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暗闇ヲ駆ケル花嫁  作者: 喜多見一哉
話ノ弍 〈二柱 (フタバシラ)〉
9/35

side:Hime 其の伍

 あたしたち3人は、神滅課の事務所まで戻ってきていた。

 そこには、ここに訪れたときには所狭しと動き回っていた10名ほどの"オジサン"たちが、木村庄司(おやっさん)を含め2名まで減っていた。非常サイレンのような音は鳴りやんだけど、そのかわり、無線機らしきものから、立て続けに声が聞こえてくる。

 おやっさんは、あたしたちに駆け寄ってくると、手に持っていた長さ1m、高さ60cmくらいのアタッシュケースを、明さんに差し出す。

「結界弾8発、減滅弾2発だ。無駄弾撃つんじゃねぇぞ」

そして、ニヤリと笑う。

「4発と1発で終わらせて見せますよ」

明さんはアタッシュケースを受け取りながら、不敵に微笑みかえした。常に物静かで、優しそうなイメージだったのに、神憑がでると、あんな顔も見せるんだ。

「おやっさん、無線2機借りていくぜ!それと、社で伊邪那美様が倒れてる、介護を頼む!」

棚から、ヘッドセット型のイヤホンマイクを2個取り出しながら、八雲が叫ぶ。

「了解した。今、応援で8名向かわせたぞ。現場は井家袋、サンシャインシティだ。現地で合流してくれ!それと、悟と美貴が手も足も出なかったヤツだ、十分気をつけるんだぞ!」

「おう、後はオレらに任せておいてくれ!」

 ヘッドセットを付けながら、八雲と明さんが出入り口に駆けてゆく。

い、いけない。あたしもついて行かないと。八雲と100mしか離れられないんだし。

「八雲!あたしはどうするの!?」

 "一瞬で"2人に追いつき、八雲に問いかける。

八雲は前方から視線を外さないまま、あたしに無言で左手を差し出した。

なるほど、来た時みたいに、"合一"しろってことね。

 あたしは、走りながら彼の左手を右手で握った。途端、あたしの視界が、彼の視界になる。

(本当は、お前を戦闘には連れて行きたくなかったんだがな)

あたしの頭に、声が響いた。八雲の声だ。なんで、声を出さないんだろう。

(仕方ないでしょ、あんたと100mしか離れられないんだから)

(それはそうだが…、お前に、形だけとはいえ、人間を斬るところを見せたくねぇんだ)

エレベータにたどり着き、明さんが呼び出しのボタンをタップする。扉の奥から、エレベータの降りてくる機械音が、静寂の通路に小さく響く。

(なぁに、心配してくれてるの?)

(しちゃ悪いか?)

 あれ?なんか、さっきまでの八雲と違うぞ?冗談っぽく切り返したのに、真面目に返されてしまった…。八雲のことだから、冗談口で返してくると思ったのに。あたしは返す言葉もなく、逆に黙ってしまった。

 エレベータが到着し、あたしたちは乗り込む。八雲が1Fのボタンをタップ。エレベータが動き出し、しばらくして1階に到着する。

 それ以来、八雲は一言も発さなかった。なんか、気まずい。

 八雲と明さんはハーリー(バイク)まで走り続け、飛び乗る。ヘルメットをかぶって、八雲がイグニッションスイッチを押した。排気音が、夜の空にこだまする。

「明、トばすぞ!」

「了解!」

言って、明さんが、サイドカーについてた赤い小さなスイッチを押す。すると、座席の後ろが開いて、赤色の回転灯が顔を出す。

「いくぞぉ!」

八雲が、スロットルを思いっきり握りこむ。回転灯が回り始め、パトカーにも似たサイレンが鳴り響く。

「八雲、サンシャインシティまではおおよそ30分だ!出来るだけ短縮してくれ!悟と美貴を倒した相手だ、オジサンたちが、長く保つとは思えない!」

「まかせとけ、20分かけずに、会場へご案内してやるよ!」

 ハーリー(バイク)は、サイレンを響かせながら、道行く車の間を縫って走る。時折他の車と接触しそうになり、あたしは怖さで目を瞑る。速度メーターは……時速、120キロ…いくら赤回転灯回してるって言っても、飛ばしすぎだよぉ。

『八雲、明、聞こえるか!?』

ヘッドセットから、おやっさんの声が聞こえた。

「おう、感度良好!どうしたんだ!」

『人払いの結界を張り終えたそうだ。だが、ウチのに2名、一般人に1名の被害者が出た!対象は相当お冠らしい、注意してくれ!』

「わかってるよ、そんなことは!」

バイクを運転しながら、八雲がヘッドセットに怒鳴る。

「おやっさん、被害者の一般人って、女性じゃないだろうね!?」

明さんが、女性である可能性を気にしてる。さっきの話が関係あるのかな。でも、今回はタヂカラオって神様で、あたしの身体じゃないはず。

『女性?ちょっとまってろ…』

そしてしばらくして、

『一般人の被害者は男性だ、さきほど、救急車で搬送されたそうだ。命に別状はない!』

「了解、状況はまたあとで報告するよ!」

『おう、頑張れよ!』

通信終了。

 遠くに背の高いビルが見えてきた。東井家袋にある、サンシャインシティだ。サンシャインシティには、子供の頃、両親に、水族館とモンジャタウンに連れてきてもらって、凄く楽しかった思い出がある。まさか、そんなところが戦いの場所になるとは。

 サンシャインシティに近づくにつれ、どんどん車の数と、人通りが少なくなってきた。これがおやっさんの言ってた、"人払いの結界"の効果なんだろうか。そしてついに、目の前にサンシャインシティのシンボルマークとも言える、サンシャイン60ビルが見えた。

 道路の左端にバイクを止め、そこから降りる。見渡す限り、周りに人影は見えない。

「おやっさん、聞こえるか。現場に到着した。状況を頼む」

八雲が、ヘッドセットに語りかける。すぐに、おやっさんの声が返ってくる。

『お疲れさん。目標は現在、ワールドインポートマートの敷地内だ。周囲を固めているが、まだ建物内に入られた形跡と、逃げられた様子はない。できるだけ、建物内に入る前にケリをつけてくれ。損害賠償金払うのは痛すぎるからな。ただ、目標が敷地内のどこにいるのかが特定できてない。奇襲に注意しろ』

「了解だ。これより、インポートマートに接近する」

 八雲がおやっさんと無線通信している間、明さんがアタッシュケースを開けて、中に入っていた部品を組み立てていた。それは、遠目に銃のように見えた。

「準備できたか、明」

「うん、あとは装弾だけさ。でも、今回は昨晩みたいに、ビルの上からの狙撃はできそうにないね」

「まあ、新塔京が誇る超高層ビルだからな。だが、なるべく高所に立ち回ってくれよ」

「わかってるよ」

言って、その"銃"を、明さんは担ぐ。銀色のずいぶん重そうな銃だ。

(明さん、それはなに?)

あたしが、明に疑問を投げかける。

「ああ、これは"超電磁銃(レールガン)"っていってね。火薬の力で弾丸を撃つんじゃなく、リニア…すなわち、磁力の反発力を利用して弾丸を射出する銃なんだ。普通の銃より、弾速が桁違いなんだよ」

(へ~…)

うーん、よくわからん。

「お喋りは後だ、とにかく征くぞ」

 夜のサンシャインシティは、あたしの記憶にあるそれとは、全く違う風貌を醸し出していた。ビルの明かりは全て消え、街灯と、月明かりのみがビルを照らしている。八雲と明さんは、キョロキョロと周囲を見回しながら、ワールドインポートマート前の大階段を昇っていた。

(八雲さん、明さん、きこえるかい)

頭の中に、声が響く。凪くんの声だ。

「凪!?どうしたんだ、ってか、無闇に神力使ってるんじゃねぇよ!イザって時のために、残しとけ!」

「そうだよ、伊邪那岐様。どうしたんだい、何かあったのかい」

八雲と明さんが、歩みを止める。

(どうも、イヤな予感がするんだ。だから、短期決戦の為にも、僕のサポートが必要かと思ってね。僕が、手力男の場所を特定する。指示に従ってくれ)

(大丈夫なの、凪くん。那美ちゃんみたいに、倒れたりしないでよ?そういえば、那美ちゃんは大丈夫?)

あたしが問いかけた。

(うん、大丈夫だよ、ヒメ姉ちゃん。僕はバカ那美より多少力が強いからね。1時間くらいなら、この状態が保てると思う。バカ那美も大丈夫だよ、呼吸も落ち着いた。今はぐっすり眠ってるよ)

(そっか、よかった)

「ってか、オレの頭ん中で、2人で会話すんじゃねぇ!気持ち悪いだろが!」

(ご、ごめん…)

そして、再び歩き出す。

 ビルの壁に張り付くように、ゆっくりと進む。手前に見えてきたのは、インポートマートの正面入り口。八雲が、革製の掛け鞄から、タブレットPC(パソコン)を取り出した。そろそろって事なのかな。明さんも、超電磁銃に弾丸を装填しはじめる。

 そして、あたしの頭に痛みが走ったのと、頭の中で凪くんが叫んだのは、ほぼ同時だった。

 (2人とも、目の前だ!)

 目の前に、ズドンという大きな音と共に、砂煙が舞った。

砂煙が落ちついて現れた姿は、一見"工事現場の作業員さん"だった。白いヘルメット、タンクトップ、ニッカボッカ。足には地下足袋。真っ赤に血走った目を、あたしたちに向けてくる。

「昨日は女子高生で、今日は現場のおっちゃんかよ。バリエーション豊かすぎだろ。神さんも、取り憑く相手選べばいいのによ…!」

 言って、八雲と明さんが、飛ぶように左右に分かれる。

走りながら、明さんが神憑に向かって銃を構え、トリガーを引く。銃身がバチバチと放電し、目にもとまらない速さで弾丸が射出され、神憑きの足下のタイルに命中する。完全な"威嚇射撃"だ。神憑は、ぎろりと明さんをにらみ、叫ぶ。

「グガァッ!」

 そして、右拳を握りしめ、明さんに飛びかかる。

明さんは、ひらりとその拳をかわし…

しかし、別の何かに殴られたかのように、身体をくの字に曲げて、数m飛ばされる。

明さんの手から、銃が離れて宙を舞う。

「なんだ、今の…?」

八雲が唖然とするが、すぐにはっと気を取り直し、タブレットPCを操作し始めた。

(明さんの反応が、神憑と接触して弱くなった!何があった!?)

凪くんが、頭の中で叫ぶ。

「わ、わかんねぇ。拳を回避したように見えたが、他の見えない何かに殴られたみたいだ」

(見えない何か…だって…)

「おう、そうだ。っと、剣を顕現させる。ちょっと黙っててくれ!」

八雲がタッチパネルの、アイコンの1つをタップした。

「祝詞は省略、出でませ、倶利伽藍剣(クリカラノツルギ)!」

そして、タブレットPC(パソコン)を挟み込むように、パァン!と澄んだ音で柏手を打つ。次の瞬間、八雲の右手に握られていたのは、綺麗な装飾の施された直剣だった。

(昨日の太刀じゃないんだ…)

「ああ。今んとこ、オレが顕現出来る一番切れ味のいい剣だ。元は小太刀だがな、使いやすいように、直剣にしてみた。かなりやばそうだからな、手加減はできねぇ。怖かったら、目ぇ瞑ってろよ!」

(だ、大丈夫!がんばって!)

「おう!」

 飛ばされた明さんが起きあがり、遠くに落ちている銃を拾いに走る。それを、神憑が追う。八雲がそれを更に追い、怒号と共に、剣で背中から縦に斬りつける。神憑は一瞬悲鳴を上げ、振り返って血走った目を八雲に向けた。

「さて、こっからが本番ってね。」

 八雲が、額から流れ落ちた汗を、腕でぬぐった。そして、剣を青眼に構える。

 目の前の神憑が、八雲に向かって跳躍する。右拳を振り上げ、突き出してくる。さっきの、明さんと同じ攻撃だ。八雲は剣で右拳の攻撃をい防ぎつつ、バックステップする。

 神憑きの拳が八雲の胸の前を、横薙ぎに通過していく。今度こそかわした!

しかし、少し遅れて、八雲の左腕辺りを横から強い衝撃が襲った。八雲が、インポートマートビルの壁まで吹っ飛ばされ、全身を壁で強打する。がくりと膝をつき、その状態で剣を構え直す。

「なんだ、こりゃ!風圧とか、衝撃波とか、そういうもんなのか!?」

(わ、わかんない!ってか、すっごく痛ったぁ~!一瞬声が出なかったよ!)

 あたしが答える。八雲が視線を明さんにずらす。明さんは銃を拾い終え、弾丸を装填しているところだった。よく見ると、口元からうっすらと血を流している。

 神憑がゆっくりと八雲に歩み寄ってくる。そして、目の前で両手を組み、上から振り下ろす。瞬間、八雲が大きく横に跳ぶ。

 組んだ両手は空を切ったけど、その後に、ズドンと地面に何かが当たって、再び砂煙を上げた。

(八雲さん、攻撃の瞬間、神憑の神力が膨張してるのを感じた!おそらく、目に見える攻撃はフェイクで、本命の攻撃は物質化した神力なのかもしれない!)

「なんだと、それじゃあ、攻撃が見えないって事じゃないか!」

(減滅弾を使って、少しでも神力を削いでくれ!多少、攻撃範囲が狭まるかもしれない!)

「わかった。明、聞こえたな!?」

『聞こえた。でも、減滅弾は2発しかないぞ、どれだけ削れるか…』

ヘッドセットから、明さんの声が響く。

「それでもいい、2発全部使っちまえ!」

『わかった、なるべく、注意をひきつけてくれ!』

遠くで、明さんが別方向に走り出した。安全に狙撃出来る場所に移動するんだろうか。

 再び、神憑が八雲に飛びかかる。構えているのは右手、また同じ攻撃だ。八雲は今度はバックステップせず、その場に両足を広げて正面に剣を構える。攻撃を受けるつもりだ。

「本命の攻撃が神力の塊なら、剣で受けられるはず…!」

そして、神憑の右拳が、八雲の胸に命中する。八雲はうめきつつ、更に両足に力を入れた。続けて、構えた剣に、何かが激しく当たった衝撃と音。八雲が歯を食いしばる。

 勢いで、そのまま後ろに跳ね飛ばされるが、八雲はくるりと五点接地で受け身を取る。

「こりゃ、きついぜ。防戦に回るより、攻撃を続けてアドバンテージ稼いだ方が良さそうだな」

呟き、八雲は神憑に突撃してゆく。

 神憑きの懐に八雲は入り、剣を小さく構え、縦斬りと横斬りを、なるべく小さなモーションで連続で斬りつけてゆく。神憑が右手を振り上げたら右手を剣で上に斬り弾き、左腕が振り上げられたら横に弾く。身体が開いたら、胸に小さく剣を突き入れる。

「オレにっ…インファイトで…勝てると思うなよ…っ!」

(いいぞ、八雲さん!神力の膨張は、今のところ見受けられない。続けて体力を削いでいってくれ!)

「おうよっ!」

 八雲と神憑の距離は、1mと開いていない。神憑は満足な攻撃も出来ず、完全に主導権は八雲が握ってる。このまま、勝てればいいけど。

 そして、明さんから無線が入った。

『八雲、その状態を続けてくれ。1発目の減滅弾を撃つ!狙いは背中だ!』

「待ってましたぁっ!」

 光の筋が音もなく、神憑の背中に命中した。神憑は叫びながら、前につんのめる。その瞬間、あたしに見えたのは…

(え、なにこれ!?)

 あたしには一瞬、神憑の周りに広がる、赤いオーラのようなものが見えた。本当に一瞬過ぎて正確には確認できなかったけど、神憑より一回り大きい、人の形のような…。

「おらぁっ!」

 神憑がつんのめった時、八雲が叫んで大振りにで斜め上から激しく斬りつけた。神憑の左肩から右腰まで、剣の軌跡がきらめく。更に、神憑は後方によろける。

 そして、またあたしに見える、赤いオーラ。すぐ見えなくなったけど、今度はさっきよりもちょっとだけ長い時間、その姿が確認できた。さっきの一撃より、ちょっとオーラが小さくなったような。

(もしかして…これって…)

『2発目、いくよっ!』

 無線から声が響き、再び、神憑の背中に光の筋が突き刺さった。神憑が、がくりと片膝をつく。

(見える…間違いないかも!)

 人型の赤いオーラ。あたしが見ていたのは、おそらくその神憑の、神力。なるほど、神力を減らすから、"減滅"弾なのね。

 (ごめん、八雲。1発殴られてくれる!?)

「な、なにぃ!?」

八雲が叫ぶ。

「なんでだよ!すっげぇ痛てぇんだぞ!?」

(わかってるわよ、そんなこと!あたしもすっごく痛いんだから!でも、確認したいの。あたしが今見てるのが、ホントにあたしの予想通りなら…)

「なんだって?何が見えてる!?」

(だから、それを確かめるの!きちんと殴られなくていい。かわせるなら、あたしが言う!)

 あたしは、八雲の頭の中で怒鳴った。

「…しかたねぇな、1発だけだぞ!」

言って、八雲は正面に剣を構え、両足を踏ん張った。

 立ち上がった神憑は、更に鋭い眼光で八雲を睨み付ける。奇声を発し、右手を振り上げた。

「グギャァっ!」

 八雲が、両足と両手に力を込めた。正面から飛んでくる右手の正拳突き。その正拳突きは、八雲の胸にヒットする。そして、遅れてくる赤色のオーラ!

(今!後ろに1m跳んで!!)

八雲が激しく地面を蹴り、後ろに飛び去る。赤色のオーラは、八雲の胸直前でピタリと止まった。

「…避けた…のか?」

(いい跳びっぷりだったね!やっぱり、あたしの予想通りだったよ!)

「どういうことだ?」

(えっと、今のあたしには、神憑の神力が視えてるんだよ!凪くんの言うとおり、拳から膨張した神力の塊が正体。それは、見えている実際の拳より、大体0.5秒遅れて、ほぼ1m先まで届くみたい!面積範囲は50cmくらい。今の数字、覚えておいて、それ以上大きく避ければ、攻撃は当たらないから!)

「覚えられねぇよ!お前が指示を出せ!」

八雲が怒鳴る。

(じゃあ、きちんとあたしの言うとおりに避けてよ!?)

「分かってるよ!」


 そこからは、八雲の一方的な展開が始まった。

 なんて言うんだっけ、ヒットアンドアウェイ?

 突撃して斬りつけ、神憑の大振りの攻撃を誘って、あたしが指示を出して八雲が攻撃を避ける。そしてまた突撃。これの繰り返しだ。神憑の動きが少しでも止まった時にには、きっちりと明さんから銃弾が飛んできてヒットする。凄い連携プレイだ。よほどの信頼と経験がないと、こんな風に上手に立ち回れないんじゃないかな。

 それを10分ほど続けただろうか。

 ついに神憑は、両膝を付いて、そして、前に倒れた。

「明、結界弾!」

『了解!』

 そして、倒れた神憑の周囲に、あたしも見たことのある楔が4つ、打ち付けられた。楔が展開し、雷が神憑を包み込む。

「グアァァァァァァ!」

 神憑の、断末魔の叫びが夜空に響き渡った。

 あたしの目には、"工事現場の作業員さん"から、赤色の神力が消えゆくのが見えた。それはどんどんと小さくなり、やがて、消えた。

「ふぅ…」

八雲が、大きく息をついた。

(終わった…んだよね。)

「ああ、終わった。あとは、神滅課のオジサンたちの仕事だ」

(そっか、お疲れ様)

「おう。おっさん、聞こえるか。浄化が終わった、おじさんたちを寄越してくれ」

ヘッドセットから、おやっさんの声が聞こえる。

『わかった、お疲れさん。速やかに明と合流して、戻ってきてくれ』

「了解。明、聞こえるか。撤収だ、戻ってきてくれ」

『………』

明さんからの返事がない。

「明、聞こえてるか?返事しろ!」

『………』

やっぱり、返事がない。

(凪、どうなってる!?)

頭の中で、八雲が凪くんに問いかける。

(八雲さん、一瞬だったけど、明さんの神力反応が強くなって…今、消えた…)

「なん…だと…?」


 しばらくしてから、神滅課のオジサンたちから連絡が入った。

 明さんが、倒れているのを発見した…と。


話之弐 <二柱(フタバシラ) side:Hime> 完

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