことにもなりかねないので、きちんとした対応が必要だろう。

 レイシアと霧夜はそれから様々な場所を見て回った。

 家具が全て運び込まれているわけではないとはいえ、ある程度は完成している。その場所を次々と見て、レイシアは満足した様子である。

「流石、私の国の民だわ。これだけのものを短期間で作るなんて褒美を与えないと」

《褒美を与えて褒めるのは良いことだな。ここの連中はレイシアを崇拝しているから、その分やる気出すだろうし。褒美って何を与えるんだ?》

「とりあえずこのあたりで採れた宝石とか、あとは食べ物ね」

《レイシアからの感謝状みたいなのも作れば?》

「何よ、それ、何か価値あるの?」

《レイシアっていう女王から承ったものなら価値があるだろう。この国にもっと人が増えて巨大になった時に、それが残っていたらそれだけでその家にとっては大きな価値だな。この国には貴族とかは今の所いないけれど、後々は何かしら身分の差とか、家柄の差とかできるだろうし》

「ふぅん。アキが言うなら作ってあけるわ」

 二人がそんな会話を交わしながら最終的に向かったのは、寝室である。大きな天蓋付きのベッドが鎮座している。シンプルな家具が並び、剣である霧夜をたてかけるスペースも作られている。

「良い部屋だわ」

《そうだな。そういえばレイシアはドレスとか、準備するのか?》

「何よ、見たいの?」

《……たまには》

「じゃあ、着てあげるわ」

 レイシアは霧夜の言葉に笑ってそう答えるのだった。



 

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