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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第九章 魔剣と少女と亡国の人々
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「ふぅん。自ら神の名を騙るなんて不遜な奴らね」

「……祭りの間だけ、自分たちは神を降ろしているとそんな風に語っていましたね。パフォーマンスをし、本当に神がこの地を見守ってくれていると錯覚するように彼らはしてました。その役目に進んで向かう方もいないわけではありません。ただ彼らが神の名を騙っているだけというのは、年を増すごとに皆理解しています」

「ならば反撃すればいいじゃない。自分たちを騙してきたどうしようもないやつらなんだから」

 レイシアは簡単にそんなことを言ってのける。もちろん、その女性からしてみればそんなに軽く解決できるものではない。だからこそレイシアのことを彼女は何とも言えない目で見ている。

「相手は聖教会ですよ。反撃をするのは難しいです。もちろん、私たちもどうにかしようと動いてはいます」

「ふぅん。動いているっていうのは、そのおぞましい祭り自体を無くすこと?」

「……祭り自体は昔からこの街で続いている神聖なものです。それをあいつらが、こういう祭りに変貌させてしまいましたから。だから祭り自体は継続させたいのです」

「ふぅん。その変貌を貴方たちは気づかなかったのね。それで気づいてから慌てて周りが巻き込まれないようにとか、どうにかしようってしているってことよね」

「……そうですね。私たちは祭りが変貌していることに気づいていませんでした」

「それで気づかなかったせいで犠牲になった人って結構いるの?」

「……はい」

 女性が頷いたのを見て、レイシアは嫌そうな顔をする。レイシアは自由気ままに、自分がやりたいように生きている人間なので、誰かの意思を無視してそういうことが行われているのは気に食わないのだろう。

「……貴方のように外からやってきた人が犠牲になって、そのまま命を落としてしまったという例もあります。そもそもあいつらは自分たちの行いが聖教会の本部に漏れることを嫌がっています。だからこそ被害に遭った方が外に漏らさないように対応されています。それは殺されたり、軟禁されたり、脅されたり、そういったことが平然と行われてしまっています。いざ、聖教会の本部に告発しようとしても……、その前に対応されています。だから貴方も逃げた方がいいです」

 その女性は心からレイシアのことを思って、いっているのだろう。レイシアのように若く、美しい女性がそういう目に遭ってしまうことを心苦しく思っているから。

 レイシアが幾ら巨大な剣――《災厄の魔剣・ゼクセウス》を持っていたとしてもただの女性にしか見えないのだ。

「私のことを心配しているの? 私は誰かに自由を奪われることはしないわ。そんなの嫌だもの。私を好き勝手しようとするなんて誰も出来ないわよ。それにしてもその神官たちって好き勝手しているのね。聖教会は元々から気に食わないけれど、そういうことまでやっているのは余計に気に食わないわ。だから私がぶっ飛ばしてあげる」

 レイシアは女性の話を聞いて、聖教会で好き勝手している神官たちをぶちのめす気満々である。やっていることも気に食わないが、それよりもレイシア自身をどうにでも出来るとそんな風に思っていることがまず気に食わない。

「え、あの……私の話を聞いていましたか? 相手は聖教会ですよ。そして自分たちの目的のためには何だってするようなそういう人たちなのですよ。だからこそ、今すぐ逃げなくてはいけません。貴方は自分の力を過信しているのかもしれませんが、それはやめた方がいいです。私は貴方が不幸な目に遭うのは嫌です」

「ふふっ、私を自由にどうにか出来る人なんていないのよ。昔の、子供の頃の私ならともかく今の私は負けないわ。それにあんたは私が不幸になるならばそれは自業自得だと割り切ればいい。私は自分がやりたいようにやるだけなんだから、気にする必要はないのよ。私がそいつらをぶっ飛ばした後はあんたたちが好きにすればいい。私がぶっ飛ばした後の連中に関しては好きにすればいいし、そいつらが身動き取れなくなるならあんたたちは自由に行動できるんだから」

 にっこりと笑って、レイシアはそう告げる。

 レイシアはそれが本気で出来ると思っている。だからこそ、それだけ自信満々である。そこまで言うのなら止められはしないと、その女性も思ったのであろう。

 それに加えて、レイシアならばそれを成し遂げてくれるのではないかと……初対面なのにそう思わせるだけの力がレイシアにはあった。だからこそ、頷いてしまったのだろう。

「……わかりました。ただ聖教会へいつ向かうかなどはこちらで共有さえていただきたいです」

「いつって今すぐよ。こういうのは素早く終わらせるのが一番なのよ? それで向こうが準備なんて出来ないタイミングで徹底的にぶちのめすのが一番だもの」

 レイシアからしてみれば、聖教会に行くのに準備は要らない。武器である霧夜さえ持っていけばあとは自分の力でどうにかするだけである。

「……レイシアさん、行くのを決めてしまっているのは理解しているので俺たちでは止められないのは分かりますが、早急にこの街から俺たちはひきます。それまで待ってもらえますか」

 ずっと黙っていた元ラインガルの民の男性はそう口を開いた。レイシアが止まらないことが分かっていたからだろう。

「ふふ、いいわよ。あんたたちは今すぐ聖教会と敵対する気はないんでしょ? なら先にいってなさい。私とアキが揃えばなんだって出来るんだから」

 そんな男性に、レイシアはそう言い切って笑うのだった。



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