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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第九章 魔剣と少女と亡国の人々

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 反乱軍は徐々に勢力を増し、結果を出している。

 ……という報告をレイシアと霧夜は受けている。レイシアたちはまだ動いてはいない。

 レイシアとしてみれば、思いっきり暴れられるのならばすぐにでも暴れたいと思っているわけだが……、まだ動かないで欲しいと言われていて動いていない。

 レイシアの力を借りるのは、まだ先と思っているのかもしれない。

「退屈だわ。城を取り戻す工作を進めているらしいけれど、そういうのなしに真正面から行くではダメなのかしら」

《それが出来るのはレイシアだけだろ》

 レイシアはしばらく反乱軍たちの本拠地でゆっくりと過ごしている。

 とはいえ閉じこもっているわけではなく、時折元ラインガルの土地をぶらついていたりもするが。

 レイシアはさっさとラインガルを取り戻す手助けを行い、レアシリヤに帰ることを望んでいる。

 ラインガルを取り戻す手伝いというのは、レイシアにとって通過点でしかない。それに時間を割いてはいられないのである。

 レイシアは基本的に思いきったらすぐに行動する性格のため、こういう準備期間は正直言ってもどかしい気持ちになるものだ。

《犠牲を出さないために準備をするのは人として当たり前のことだからな。それで強行した結果、多くの者の命が散って、憎しみが生まれるんだろ》

「アキが自分勝手な理由で呼び出されて、捨てられて、そして憎んだみたいに?」

《そうだな。……まぁ、自分がやりたいように生きていれば少なからず誰かから反感は買うものだと思う。レイシアみたいな自由な生き方をしていればその傾向は強いだろう。でもお前は周りに憎まれようと止まらないんだろうな》

「周りからどう思われるかは正直どうでもいいもの。アキだって特に気にしてないでしょう?」

《人間だったころは俺も周りの目を気にしていた。でも『魔剣』になってからはそういうのもないな。そういうのを気にしたところで仕方ないし、どれだけ気を配ったところでこちらを憎む奴は憎むもんだ》

 ――人間だったころの霧夜は、少なからず平凡だった。

 だからこそ周りの目を気にしていたし、異世界に召喚された一連の流れで当然のように憎しみを抱き……、そして今に至る。

 レイシアに関しては、周りから憎まれようがどうでもいいと思っている。それよりも自分の目的を叶える方が大事だから。

 そういう性格だからこそ、ヨームたちに止められていなければレイシアはもっと暴れていただろう。もしレイシアがこの反乱軍を統率する存在だったのならば、今のような状況はそもそも生まれなかっただろう。

 レイシアという少女は、自分のやると決めたことをやり遂げる少女なのでさっさとラインガルの地を取り戻していたかもしれない。

「私は散々誰かの命を奪っているし、憎まれてはいるでしょうね。全然気にしてないけど」

《まぁ、それはそうだな。誰かを殺すってことはその人を大切にしていた連中からしてみれば憎しみの対象だし。俺も散々人を殺して、その魂を喰っているから俺を壊してしまいたい連中も多いし》

「殺すよりもそっちの方が冒涜的だっていう人たまにいるけど、結局死んだらそれまでだから誰かに殺されるのも病死するのも、『魔剣』に魂喰われるのも同じようなものよね」

《そこをひとくくりにするあたり、レイシアだよなぁ……。明らかに違うだろ。特に死んだら神様の元に行くのを救いにしている連中からしてみれば、俺みたいなのは許せないだろうし。それに魂を喰らうってことは完全に消滅するってことだろうし》

「そうかしら? アキの一部になっているって認識だけど」

《実際に俺が喰らった魂がどうなっているかは分からないからな。消滅してそうだけど》

「ふぅん」

《……それ聞いてもやっぱりレイシアは喰われようって思うか?》

「ええ。だって消滅ではなく、アキの一部になるのだもの。神様になんか私の魂あげたくないし」

 ……霧夜とレイシアは、彼女がその魂を喰らわれたいと言った日から時折、そういう会話を交わしている。

 なんだかんだ人としての感覚を持ち合わせている霧夜はどうにか説得できないかと思っているようだが、レイシアの心は揺らぐ気配がない。

(……その魂を喰らいたいとは思っていないけれど、レイシアの寿命が訪れる数十年後に同じことをレイシアが言っていたら――、俺は結局そのまま押し切られてしまいそうだ)

 なんだかんだ霧夜はレイシアに対して、少なからずの情を抱いている。だからこそ結局のところ、押し切られてしまいそうな予感がして仕方がなかった。 

 ――そしてそんな風にのんびりと会話を交わして過ごしている中で、レイシアと霧夜の元へ慌てた様子でやってくる者がいた。

「レイシアさん!! 大変なことになりました!!」

 慌てたような声で駆け込んでくる一人の男性。

 レイシアと霧夜はそんな様子を見ても特に動揺することはなかった。ただ「何があったの?」と促すだけである。



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