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魔剣と少女の物語  作者: 池中織奈
第六章 魔剣と少女と王位の話

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 レイシアは、この村はどうにかしたいのならば自分を倒せばいいなどという。

 勝者に全て従うとそんな風に。

 そんなレイシアの発言は、レアシリヤの中で今の現状に不満を持っている存在にとってみれば、渡りに船な言葉である。

 なんせ相手はレイシア一人。加護持ちとはいえ、レイシアを下すことが出来れば、レイシアの暴走も止められると彼らは思っている。

 だからこそ、レイシアを倒すための話し合いが彼らの中では連日行われている。

 レイシアを倒すとはいっても、彼らはレイシアに惹かれているものでレイシアを殺す気はない。そこまでの覚悟がないのならば、強靭な意志を持つレイシアを倒すなんて難しいのだが、そもそもそれに彼らは気づかない。

 レイシアという少女がどういう覚悟を持った上で、最強の国を作ろうとしているのかその酔狂な願望にどれだけの情熱をかけているのか……このレアシリヤにいるものたちも正しくは理解していないのだろう。

 それはレイシアの武器として共に過ごしている霧夜だって正しくは理解していない。

(そもそも違う感情を持つ者であるのならば、完全に分かり合えることなどありえない。幾ら親友や家族だったとしても、互いに分かり合っているつもりであればあるほど恐らくすれ違いが生じて、どうしようもなくなってしまう)

 霧夜はそんなことを思う。

 まぁ、レイシアと霧夜の関係性は、互いに深く理解しあおうとはしていない関係だ。互いにどういう感情を抱いているかも、どういう過去を持っているのか――そういう理解しあう関係ではレイシアと霧夜はない。

 そもそも期待するからこそ裏切られたと思い、理想を抱くからこそ自分の理想と異なると対立するのだ。そういう期待する関係に、レイシアと霧夜はない。

 レアシリヤの中には、チュエリーたちのように「レイシア様に逆らおうとするなんて駄目です」とレイシアを打倒する勢力をどうにかしようとしているものたちもいる。このレアシリヤの人々は中々極端な人たちの方が多い。

 レイシアをどうにかしたい人たちと、レイシアを崇拝している人達。逆にどちらでもいい人達というのは中々少ない。

(どちらにしてもレイシアに期待をしているからこそ、彼らはそうやって極端なんだよな。)

 良い意味でも、悪い意味でも期待している。レイシアという少女に特別な感情を抱いている。だからこそ、そういう行動に出る。

 霧夜はレイシアの武器であるが、基本的に今回のことに対しては傍観者である。まぁ、時折ちょっかいを出すことぐらいはしているけれども、それぐらいだ。

 霧夜は、今回の騒動の中心には居ない。

 ――『魔剣』を使っていることも不満要素の一つだが、あくまでそれだけなのだ。レイシアがこのレアシリヤから排除されることになれば、霧夜はこの場所にはいられなくなるだろう。しかし普通に考えて、このキレイドアをレイシアなしで盛り上げることなど出来るはずがない。

 誰もが足を踏み入れることを躊躇ったキレイドアに国を作るなんて馬鹿げたことを始めたのはレイシアだ。いうなればレイシアはこの場所の中核である。

(まぁ、レイシアが排除されて、この場所が混乱に陥るのもそれはそれで楽しいけれど)

 霧夜はあくまで、傍観者の愉快犯。

 それでいて、どちらに転んだとしてもそれはそれで面白いと笑っている。



 霧夜はそうやってのんびりと、少しちょっかいを出しながらも過ごしている。



 レイシアは何度も何度も襲い掛かってくる連中に少し面倒になってきているらしい。

 自分でレイシアを倒せばいいとけしかけたものの、何度も来られると結構うっとおしいようである。

「全員殺したら国民減るし、私がぶっ飛ばしたらそれだけ労働力減るし。面倒!」

《それだけレイシアが好き勝手やっているからだろう。レイシアは強烈すぎるから、色々反動があるんだ》

「それはいいのよ! でもずっと来られるとやっていけなくなるわ。何かいい案はないの? アキ」

《俺にそこで意見を求めるなよ》

「あんたが一番今回の件で冷静そうだから聞いてんのよ」

《俺は今回の件では、傍観者だからな。でもそうだな……。レイシアと王位をかけて戦うのを期間限定にしたらどうだ?》

 霧夜はレイシアに向かってそんな風に言う。

「期間限定?」

《ああ。なんかイベント形式で、これに優勝したら王位を渡すみたいな風にするとかさ。レイシアから王位を奪いたい奴だって、そういう機会があった方が準備しやすいだろ。まぁ、本当に野心に溢れている奴はその機会以外でも戦闘をしかけてくるだろうが。でもレイシアから正当にその立場を奪いたいっていうならそれで十分だろ》

 霧夜がそう言ったら、レイシアは目を輝かせた。

「それいいわね!!」

 レイシアは霧夜の提案に疑うことなくのる。

 もっと《災厄の魔剣》の言うことを疑えばいいのに、終始この様子である。霧夜は呆れた様子でレイシアを見送った。




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