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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第七章 魔剣と少女と伴侶の話
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2

 レアシリヤの村では、国民の妊娠という出来事があり少しバタバタしている。

 こういう人が住む場所ではないと言われている場所にある村では、子供が一人産まれるというのは一大事である。

 ただでさえ、この村は危険な魔物に囲まれている。

 ――そんな中で生活していくというだけでも大変なことなのだ。どうにか妊娠している女性が魔物に襲われたりしないようにと周りは守ろうと動いていた。

 ただ妊娠をしている存在を執拗に狙おうとしてくる魔物もいたので、それに関してはレイシアが倒していた。

「妊娠した生物を襲おうとするってどういう習性なのかしらね」

《さぁ。妊娠している存在のにおいとかに惹かれてとかなんじゃないか? そういう存在だからこそおいしいとか》

「アキはやっぱり『魔剣』よね。他の人の前でそういう発言したら思いっきりびびられるわよ」

《そんなこと言われてもな。大体人の中にもそういうことを進んでやる狂ったやつを俺は知っているぞ。それを食するからこそ、若返れるって信じていたやつとか》

「人の命は有限なのに、そういう風なことを信じるってバカよね」

《レイシアはもしこれを食せば若さを手に入るとか言われてものらなさそうだよな》

「当たり前じゃない。私は私の有限の時間の中で、私がやりたいように生きるのよ。そういうものは要らないわ」

 レイシアと霧夜は、森の中で会話を交わしている。

 レイシアは村の女性が妊娠しようが生活を変えない。霧夜という武器を携えて森の中へと顔を出し、そして魔物を倒したりといった行為を繰り返している。

 霧夜を大木に立てかけて、レイシアはこの危険な森の中で寝転がっている。レイシアでなければ危険な行為であるが、寝転がって居ようともレイシアは周りの気配をきちんと探っているので問題がないのである。

 幾ら危険な魔物が存在している森とはいえ、そういう存在に近づかなければ寝転がるぐらいできるのだ。

 レイシアは空を見上げてのんびりとした様子である。

《それにしてもこういう村で子供が産まれるとは思っていなかったな。そんな余裕ないと思っていた》

「アキは分かってないわね。こういう村で暮らしているからこそだと思うわよ。いつ死ぬかも分からない、そういう緊迫した状況だからこそ人は子を多くなそうとするのよ。実際に戦争の半ばとかだと、子供は増えたりするわ。働く手を増やすためって意味合いもあるでしょうけどね。何か危険なことが起こって、人が沢山死ぬのならばその分増やさなければならないってことね」

《あー、それはそうか。となると、これからもっと妊娠する人も増えるのか?》

「増えると思うわよ。私がレアシリヤに連れてきた国民たちは若者が多いから。どんどん人が増えるのは良いことだけど、そういう生まれた子供が死なないようにしなきゃね」

 危険と隣り合わせだからこそ、人は本能的に子を残そうとするものである。霧夜は人だったころも子供を作ったことがなく、その後『魔剣』になっているのでレイシアの話を聞いてもそうなのかとしか思っていない。

 レイシアも自分で子を産んだことはないので、多分他人から聞いた話を霧夜に言っているのだろう。

「生まれた子供たちには、アキが建国の剣だって言い聞かせないとね。子供たち全員がアキの存在を当たり前に受け入れていると面白いって思うわ。産まれたらアキも面倒見るの手伝いなさいね」

《まぁ、いいけど。俺、子供の世話なんてしたことないから出来る自信はないぞ》

「ふふ、長生きしているアキが子供相手にあたふたしているのを見たら爆笑する自信あるわ」

《……というか、そもそも子供の母親は『魔剣』である俺に子供の面倒みられるとか嫌じゃないのか?》

 霧夜自身は子供の世話はしたことないが、別に頼まれれば子供の面倒を見るのも問題はないと思っている。しかし考えてみると子供の母親がそれを許可するようには霧夜には思えなかった。普通に考えて《災厄の魔剣》などと呼ばれている恐ろしい『魔剣』に子供を見させようなんて思わないだろう。

 しかしレイシアに国民として連れてこられてきた女性なので、そのあたりは普通ではないようだ。

「大丈夫よ。妊娠した子は私の言うことをよく聞いてくれるし、霧夜にも面倒見てもらいたいって言っていたわ」

《俺がその子に何かするとかレイシアは考えないのか?》

「本当に何かする気ならそんなことは聞かないでしょう。そもそもアキはそんなことをしないと思うわ。したとしても問題ないしね。きっと面白い風に変化するだけでしょ?」

 レイシアはそんなことを言いながら楽し気にしている。

 霧夜はそんなレイシアに呆れたような様子だった。

(……俺も子供の面倒を見るのにかかわるか。不思議な気分になって仕方がない)

 霧夜は自分もその産まれてくる子供と関わるかと思うと、不思議な気持ちになっていた。





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